砂漠の世界。上空でパラパラ雨音のような音をたて、細かい砂が降り注ぐ。
 軍手とマスク着けた作業員たちが、穴の中で発掘作業をしている。その様子を見下ろす椅子に座った老人。
 傍に立つ少年・セリが老人に訊く。

お爺様、みんな何を探しているの?


 老人は穴の中を凝視したまま、

この穴の底には三千年前の人たちがいるんだよ

ええ! 三千年前?

ああ、今からその証拠が……


 その時、一人の作業員が砂の中から、ヒビの入った古いゴーグルを見つけ、老人を呼ぶ。

先生! 見てください


 老人は立ち上がり、他の作業員たちも手を止めて、作業員を見る。セリは首を傾げる。

穴の中から……なにあれ?

 雨音のような音は続いてる。
 興奮した様子で、手にしたゴーグルを見つめる老人。
 その様子を穴から出た作業員たちが見つめる。
 セリは首を傾げ、

これが三千年前の人たちの道具?

その通りじゃ! これこそ三千年も前に、我々と同レベルの文明を持つ世界が存在した証拠!


 老人の興奮がうつったように、見つけた作業員が興奮した口調で言う。

古の人々も、昔の私たちと同じ理由で、ゴーグルを着用していたってことですね!


 老人は大きく頷く。

その通りじゃ!

え? 昔の僕たちと同じって? 僕、ソレ、初めて見たよ

ゴーグルを知らないのか?

ごーぐる?


 老人は微笑み、

セリは十四歳じゃ。ゴーグル着用が必要だったのは、十五年前までのこと。この子の生まれた頃には、ドームが完成していたからのぅ


 老人は空を見上げる。つられて、セリと作業員たちも空を見上げる。

空から降り続ける星の塵を防ぐドームがのぅ


 空は黄色。透明のカバーに覆われ、そのカバーに砂が降り続けている。パラパラと雨音のような音がする。

セリ、昔はのぅ、星の塵が目や口に入らないため、外出する時にはゴーグルとマスクが必要だったのだよ

星の塵がいつから降ってるの?


 老人は小さく笑い、首を横に振る。

わからん。少なくとも三千年前のようじゃ

どうして、三千年前の人たちはいなくなっちゃたの?


 老人は首を横に振り

わからん。だが、歴史は繰り返すという言葉がある。我々は繰り返さないために、こうやって原因を究明していかなければならんのじゃ


 セリは真剣な顔で頷き、再び空を見上げ、

あっ! お爺様!

どうし……


 老人は空を見上げ、息を呑み固まる。
 セリは体を震わせる。

ほ、星の塵が……!


 ドームに降り注いでいた砂が少なくなっていく。
 蒼白になって固まっているセリ、老人と作業員たち。
 セリたちから段々遠ざかり、一つの砂時計になる。砂時計の砂はもう少しで完全に落ちきる。

 突然、セリにそっくりな少年が、砂時計を覗きこみ、

あ! もうすぐ三分だ!


 少年は嬉しそうに、テーブルに置いてあるカップラーメンの前に座る。

 砂時計の最後の一粒が落ちる。

いっただきま~す

砂降る世界

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