それから、20年の歳月が流れた…

二宮 拓海

麗明様。お時間です…

早乙女 麗明

…もうそんな時間か…

 麗明様が20年前に提案した「株式会社」の設立は功を奏した。

 医療法人を切り捨て、学校法人と株式会社の運営を生業とした新生「早乙女グループ」の業績はうなぎのぼりで、あっという間に各業界の最大手にあと一歩というところまで上り詰めた。

二宮 拓海

麗明様…

早乙女 麗明

どうした?拓海…

二宮 拓海

私は、実は20年前の株式会社設立を麗明様が言い出した直後、本当に大丈夫なのか?という思いに苛まれていました。

早乙女 麗明

でも、拓海はそんな俺を支え、ついてきてくれた…

二宮 拓海

ええ。
私の思いは杞憂に終わり、早乙女グループはこの20年で、日本を代表する企業集団になりました。

早乙女 麗明

それも、俺を支えてくれた拓海の存在があればこそだ!

二宮 拓海

いいえ。麗明様のお力の賜物です…

さぁ、麗明様。お時間です。早乙女グループの株主総会に向かいましょう。

早乙女 麗明

そうだな!

 私と麗明様は、株主総会の会場へと向かった…

 株主総会は、ホテルのパーティー会場を貸し切りで行われた。

 参加した株主は、その出資金額の有無に関わらずフルコースの料理が振る舞われ、会場に集まった株主からは笑みが絶えなかった。

 定刻となり、会場に流れていたBGMが鳴りを潜め、会話をしていた株主達も声も次第に薄まっていった。

 そして、会議は開かれた…

二宮 拓海

これより、早乙女グループ 第〇×回 定時株主総会を開催します!!

 事前に予定されていた株主総会の議事は、株主からの大きな反対もなく滞りなく進み、無事に終了した。

そして、議長の退任で株主総会は無事に終了した…

 かに思われた…

それでは、これにて議長を退任し…

早乙女 麗明

ちょっと待ってくれ!

二宮 拓海

麗明様!!何を!?

早乙女 麗明

早乙女グループの筆頭株主として、ここで緊急動議を提出します!

 ホテルの従業員と思しき人々が、麗明様が作った「新法人設立計画書」を配布する。

二宮 拓海

「新法人設立計画書」???
これは…まさか!!

早乙女 麗明

この20年、医療現場で働く有能な人材を育成すると共に、さまざまな分野において日本経済を支えてきた、我が早乙女グループ。

早乙女 麗明

常に時代の最先端の先を行くことをモットーに、私たちはグループを大きくしてきました。

早乙女 麗明

そして、これからの時代は…

早乙女 麗明

先進医療の先を行く医療の時代です!!!

早乙女 麗明

私は、早乙女グループによる、新たな医療法人の設立を、ここに宣言したい!!!

 熱意を言い切り、伝え切った感満載の麗明様が、周囲に拍手を求めるように間を取る。

 だが、即座に拍手を送る株主は人っ子一人居なかった。

早乙女 麗明

…なぜだ…
なぜ、私の熱意が、伝わらないんだ…

早乙女 麗明

拓海!何とか言ってくれ!!

二宮 拓海

 さすがの私も、この時ばかりは開いた口が塞がらなかったなぁ…

こうして、株主総会は麗明様の緊急動議を経て、無事に終了した。

えっ!?この後、早乙女グループの医療法人は設立されたのか?だって!?

それは…
パソコン、あるいはスマホの前にいる、皆さんの想像にお任せすることにするよ…

E N D

epilogue そして会議は開かれる

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