貧しいこの町ではどの家も自分の生活で手一杯で、「双子」が産まれると遅く産まれた方がお金を多く貪る「忌み子」と毎日罵られ、とある年齢を越えると町から追放される、というのが暗黙のルールになっていた。
貧しいこの町ではどの家も自分の生活で手一杯で、「双子」が産まれると遅く産まれた方がお金を多く貪る「忌み子」と毎日罵られ、とある年齢を越えると町から追放される、というのが暗黙のルールになっていた。
……何でよ…、ようやく…家族が作れると思ったのに…!!
この町で新たに子どもを産んだ母親が一人。父親は生活が苦しくなったからか子どもをお腹に宿した母親を置いて町から逃げ出した。食料やお金はいつも父親が手に入れていたため、周りからは「子どもなんか産まず早く働け」と言われるばかり。
それでもどうしても子どもが欲しかった彼女は、子どもが産まれる直前まで働き、それを見兼ねた隣人の助けもあり子どもを産むことが出来た。
「忌み子」が産まれるとは知らずに。
子どもが二人…??
もしかして、双子…なのか……
この小さな町では「双子」が産まれたことはすぐに知れ渡った。母親は早く産まれた女の子、つまり双子の姉を可愛がるとともに、遅く産まれた妹、バルを罵るようになった。
父親から逃げられた怒りも全て、彼女にぶつけるように。
貴方なんか産みたくなかったのよ!
お前なんかに渡す物はねぇよ!
この町に住んでいる人全員から嫌われていることを知ることになるのはそんなに遅くはなかった。彼女は母親と姉よりグレードダウンしたご飯を含め、生活する上で最低限の物しか与えられなかった。好かれようと必死に働いてみたりもしてみたが、何も触れるな、近付くな、早くいなくなれ、と悪口ばかり。
彼女は、家にいるのも、外に出るのも、不安と恐怖しかなかった。
どこにいっても、この町の人は彼女に対して罵詈雑言ばかり。
「双子」として、ただ少し姉より遅く産まれただけなのに。
町の人のみならず、母親からも「忌み子」として罵られる生活は
齢8歳の彼女には辛い物であった。
……どこに行っても私の居場所なんか…
路地裏に隠れて1日を過ごし、ご飯と寝る時だけ家に帰る、という生活を繰り返すようになった彼女は笑うことが出来なくなった。町から出るにも、行く場所がない彼女にはそんな勇気すら持っていなかった。
いつまで隠れて生活しなければならないのか、一人ぼっちで生活しないといけないのか。彼女は一人で抱え込むしかなかった。
もう、……死にたいな…
生きることすら苦になってきた彼女は、死ぬことを何度も考えた。ただ、いつも物を投げつけられたり殴られたりしている彼女は「痛み」をこれ以上感じたくもなかったので、毎日路地裏でひっそり泣くことしか出来なかった。
……忌み子…ね…
影からそんな彼女を見つめる、この町には似つかわしくない綺麗な服を着こなす男性が一人。表情一つ変えず、彼女を見つめている彼の心情は誰にも分からない。