真矢

ここは……

意識が戻った時と同じような暗闇に放り出された真矢は周囲を見渡す。

語るまでもなく周囲は黒一色である。

何もない

真矢

また、歩くしかないのか……

真矢は方向も分からず歩き続けた。

周囲が暗いせいか、歩いているかどうかの感覚も怪しいが、はじめてこの空間に来た時のことを考えると、今は歩くしかなかった。

真矢

わっ!

突然のフラッシュに真矢は目を覆った。その目を開けると、教室の風景が広がっていた。

あの『反省会』で来た教室の様だが、クラスメイトは全員動いていない。

まるで時間が止まっているかのように。

真矢

ここは……あの教室……

ミラ

やあ

そこにミラがひょっこり顔を出す。
相変わらず、柔らかい表情のまま真矢を見つめる。

真矢

ここは、あの教室よね?
私生まれ変わるんじゃないの?

そのセリフを聞いたミラの表情が急に険しくなった。

ミラ

君……本気で生まれ変われると思ってるの?
あんなことしたのに?

真矢

だって……さっき……

ミラ

僕の名前覚えてる?

突然の問いかけに真矢は答えに窮した。

ミラは呆れたように答える。

ミラ
僕の名前はミラ

真矢

そうよね
で、それがどうしたの?

ミラ

君がイジメていた人の名前は?

真矢

え……

真矢が固まる。
覚えていないわけではない
むしろ覚えているからこそ固まったのだ。


予感めいた何かが真矢に危険信号を送る。

そんな状況を察してか、ミラが口を開いた。

ミラ

加賀美(かがみ)碧(あおい)……
ここまで来れば君でもわかるよね

真矢

嘘でしょ……

ミラ(碧)

嘘じゃないさ
僕が君にいじめられていた張本人
加賀美碧だよ

真矢は呆然と立ち尽くすしかなかった。

ミラ(碧)

いい顔だね
絶望した顔素敵だよ

真矢

そんな……
私は……反省して……

ミラ(碧)

反省?
そんな陳腐なもの必要ないね

僕が必要なのは永遠の苦痛
終わることのない絶望だよ

ミラは真矢に重く突きつける。

現実を。
想いを。

ミラ(碧)

因果応報。
君はただ自分の行いに対する報いを受けるだけさ。

真矢

……

ミラ(碧)

もちろんそれじゃ不公平だ
だから僕も残るんだ。

僕も君も、もう二度と生まれ変われない。
人間にも、犬にも、虫ケラにさえ……

目の前の景色が灰色に濁っていくのを真矢は感じていた。

この空間に残ること、それは永遠に逃れられない檻に閉じ込められることと同義であった。

逃げ場のないいじめに遭うこと……

ミラ(碧)

僕は永遠にこうやって死者を導く仕事をし続けないといけない。

君を呪った報いだ。
まぁ、死者の使者なんてカッコイイとらえ方してるけど、そうでもないんだろうね

ミラ(碧)

でも構わないんだよ
君が苦しむならそれで

真矢

待って!
謝るから……
今まで気がつかなかったの!
でももうわかった!
本当に悪いと思ってるの!

だから……ミラも……碧も……生きてやり直そ……

ミラは真矢の手をそっと握る。
笑顔を浮かべたままミラは言う

ミラ(碧)

偽善だよそれは
これは契約だから……
悪魔との……

もう逃げられない

そういうとミラは少しずつ浮き上がっていった。

真矢

待って!

ミラ(碧)

じゃあね
もう会うことは無いよ……

ミラの姿が消えるのに合わせて、周囲の時が進みだしていた。

目の前に麻弓の姿が見える。
地獄がはじまる。

それを認識し、真矢は膝から崩れ落ちた。

麻弓

真矢~
昨日のことなんだけど~

ミラ(碧)

これでよかったんだ……

暗闇でミラは呟く。

死者の使者などという仕事はない
あるのはこの暗闇だけだ

ミラ(碧)

僕も……ここで……永遠に……一人……なんだよね……

そうつぶやき、ミラは覚めることのない眠りについた

Last forever......

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