闇と混沌に覆われし、我が煉獄
闇と混沌に覆われし、我が煉獄
そこへ突如現れた漆黒の断罪者
<ブラック・カメリア>
かの眼差しは全てを貫き
何人たりとも逃れることはできぬ
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・高梨くん。
何だ。
何を書いてるのか知らないけど、そろそろ購買に行かない?
・・・・・・。
転校生の紅と購買部へ昼飯を買いに行く事となった千秋。
あまり乗り気ではなかった千秋だが、友人の椿に押し切られるような形でいつの間にか転校生の面倒を見る羽目になっていた。
ところがいざ購買部へ向かおうとすると紅は鞄から大きな分厚い本のような物を取り出し、羽ペンで何かを書き印し始めたのだ。
・・・・・・。
・・・・・・。
ねえ、行かないならオレ先に行くけど。
もう少し待ってくれ。
いま書き終える所だ。
・・・・・・。
終焉・・・・・・。
我が世界の終焉を導く・・・・・・。
また腹話術!
・・・・・・そうか、お前は俺の終焉を導く者<エンド・オブ・ワールド>なんだな相原。
エンド・・・・・・え?
ずいぶん待たせたようですまないな、エンド・オブ・ワールド。
もしかしてそれオレの事かな?
悪いけどやめてくれない?
はずかしいんだけど。
そうか・・・・・・!!!
それもそうだな、すまない。
これはコードネームのようなものだから軽率に人前で口にするものではなかった。
赦して欲しい、EOW・・・・・・。
いやいや、略せばOKとかそういう問題じゃないからね。
普通に相原って呼んでよ。
・・・・・・。
・・・・・・。
わかった。
では俺の事は虚ろなる煉獄の・・・・・・
うん。
改めてよろしく、高梨。
・・・・・・。
さあ、購買へ行こう。
あんまり新島を待たせてもアレだし。
うむ・・・・・・。
二人が購買部へ着くと、そこは戦場だった。
各クラスの猛者たちが、昼食を手に入れるため我先にと購買のおばちゃんの元へ向かう。
彼らの勢いに負けた華奢な生徒はみな隅の方にあるサラダやパンの耳を購入しその場を立ち去っていった。
どの世界も弱者は虐げられるものなのだな・・・・・・。
何でこんなに混んでるんだろ。
普段はそれほどでもないんだけど。
あれ! めっずらし!
千秋センパイじゃないっスか~!
購買とか来るんスね。
教室で弁当かと思ってた!
千秋たちがどうするか思案し始めた所へ、水泳部の後輩である矢津誠一郎(やづ せいいちろう)が声をかけてきた。
彼も友人と共に購買部へ昼食を買いに来たようだった。
ああ、今日は曇ってて涼しいから何か買って屋上へ行こうと思って。
へーー! 屋上かあ!
ここのパンまあまあ美味いし、いいんじゃないスかね。あ、でも今日はやべーと思いますよ!
君はエンド・オブ・ワールドの古馴染みか?
この惨事には何か理由があるようだな。
民草よ、詳しく聞・・・・・・
ちょっと静かにしてて高梨。
???
いや・・・・・・黙ってなどいられない。
俺には争いに敗れた人々の慟哭が、平和を愛する女神たちの嘆きが聴こえる!
え?
女神???
ってかそれコウモリじゃね?
このひと千秋センパイの連れっすか?
話せば長くなるから今のは何も無かったことにしてくれ。
あ、はい・・・・・・?
突然芝居がかったセリフを喋る見知らぬ先輩の対処に困る誠一郎。
その様子を見てこのままでは面倒な方向に話が行くと感じた千秋はとりあえず紅を黙らせる事にした。
ねえ、さっきその名前は人前で出さないって話だったろ高梨。
ここはオレが事情を聞くから君は対策を考えてくれ。
エンド・オブ・・・・・・相原がそう言うなら今は沈黙を守ろう。
えっと、それでなんだっけ。
HEYメーン。
今日は3ヶ月に一度販売されるスペシャルデリシャスバーガーが食べられる日だよ。
みんなスペバーに殺到中だから食べたいならおれが買ってきてあげてもいーよ。
この混み具合の理由を説明しようと誠一郎が口を開くが、その声は横から話に入ってきた彼の友人により遮られる。
それは誠一郎と同じクラスの射和京平(いざわ きょうへい)だった。
それじゃあよろしく頼もうかな。
で、君は誰・・・・・・?
サーセン、こいつ俺のダチの射和っス。
いっつもこんな感じで誰にでもいきなり喋りかけるんすよ・・・・・・。
せいの友達はおれの友達・・・・・・。
みんな友達yeah。
じゃあヨロシク・・・・・・。
承知!
それではいざ参らん。
昼飯奪取の任務を得た京平は、気合を入れる為かウサちゃんの髪留めで前髪をくくり猛者たちの海へと姿を消す。
そして数分後、限定販売のスペシャルデリシャスバーガーを小脇にかかえて三人の元へ戻る彼の姿があった。
今日も大漁だぜ。
京平おっつ~!
みんなの平和が守られた。
これ、先輩たちのぶん。
ああ、射和のおかげで助かったよ。
ありがとう。
あのもじゃもじゃ・・・・・・。
音と気配を完全に絶ち、あの混沌へと華麗に舞い込んで行った。
おそらく只者ではあるまい。
おっひる。
おっひる。
こうしてようやく昼飯を手に入れた千秋たちは屋上へ向かうのだった。