世界には説明ができない現象が起こることがある。

例えば空間が歪み、存在しないはずの場所に迷い込んでしまう。

例えば気が付くと数年後の未来に飛んでしまっている。

そんな不可解な現象はいつ誰が体験するかはわからない。

神木霊歌(かみきれいか)

そんな不思議なことがないかなーって思ってるんだよね

永山折羽(ながやませつは)

相変わらず好きだね、そういう話

神木霊歌(かみきれいか)

だって摩訶不思議だよ! 大冒険が始まるかもだよ!

永山折羽(ながやませつは)

あはは、神木ちゃんらしいね

神木霊歌(かみきれいか)

タイムリープは少女なら誰しも憧れるものだよ

神木霊歌(かみきれいか)

飛べええええええええええ! って

永山折羽(ながやませつは)

ちょ、ちょっと!? 窓開けて何する気なの!?

神木霊歌(かみきれいか)

放して! 私は飛ぶの! あの時間に!

永山折羽(ながやませつは)

無理だから! 落ちちゃうから!

神木霊歌(かみきれいか)

じゃあまた明日ねー

永山折羽(ながやませつは)

うん、また明日

太陽が街並みの中に落ちそうになる頃。私たちは教室で騒いでるところを先生に見つかり、下校することになった。

オカルト関係がすごく好きな神木ちゃんは、よく不思議体験の話をする。

本人が体験したことではなく、インターネットの掲示板などに載っている嘘か本当かわからないものだが、彼女はその話に強く惹かれるものがあるらしい。

永山折羽(ながやませつは)

不思議な体験か・・・

そういう話は嫌いではない。

ただ実際に遭遇したいとは思わないし、巻き込まれたくもない。

ああいうのは面白おかしく話せる話だからこそ楽しいと思うからだ。

それでも少しだけ、魔法を使う自分や自由自在に自由自在に時代を飛び回る自分を夢想してしまうことがあるのは内緒である。

永山折羽(ながやませつは)

まあでも不思議なことなんて起きるわけないよね

永山折羽(ながやませつは)

ん?

なんか変わった犬だな

なんか顔に貼られちゃってるし可哀想だね

ほらほらおいでー

ううぅぅぅぅぅぅぅぅ

あんまり人になついてないみたいだね。手え伸ばすと噛まれちゃうかもよ

あ、それがいじゅうっていうんだよ! お母さんが前に言ってた

えー! ほんとに?

ほんとだよ。危ないから攻撃しようぜ

うううううううううううう

可哀想だよ、そっとしておこうよ

こういうのは早めに倒しておかないと危ないんだって!

えい!

ぎゃん!

効いてるのかな

反撃してくるまえに連続攻撃だ!

永山折羽(ながやませつは)

あの子たちもしかして動物をいじめてるの?

永山折羽(ながやませつは)

止めなきゃ

えい! えい!

それ! どっかいけ!

くぅぅぅぅん

まだ倒せないのか、まだまだ

ねえ、ほんとにかわいそうだよ。やめてあげよう

永山折羽(ながやませつは)

君たち!

うわ、なにお姉さん

永山折羽(ながやませつは)

この子が可愛そうでしょ! いじめるのはやめて!

いじめてなんかないよ。そいつがいじゅうだから倒さなきゃいけないんだ

永山折羽(ながやませつは)

この子は君たちに何もしてないでしょ!こんなことしたらダメ!

そうだよ! 弱い者いじめはダメって先生言ってたもん!

あー、そういえばそうだったね

ちぇ、お姉さんが噛まれても助けてあげないから

行こうぜ、みんな

うん!

あ・・・お姉さんごめんなさい

永山折羽(ながやませつは)

これからはこんなことしちゃだめだからね。みんなにも言ってあげて

はい!

永山折羽(ながやませつは)

大丈夫!

くぅぅぅぅん

そこにうずくまっていたのは犬のような狐のような動物だった。

鈴がついているので近所の人のペットかもしれない。

永山折羽(ながやませつは)

顔にもなんか貼ってある。いたずらされちゃったのかな

うううううううううううう

その子の額に張られているものに手を伸ばそうとすると敵対心をあらわにするようにうなり始めた。

永山折羽(ながやませつは)

え、とっちゃだめ?

うううううううううううううう

永山折羽(ながやませつは)

ご、ごめんね

見たところ目立った怪我はしてないようなので、大丈夫そうだ。

永山折羽(ながやませつは)

ひとりでおうちに帰れそう?

わう

言葉は伝わっていないと思うが、猫や犬は自力で帰宅できると聞いたことがある。

永山折羽(ながやませつは)

そっか、それじゃあね

私はその動物に別れを告げると帰路についた。

・・・・・・

永山折羽(ながやませつは)

結構遅くなっちゃったな

学校を出た時にはまだぎりぎり顔を見せていた太陽も完全に沈み、周りの家にも煌々と明かりが輝いていた。

永山折羽(ながやませつは)

・・・あの子ちゃんと帰れたかな

あの不思議な動物。無事に帰れたのだろうか。

永山折羽(ながやませつは)

考えてても仕方ないか

そんな考え事をしていると家の前についていた。

永山折羽(ながやませつは)

明日の朝にでも少し様子を見てみようかな

そう決めると、私は玄関のドアを開けた。

永山折羽(ながやませつは)

ただい・・・・・・あれ?

ドアを開けたつもりだったが、私は帰り道の途中を歩いていた。

永山折羽(ながやませつは)

あれ? 私なんでこんなところに・・・

永山折羽(ながやませつは)

疲れてるのかな

そんなことを考えていると家の前についていた。

永山折羽(ながやませつは)

疲れてるのかな。今日は早く休もう

そう決めると、私は玄関のドアを開けた。

不思議なことなんて

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