世界には説明ができない現象が起こることがある。
世界には説明ができない現象が起こることがある。
例えば空間が歪み、存在しないはずの場所に迷い込んでしまう。
例えば気が付くと数年後の未来に飛んでしまっている。
そんな不可解な現象はいつ誰が体験するかはわからない。
そんな不思議なことがないかなーって思ってるんだよね
相変わらず好きだね、そういう話
だって摩訶不思議だよ! 大冒険が始まるかもだよ!
あはは、神木ちゃんらしいね
タイムリープは少女なら誰しも憧れるものだよ
飛べええええええええええ! って
ちょ、ちょっと!? 窓開けて何する気なの!?
放して! 私は飛ぶの! あの時間に!
無理だから! 落ちちゃうから!
じゃあまた明日ねー
うん、また明日
太陽が街並みの中に落ちそうになる頃。私たちは教室で騒いでるところを先生に見つかり、下校することになった。
オカルト関係がすごく好きな神木ちゃんは、よく不思議体験の話をする。
本人が体験したことではなく、インターネットの掲示板などに載っている嘘か本当かわからないものだが、彼女はその話に強く惹かれるものがあるらしい。
不思議な体験か・・・
そういう話は嫌いではない。
ただ実際に遭遇したいとは思わないし、巻き込まれたくもない。
ああいうのは面白おかしく話せる話だからこそ楽しいと思うからだ。
それでも少しだけ、魔法を使う自分や自由自在に自由自在に時代を飛び回る自分を夢想してしまうことがあるのは内緒である。
まあでも不思議なことなんて起きるわけないよね
ん?
なんか変わった犬だな
なんか顔に貼られちゃってるし可哀想だね
ほらほらおいでー
ううぅぅぅぅぅぅぅぅ
あんまり人になついてないみたいだね。手え伸ばすと噛まれちゃうかもよ
あ、それがいじゅうっていうんだよ! お母さんが前に言ってた
えー! ほんとに?
ほんとだよ。危ないから攻撃しようぜ
うううううううううううう
可哀想だよ、そっとしておこうよ
こういうのは早めに倒しておかないと危ないんだって!
えい!
ぎゃん!
効いてるのかな
反撃してくるまえに連続攻撃だ!
あの子たちもしかして動物をいじめてるの?
止めなきゃ
えい! えい!
それ! どっかいけ!
くぅぅぅぅん
まだ倒せないのか、まだまだ
ねえ、ほんとにかわいそうだよ。やめてあげよう
君たち!
うわ、なにお姉さん
この子が可愛そうでしょ! いじめるのはやめて!
いじめてなんかないよ。そいつがいじゅうだから倒さなきゃいけないんだ
この子は君たちに何もしてないでしょ!こんなことしたらダメ!
そうだよ! 弱い者いじめはダメって先生言ってたもん!
あー、そういえばそうだったね
ちぇ、お姉さんが噛まれても助けてあげないから
行こうぜ、みんな
うん!
あ・・・お姉さんごめんなさい
これからはこんなことしちゃだめだからね。みんなにも言ってあげて
はい!
大丈夫!
くぅぅぅぅん
そこにうずくまっていたのは犬のような狐のような動物だった。
鈴がついているので近所の人のペットかもしれない。
顔にもなんか貼ってある。いたずらされちゃったのかな
うううううううううううう
その子の額に張られているものに手を伸ばそうとすると敵対心をあらわにするようにうなり始めた。
え、とっちゃだめ?
うううううううううううううう
ご、ごめんね
見たところ目立った怪我はしてないようなので、大丈夫そうだ。
ひとりでおうちに帰れそう?
わう
言葉は伝わっていないと思うが、猫や犬は自力で帰宅できると聞いたことがある。
そっか、それじゃあね
私はその動物に別れを告げると帰路についた。
・・・・・・
結構遅くなっちゃったな
学校を出た時にはまだぎりぎり顔を見せていた太陽も完全に沈み、周りの家にも煌々と明かりが輝いていた。
・・・あの子ちゃんと帰れたかな
あの不思議な動物。無事に帰れたのだろうか。
考えてても仕方ないか
そんな考え事をしていると家の前についていた。
明日の朝にでも少し様子を見てみようかな
そう決めると、私は玄関のドアを開けた。
ただい・・・・・・あれ?
ドアを開けたつもりだったが、私は帰り道の途中を歩いていた。
あれ? 私なんでこんなところに・・・
疲れてるのかな
そんなことを考えていると家の前についていた。
疲れてるのかな。今日は早く休もう
そう決めると、私は玄関のドアを開けた。