刃と刃がぶつかり、独特の金属音が寺院内に鳴り響く。

 地面を蹴って勢いをつけた俺の一撃を、レイスは短剣で受け止めた。

レイス

…なかなかやるわね

アコード

そりゃ、どうも!!

 刀身に力を入れると、相手の短剣から伝わる力の反動を利用し、数歩後ろへ飛び退く。

アコード

俺のショートソードの一撃を短剣で受け止められるということは、力は俺以上にあるということか…

 ふと、相手の短剣を見ると、俺のショートソードと接触していた部分が欠けていることに気付く。

レイス

おやおや、そのショートソードには、どうやら『魔法』が込められているみたいだね…どこでその剣を…いや、そんなことはどうでもいいさね

アコード

どういうことだ!

レイス

どうせ、その剣は数分後には私のモノになっているからだよ!

 するとレイスは短剣を勢いよく寺院の壁めがけ投げ捨てた。

 そして、背負っていた鞘から2本のショートソードを両手で抜き去ると同時に、地面を蹴り俺に突撃してきた。

アコード

グワッ…

レイス

…今のあんたに、そのショートソードは『宝の持ち腐れ』だよ!

 レイスの片手の一撃を俺はショートソードで防いだものの、もう一方のもち手の一撃をわき腹に食らいその場に蹲ると同時に、口から生暖かいものが吐き出されるのを感じた。

レイス

いくら魔法に耐性があるとは言え、弱っている身体にこの魔法を弾くだけの力はあるまい…

レイス

スピリットドミネーション!!

 俺の頭上に、再び紫色の雲のような物体が突然現れ、俺を包み込む。

アコード

くっ…そ…

 俺はレイスの精神支配の魔法に犯され、その場に倒れ込んだ。

アルモ

…ア……ド……アコー………アコード、アコード!しっかりして…

 朦朧とする意識の中、俺は俺の名を呼ぶ馴染みとなった声に導かれ、目を開けた。

アコード

アルモ…ここは一体…

アルモ

寺院で出くわしたあいつに、ここに運ばれてきたみたい…

 周囲を見渡すと、そこは洞窟の牢の中のようだった。

 鉄格子の外の廊下には、たいまつが轟々と燃えているのが見える。

 そして、その下に俺のショートソードとアルモの剣が立てかけられていた。

アコード

そうか…俺たち、捕まってしまったんだな…

アルモ

そうみたい…早く王都に行って、ガイーラさんと合流しないといけない、というのに…

アコード

ガイーラ、とは?

アルモ

フォーレストの近衛隊長を務めている、私の友人なの

アコード

その人と合流する途中にフォーレスタにたまたま立ち寄って、俺たちの村を救ってくれた、という訳か…

アルモ

そういうことになるわね

アルモ

シッ…誰か来たわ…

…この2本の剣は、確かあの子が持っているはずのもの…

アルモ

!!その声は、ガイーラなの!?

ガイーラ

アルモ!アルモなのか!?

 鉄格子の向こう側に、長身の騎士が現れる。

ガイーラ

やっぱりアルモだったんだな…一体どうしたんだ!?

アルモ

ガイーラ!あなただったのね…良かった…あなたこそ、どうしてこんなところに!?

ガイーラ

王都近くの村の寺院が襲われている、という報告を受けて調査をしに来たんだが、酷い有様になっていてな…

ガイーラ

それで、それを仕出かした犯人と思しき人物の後をつけてきたら、ここにやってきた、という訳だ…アルモは、まさか…

アルモ

その人物と戦って、見事に負けたわ…私は、精神支配の魔法をかけられて、すぐに戦線離脱しちゃったんだけど…

アルモ

アコード!あなたは、もしかして…
って、まだ紹介していなかったわね…
アコード、ここにいるのが、さっき話をしていたフォーレスト国の近衛隊長ガイーラさん!

アコード

アコード=フォーレスタです

ガイーラ

フォーレスタって…フォーレスタ村の村長の一族か?

アコード

はい。今は私の母が村長を務めていますが…

ガイーラ

そうか…それでアルモ、何か言い掛けていたようだけど…

アルモ

そうだったわ!アコード。私はあいつの魔法にやられてしまったけど、貴方はどうだったの?

アコード

俺は、最初の魔法を弾き返せたみたいで、そいつと…レイスと戦った

アルモ

レイス…あいつはレイスというのね…

ガイーラ

レイス…

 レイスという名を聞き、首を傾げるガイーラ。

アコード

ああ。でも、俺の攻撃は通じなかった。レイスの攻撃をもろに食らって、2回目の魔法で俺は気を失ったんだ…

アルモ

そうだったの…

ガイーラ

2人とも、立てるか!?とりあえず、ここから急いで出たほうがいい

アルモ

そうね。ガイーラさん、この鉄格子、どうにかできる!?

ガイーラ

ちょっと待ってろ。2人とも、そこから離れて

 牢の奥へ下がる俺とアルモ。

 次の瞬間、ガイーラは剣を鞘から抜き去ると、目のも留まらぬ速さで錠前を攻撃し、破壊した。

鈍い音と共に、鉄格子の扉が開く。

ガイーラ

さぁ、こっちだ

アルモ

ありがとう、ガイーラさん

アコード

ありがとう

 牢から脱出した俺とアルモは、たいまつの前に立て掛けられたそれぞれの武器を手に取ると、ガイーラの後に続いた。

 しばらくすると、出口らしき光が見えてきた。

ガイーラ

もう少しでここから脱出できるぞ!

アルモ

そうみたいね。急ぎましょう!

アコード

ああ

 そして、外に出た瞬間…

ご苦労さん!お三方!!

 俺たちは、聞き覚えのある声に立ち止まり、振り返った。

 第4話 へ続く

Episode3「捕縛」 第3話~捕縛と脱出~

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