……これがラストゲームにしてみせる。
そう声に出して、臨んだゲーム。
今度こそ、皆で勝つよ。
そして、終わらせるんだ。この連鎖を。
……
…………はじめまして、金島旭です
よろしくお願いします
……これがラストゲームにしてみせる。
そう声に出して、臨んだゲーム。
今度こそ、皆で勝つよ。
そして、終わらせるんだ。この連鎖を。
……わたし、一ノ瀬カンナ
よろしく……
周防澪、よろしく
二人もいる。
視線が合う。軽く頷く。
意思疎通は取れている。
大丈夫、今度こそ。
そんな気がする。
……九重です……
十文字リンというわ
二木珊瑚、よろしく……
四宮ミカ、よろしく
自分はッ!
太田原五郎でありますッ!
丹下むつみっていう
よろしく
……今まで見てきたメンツ。
ここまでは変わっていない。
でも、このゲームで一人だけ、知らない顔がいた。
秋野さんは消えていた。クリアして抜け出したのだ。
その代わりに入ってきたのがこの人。
七河アスミ
嫌な予感がするけど、よろしく
新しい人、七河アスミさん。
……ぼーっとした顔をしているけれど、どこを見ているのだろう?
そんなことはどうでもいいか。
それよりも、始めよう。
頑張れ私、負けるな私。
ラストゲームに出来るように!
現状があーだこーだなるのは毎回のことだ。
そこは大して重要じゃない。割愛することとして。
重要なのはこちらだ。
占い師っ……!?
何と。
今回の私の役職は占い師だった。
これは、何という幸運だろうか。
私が場を取り仕切ることができる、貴重な立場になれたのだ。
……狩人!
また村人……
勝てるのかな……今度は……
驚いている周防さん。
ちょっと絶望している一ノ瀬さん。
一ノ瀬さんは先んじて村人なら顔でわかると言っていたので、多分村人。周防さんは……何だろう?
そして、ゲームが始まる。
初日の追放者を差し出せという指示に、私たちは誰を殺すかを決めなくてはいけない。
こいつでいいんじゃない?
初っ端から、注目を集めるようなことを言ったのは七河さんだった。
こいつ、と言ったのは太田原さんを指差した。
な、何故に自分なのでありますかッ!?
理由が必要か?
七河さんはただただ、淡々としている。
理由を逆に問う。お前じゃなぜ悪いのか、と。
九重さんとは違うタイプの人間にゾッとする。
一々聞いてどうすんのさ、そんなん
殺れって言われた、だから殺る
そんだけの理由しかないだろ
正当な理由があんなら聞いてやる
何だ、言ってみろよ理由ってのを
微妙に男口調になりながら、言ってみろという。
太田原さんはダラダラ冷や汗を流して弁明する。
いや……あの……
自分は、村人というのであります……
殺される理由は……ないのであります……
懸命に生きたい、やめてくれと言っているのに。
七河さんはまるで機械のように、無情な決断を言う。
そうか、村人か
じゃあ生かす理由も特にないな
あんた以外も村人はいるし
別段リスクはないだろ
うっし、みんな
こいつ殺そ
手を叩いて、投票を促す。
完全に場を取り仕切っている。
まるで占い師のように……。
まるであなたが黒のように見えるわ
なぜそこまでその人にこだわるの?
十文字さんが怖い顔で七河さんに迫る。
尤もな質問に、彼女も尤もな返答をする。
いや、別に誰でもいいよ私以外なら
何なら十文字、あんた死ぬか?
…………
自分生きてりゃ文句ないだろ?
だからいいじゃん、こいつで
極論、自分以外なら誰が死んでもいい。
この状況なら、そう判断するのが合理的だ。
指定された本人以外は。
太田原さんはいやだいやだと抵抗する。
でも、数の暴力には勝てない。
理由なんて適当だよ
誰か死なねえと全滅だよ?
そりゃあ、覚悟決めるさ
自分は違うでありますッ!
聞いて欲しいのであります!
そうか、違うか
なら死んで証明しろよ
聞く耳を持たない。
七河さんのその一方的な態度に言葉を失う私、一ノ瀬さん、周防さん。
…………ごめんね
選ばれたら生きる道はないから、仕方ない。
一度殺された身としては、抵抗しても無駄だということを悟れない心情がよくわかる。
いい気分じゃないけど、仕方ない……。
ええ、分かったわ七河さん
貴方に合わせる
……わたしも
異論はない……
仕方、ないし……
私たちは彼女に従う。
その態度に、私たちには笑顔を向ける七河さん。
そっちの三人は物わかりいいじゃん
オッケー、なら合わせてくれよ
結果として……太田原さんは初日に追放された。
七河さんの先導により、彼は引導を渡された。
成す術もなく、悲しみの声を出しながら……。
よお、占い師
元気か?
ッ!?
およっ?
この反応はほんもんかな?
追放を終えたあと。
部屋から出た私にそう声をかけてきた七河さん。
思わずびくりとすると、彼女はニコッと笑う。
あははっ、占い師みーっけっと!
無邪気に笑って、私の前に躍り出る。
な、何でこの人……私の役職を……!?
動揺しすぎだってば
私エスパーじゃねえよ
ただカマ掛けしただけ
あんた、面白いぐらい素直だな
か、カマ掛け!?
そんな古典的な手で私をしぼり出したのか……!
なんて姑息な!
わ、私違うよ……
安心しなよ
もうバレてっから
あっ、因みに私霊能者な?
あいつ殺し先導したのは自分で調べられっから
以上、理由はこんだけ
あっけらかんと己の役職を明かす。
往来の廊下なのに。
でもカマ掛けに引っかかった私じゃもう無理だ。
大人しくしておこう。警戒はするけど。
おーい、そっちの二人!
聞き耳立ててないでこっちこいよ!
そう廊下の角を手招きする。
誰かいたのかっ!?
まずい、聞かれたかも……。
……
恐ろしい察知能力ね……
角から出てきたのは、二人だった。
安堵する私。二人なら、安心だった。
バツが悪そうにこちらに来る二人に、七河さんは笑う。
警戒すんなよ狩人
私は狼じゃないぞ
!!
?
ま、またカマ掛けしている。
面白いように動揺する周防さんと、不可解なものを見る一ノ瀬さん。
成程……実際見るとよくわかる。
極限の緊迫状態でカマ掛けされるとすぐに態度に出るらしい。
おっし、ヒット!
これで占い師と狩人めっけ!
出鼻は悪くないな
か、カマ掛けしたわね!?
引っかかったと分かって怒る周防さん。
だろうなぁ……一ノ瀬さんはそういうことかと納得してるけど。
あぁ、いきなり悪かったよ周防
逆のパターンでも良かったんだけどな
それだと敵が増えちゃうからさ
悪びれていない彼女は、もう一度霊能者であること、そして奴を殺したのは確かめる方法があるからだと説明する。
ナルホド……
理には適ってるわね
姑息……
カマ掛けという原始的な方法で役職を探る事に一ノ瀬さんは小声でそう呟く。
ケラケラ笑って、七河さんは言う。
一ノ瀬は村人か
私の引っ掛けに変な目で見てたろ
そりゃ素村の反応だと思うよ
……
すごい人だ。
人を殺す先導をしておいて、悪びれずにもっとアクティブにゲームを進めようとしている。
結果として手玉に取られて私達は捕獲されている。
何というメンタルだろうか。恐ろしい……。
私を占ってもいいよ金島
どうせ白だしな
明日の追放者も私が決めてやるよ
ここまで堂々とされると、ちょっとな……
今夜は一応この人調べよう。
白なら狂人かもしれないけど、愉しそうにしているこの人がもしそれなら最早終わったこのゲーム。
全部バレているのだもの。
まー私リアル狂人だけどな?
っつうか楽しくないこの状況!?
このスリルッ!
超たまんねえ!!
イイヤッホゥッ!!
あ、ダメだこの人狂ってる
本当に愉しそうにはしゃいでいるこの人。
最初から別の意味で楽しんでいるだけのクレイジーだった。
まさかこんなのと一緒になるなんて……。
出た、異常者
怖……
二人もドン引きしていた。
……行き先不安になりながら、ラストゲーム目指して、自称味方のクレイジーと共に私達は進み出す。
もう嫌だ、お腹痛い……。