あるところに…
あるところに…
お前………
マジでヤバイぞ。
言いたいことはわかっている。
その視線も前から気づいている。
いや、マジでもっと危機感もった方がいいって。
おれだって好きでジムに通ってるわけじゃないんだぞ。
本当は家でゴロゴロしたいし、ご飯もいっぱい食べたいのを我慢してんだ。
私だって、夜に米を抜いて我慢してるじゃん!
今のお前は夜に米を抜いたところで変わりゃーしないよ。
ちゃんと運動しろって!
運動!
いつ運動する暇があんのよ。
家事しながらでも、ながら運動ができるだろ!
つま先だちとか、ふき掃除とか。
ほらまたそうやって言葉巧みに掃除につなげようとする…
ほら…、寺で修行している坊主いるだろ?
昔とは違って最近の精進料理はそこまで質素ではないらしいが、あの人達は寺の掃除をものすごい頑張ってるらしいぞ。
だから太らないんだ。
私のように掃除が嫌いな人はどうすればいいの?
とにかくやるしかないんだって!
掃除じゃなくて筋トレの為だと思ってやればいいじゃん!
てゆーかねー、そもそも部屋にいらない物があふれ過ぎていて、それらが邪魔で掃除する気になれないんだよねー。
でも私のものじゃないから勝手に捨てていいのか分かんないし、断捨離したいのにできないから……ブツクサブツクサ…
そーやって運動しない言い訳ばっかしてたら何一つ変わらねーぞ!
てゆーかそう責めないでよ!
自分がデブなのは百も承知してるよ!
フンだっ!!!
……………!!!
(呆れる)
次の日………
あら、しげパパから電話。
もっすぃー?
もしもし、おれだ。
今ね、昔のお前の写真を見ていてビックリしたことがあるんだ…。
一体何の電話かと思いきや…。
俺ね、再確認した。
昔のお前、可愛い…!!
痩せてて綺麗で顔も可愛いお前が、携帯の画面の中にいた…!
その美女がいまやただのデブスに…
黙ってよく聞け。
お前は痩せたら綺麗なんだ…!
自分で勿体ないと思わないか?
またその話~~~???
しつこいオッサンは嫌われるよ!
オッサンって言うな。
お前のためを思って言ってるんだ。
私だって痩せたいっつの!
でも簡単に痩せられねーっつの!
おれ、決めた。
お前が痩せて綺麗になる為なら、おれも努力する。
痩せるためのエステ?マッサージ?よく分からんけど勉強してお前にやったる。
おれも筋トレになるし。
そこまでして私に痩せてほしいんだね…。
てか私ってそこまで一大事なほどデブかな…?
デブだ…。
いい加減自覚しろ…デブ…。
でないと北斗の秘孔をつくぞ。
ぶべら!ってね。
電話はそこで途切れた。
その日の夜………
なぁなぁ……
ママって最近老けたと思わない?
………あ!
うんうん!
モコもそう思ってた!
…………マジで?
うん、マジマジ!
え?肌が劣化したとか、ほうれい線の食い込みが激しくなってきたとか、もろ視覚的な老け?
いや、そうじゃなくて…
雰囲気?がオバサンっぽくなったってゆーか…。
お前が楽を選んで髪を切ったことも、オバサンぽさに近づいてる気がする。
やっぱアレだな。
仕事辞めて人と会わなくなったら、やっぱ老けてしまうんじゃない?
刺激がないから。
うーん……そうかも。
人と会うことないし、刺激も何もないからどんどん楽な方向にいってる自分がいるのは確か…。
えー…マジでー…!?
デブって言われるより、老けたねって言われる方がショック受けたぞこれ…!
……………………。
…ねぇ、モコ。
もう一回聞くけど……
ママ、本当に老けた…?
老けた。
この一言で、私は努力して痩せて綺麗になろうと決意したのであった。