前回までのあらすじ
前回までのあらすじ
長いこと更新してなかったから
ストリエの使い方を忘れた!
メタい!
前回までのあらすじ・完
いろいろあって、僕はダン・ニャムニャ冒険相談所にお世話になることになった。
給料こそ出ないものの、とりあえず食事と寝床の心配はしなくていいらしい。
……それはいいんだけど。
そもそも相談所って何をするところなんだろう?
よくぞ聞いてくれた!
聞いてはないですね
聞いて!!
ニャムニャさんをおちょくるのも飽きてきたところだ。
仕方ないから聞いてあげようかな。
そろそろ泣くぞ! 俺様が泣いたら凄いぞ! 身も世もなく床を転げ回ってわんわん泣きわめくぞ!
相談所って何をするところなんですか?
素直にされると戸惑うな……まあいい。
冒険相談所っていうのは、本来は冒険者ギルドの一部門で、冒険者たちの相談に乗る部署……だったんだ
あれ?
冒険者とか冒険者ギルドって……。
まるでゲームの世界みたいだな。
……ま、そんなふうに言うお客はお前さんが初めてってわけじゃないよ
だが、俺様の故郷では《冒険者》って存在はフツーにいたんだ。
ときに竜を倒し、未開の地を探検し、名誉と一攫千金をねらう冒険者たち。
彼らがなにかしらのトラブルにつまずいたとき、相談所ではその道のスペシャリストを用意して彼らをサポートする……ニャムニャさんの話を総合すると、そんなところだろう。
それで……ニャムニャさんの故郷ってどこなんですか?
少なくとも現代日本には、冒険者なんていない。
そうだな……君に通じやすそうな言葉でいうと、《異世界》だな
異世界……?
そう! この宇宙は目には見えないいくつもの世界が重なってできている。俺様の世界は、君の世界とは異なる場所にあるのだ!
そしてこの冒険相談所も……。
僕の知らない世界と、世界の《狭間》にある。
ニャムニャさんはそう言った。
相談所はどの世界にも属してない。
ニャムニャさんの《故郷》からも切り離されて、相談者を求めてさまよってるんだそうな。
だから……僕はあの気味の悪いサイコロ人間に襲われても、ここに迷い込んでいたから、助かった。
どうやらそういうことらしい。
ちょっとした疑問なんですが……。ニャムニャさんの故郷とやらはどこにあるんですか?
そう訊ねると、ニャムニャさんは不意に辛そうな顔つきになった。
……わからない
……え?
普通、相談所だけを通常の次元からこんなふうに切り離すなんてことはあり得ない。だから、何かがあったはずなんだ。君の世界のように滅びてしまったとか……だけど、俺様には記憶がない
記憶がない……?
つまり……俺様は元の世界を離れ、あまりにも長い時間、たくさんの世界を行き来し過ぎてしまったんだ。
ニャムニャさんは言った。
《この相談所に長くいると、段々、元の世界の記憶を失ってしまう》
嘘だろ。
僕はしばらく言葉を失った。
そんな、そんなことが起きるなんて……。
えっと……嘘ですよね
嘘なんて言ってどーするんだよ
強がってないで僕にだけは素直に心の内を打ち明けてくれてもいいんですよ?
ツンデレとかじゃないから!!
まあ、戸惑うのも仕方がない。俺様も最初にそのことに気がついたときは、ショックだったからな。
そんな……元の世界に帰れないだけじゃなく、記憶が消えちゃうなんて……
……心配するな。俺様はベテラン相談員であるだけでなく、大魔法使いでもあるのだ。記憶のことはおいおいなんとかする方法を考えてやる
…………。
そんな顔するな! 調子が狂うだろ! ホラ、俺様が淹れてやった茶を飲め! 茶を!!
ニャムニャさんはデカイ態度に似合わず、クッキーを持ってきてくれたり、あれこれと世話をしてくれた。
ニャムニャさんは僕よりももっと前に記憶を失ってしまって……きっとそのことが辛かったに違いない。
だから僕に優しくしてくれるんだろうな。
そう思うと、どうしても本心は言えなかった。
だからといってまあいいや、と諦めることもできない。だって、せっかくあんな必死に覚えたのに……忘れないようにって、毎晩、毎晩……。
……次の定期テスト、死んだな。
……こうして僕の相談所生活がはじまった。
あと、ついでに。
ニャムニャさん改めニャムニャ所長が淹れてくれたお茶は、アールグレイの茶葉はずなのに昆布茶の味がした。