んっ……

ここはどこだろう。
目を開けると、そこは殺風景な白い部屋。




家具の一切は置いておらず、生活感がまるで感じられない。




部屋の中央には木製の椅子が1脚あり、それがこの部屋で唯一存在しているものらしい。


椅子は、映画スクリーンほどもある、大きな窓ガラスに向かっている。


たった一つの席、そしてこの部屋には私しかいない。

私……どうしてここにいるんだろう

私……誰なんだろう

記憶がない。

ここにくるまでの自分の行動は勿論、自分の名前や年齢すら覚えていない。


ただ、ひとつだけ本能的に理解しているのは、私はあの椅子に座らなければならないということだった。


木製だけあって、やはり固い。
それでも、誰かが私用に作ってくれたかのような、不思議なフィット感がある。



私の視線は、自然と正面の窓ガラスに向く。

しかし――――

何も見えない……

窓ガラスは、外からブラインドが下げてあるような、あるいは上映されるのを待つスクリーンのように真っ暗だ。


ここがどこか分かるかもと思っていた私は少ししょんぼりした。

……あれ?

ふと、窓のへりに置いてあるものが目に入った。



微かに輝くそれは――――

……砂時計?

なんか……不気味

砂時計自体が薄く光っていて、何もない部屋の中において異常な存在感を醸し出していた。

その砂時計が、私にはなんだかおぞましく見えた。


なにか嫌なものが、砂時計の中に詰まっている感じがした。

結局、ここはどこだろう……

部屋の中は何もないし、入口もない……

それなのに、監禁されているような恐怖はない。


むしろ、来るべくして来た、そんな安心感すら浮かべていた。

きゃっ!

窓ガラスが本当にスクリーンになった。


私が考えたのは、そんなくだらない事だった。

白い部屋と砂時計

facebook twitter
pagetop