初診を受けた日の寝る前に薬を飲んだ。寝付きや寝起きにこれといった変化は感じなかった。

この日は前日の夜に室外機にできてしまった蜂の巣へ殺虫剤をかけていたので、朝になったら夫が巣を取り除くという話になっていた。しかし夫は起きない。

( ˘ω˘)スヤァ

ねぇ、蜂の巣取るのやってー

うん、やるよ…やる…。

こうして夫は二度寝した。
少し経ってからまた声をかける。

ねぇ蜂の巣退治ー。やっておくれ。

ちょっと待って…

しょうがないなぁ、早くしてよねー。

何気ない会話であるが、これは今までの私にとって考えられないことだった。
今までならすぐに動いてくれない夫に対して瞬間的にイライラし、我慢しようとしてもできないという状況だ。

すごいね今日、全然怒らない。

夜になり夫が言った。薬を飲んだ後から、私は一切声を荒げることはなかった。意識してそうしたわけではない。

ちょっと自分でもびっくりなんだけど!

例えるといつも心の隅にイライラの火のようなものがあって、それが夫の一言や態度をきっかけに一気に大きく燃え上がるような感覚だった。これは自分で制御不可能なのだ。

え、ていうか普通の人ってこうなの?

だから言ってるじゃん、なんでそんなことで怒るのかがわからないって。

夫にこう言わしめるくらいにはどうでもいいことでいつも怒りが抑えられなくて困っていた。薬で何とかなるし、普通の人はこんなに怒らないのだ。

なんか世界が変わった…。

もちろん薬を飲んでいるからといって一切イライラすることがなくなったわけではない。ただ、怒るにも怒りの対象について適切な怒りの量、という感じで夫には接することができるようになった。

なんかずっと俺が「こうなってほしい」、って言ってた通りになったね。

メンタルクリニック、怒りが抑えられないなんていう内容で行ってもいいのかと躊躇っていたが行ってみて思ったことは「もっと早く行けばよかった。」だ。
相手が夫であれ、対人関係に支障をきたしていた事はっきり分かった。正直自覚がなかったし夫が悪いんだとずっと思っていた。

「女性のヒステリー」で片付けられてしまいそうなことでも、物に当たったり人に当たることは正常な精神状態ではない。性格によるものではなくなにか原因があるんだろうな、と思う。

続く

【6話】薬を飲んでみた

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