時は世紀末。
世界が荒廃しているとかそう言う事はまあまあ無く、平和な日々が過ぎる20世紀末。
都内にあって少しせわしない、とある大学の話。

葛西

うーん、なんかこの学校、サークルの勧誘多いなぁ……

やぁ、君、新入生?

葛西

えっと、はい。そうです

そっか、まだサークルに入ってないよね?

葛西

そうですね、まだ入ってないです

それじゃあテニス部来なよ。
君みたいな美人は歓迎だよ

葛西

あの、私は文芸部に行きたくて、あの

そんな、引きこもってばっかりの所行かないで、みんなで汗流そうよ。な?

葛西

えっと、運動は苦手で、その

大丈夫大丈夫。ちゃんと先輩が教えるから

葛西

あの、その

よし、それじゃあテニス部の部室行こうか!

葛西

あの、困ります

大丈夫、なにも困る事なんて無いから!

友部

先輩、テニス部の勧誘ですか?

そうだけど、君もテニス部に入りたいの?

友部

そうですね、テニスには心底興味ないです

え?じゃあ何の用?

友部

その子、嫌がってるじゃないですか。
なんで無理に連れて行こうとしてるんですか?

え?この子のどこが困ってるの?

友部

ついさっき、『困ります』って言ってましたよね?
それとも、先輩にはそれが聞こえなかったんですか?

え~、本当には困ってないだろ?

友部

なるほど、先輩は余程日本語能力が低いと見えますね

は?なんだお前喧嘩売ってるのか?

友部

事実を申し上げただけですよ?
強引な勧誘はやめた方が、テニス部のイメージアップに繋がるんじゃ無いですか?

お前黙ってればベラベラと

友部

去年、この学校のテニス部が飲み会で警察の注意を受けたそうですね。
つまり、そう言うサークルと言う事ですよね?

…………

友部

何か反論は?

くっそ、むかつく1年だな。相手にしてられっか!

友部

俺も余り先輩の相手はしたくないですね

葛西

…………

友部

…………

葛西

あの、困ってるところありがとうございました

友部

いやいや、良いんだよ。
暫くはああいう強引な勧誘に気をつけてね

葛西

でも、なんで助けてくれたんですか?

友部

ああ、高校の時の後輩でね、君みたいな子が居たから、放っておけなくてね

葛西

そうなんですか

友部

そう言えば、文芸部に行くつもりだってチラッと聞こえたけど、一緒に行くかい?

葛西

え?

友部

実は、俺も昨日文芸部に入ったばかりなんだ。
部室が少し複雑なところにあるから、良かったら案内するけど

葛西

えっと、じゃあお願いします

友部

そっか。じゃあ行こう。
ところで、名前を訊いて良いかな?

葛西

えっと、心理学科の葛西です

友部

葛西か。
俺は政治学科の友部だよ。よろしく

葛西

はい、こちらこそよろしくお願いします

友部

同じサークルに同学年が居ると、何だか心強いね

差し伸べられた手

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