崩れ果てた廃墟にある、地下へと続く螺旋階段に、恐る恐る足を置く。

 階段を下りきった先にあったのは、紫色の水を湛えた小さな泉。

……飲んで、みるか?

 突如響いた高い声に、懐中電灯を取り落とす。

……!

 先程までは無かった黄金の髪に、シリルはわなわなと唇を震わせた。

 そのシリルの前に、紫色の液体を湛えた杯が差し出される。

 飾りたてられた杯を、シリルは震える腕で受け取った。

 その昔、この地に暮らしていた一族は、紫色の水に変異する妖精との盟約によって富を得ていたという。富の噂に惑わされ、この地で行方不明になった者は数知れず。

 だが。

母の病を治すのに、お金がいるんだ

 だから。

 唇を引き結び、シリルは紫色の液体を飲み干した。

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