水平思考推理ゲームってご存知ですか。

えっ、水平思考? オカマのアタシが脳波を水平に保てるわけないじゃない! 道を歩くだけでも5秒に1回は恋してるっていうのに!!

知らないんですね。説明します。水平思考推理ゲームとは、出題者と回答者にわかれて行う推理ゲームです。

どういう推理を行うのよ?

問題だけを見ても分からないので、回答者は出題者に質問していくんです。出題者はそれに「はい」「いいえ」「関係ありません」で答えます。それを繰り返して推理していきます。

わかったわ! このアタシがソッコーで答えを導き出してやるわよ!おほほほほ!!

では問題です。

コカ・コーラ社は、ペプシに対抗するために新商品である「ニュー・コーク」を発売しようとしました。
そこで従来のコーラとニュー・コークの試作品の飲み比べアンケートをしたところ、ニュー・コークが勝利したため、コカ・コーラ社は勇み足で発売。しかし、予想に反してニュー・コークは大コケ。
いったいどうして?

うーん……アンケートの回答者がニュー・コークの開発関係者だったんじゃないかしら?
デブ専が集まるゲイバーに通ってチヤホヤされてたら、自分が一般社会でもモテると錯覚してしまった鏡餅みたいな体型のゲイを知ってるけど、それと同じよ! ということで、質問は「アンケートの回答者は最初からニュー・コーク派だった?」

いいえ。回答者はみな正直に答えた善良な市民です。デブ専の勘違いゲイではありません。

チッ……いきなり核心に迫ろうとするのは無謀ね。
コカコーラ側に問題があったのか、ペプシ側が何か仕掛けたのか、まずはそこを切り分ける必要があるわね。アタシも自分が全然モテないのは全部まわりのやつらが悪いってきちんと切り分けた上でイケメンを追いかけてるからね。ということで、ざっくりとした質問をするわよ! 「コカコーラ側に非があったの?」

賢い質問だと思います。さすがオカマ、飲み込みが早いですね。答えは「はい」です。コカ・コーラ社は間違いを犯しました。水平思考推理ゲームにおける問題は、重要な情報を欠落させた状態で出題されています。その穴を埋めるような質問は賢いです。穴を埋めると言っても下ネタではありません。

アタシもコカ・コーラの配達のお兄さんとあやまちを犯したい……。
そうね、必要な情報を探るなら、いらない情報を削ぎ落とせばいいんだわ。だとすると、”何の”よりも”どこで”一番大きな間違いを犯したかを知るのが解答への近道ね。商品の企画、開発、アンケート、発売後のどれか。絞り込むわよ!「最大の過ちは商品の企画時点で起こりましたか?」

賢いオカマ本領発揮ですね。答えは「いいえ」です。ニュー・コークの企画時点での過ちはありませんでした。

えー、面倒くさいから2つ一度に質問するわよ。「開発の時点?」「アンケートの時点?」

雑ですね。質問力はあるけど推理力がない。面倒なので答えますが、コカ・コーラ社最大の過ちはアンケートの時点で発生しました。そこから推理してください。

目の前の男がゲイかノンケかの判断に関しては金田一耕助以上の推理力を発揮するわよ。あ、ちなみに金田一耕助も男としてイケるわ。
アンケートでの過ちってことは、実際に商品を購入した人とのあいだに何らかの差があったんだわ。アンケートの回答者だけが美味しいと感じた理由があったのよ!そこは間違いないかしら?質問は「アンケートの回答者だけが美味しいと感じる理由があった?」

いい質問ですね。答えは「いいえ」です。確かにアンケートは失敗でしたが、出た結果については信用がおけるものでした。

なんでよ!んもう!
結果も信頼できて、人選も”善良な市民たち”。非の打ち所のない完璧なアンケートじゃないのよ。あ、もしかして……「アンケートを取ったこと自体が失敗だったってこと?」

惜しい質問です。それは「いいえ」ですが、ヒントをあげます。このアンケートは、足りなかったのです。

”足りない”って言葉を素直に受け取るなら、コーラの量かしら? アンケートで飲ませた量が少なすぎたのよ。アメリカ人は毎日信じられないくらい大量にコーラを消費してるだろうから、しつこい味のニュー・コークは受け入れられなかったんだわ。
たとえばクリームソーダなんかは、最初のひと口目は美味しいと感じるけど、最後の方は甘いゲロみたいな味しかしないわよね。苦~いビールのほうが何杯でもいけちゃう。
質問は「アンケートで飲ませたコーラの量が足りなかった?」

すごい、正解ではないですけど、納得できる答えですね。1ポイントあげます。答えとしては「関係ありません」といったところです。足りなかったのは、量ではなく、アンケートの項目。ここらへんで一度、アンケートから離れた質問をした方がいいかもしれません。

ええっ絶対正解だと思ったのに!
3ポイント貯まったらラグビー日本代表との合コンをセッティングしなさいよ!!

アンケートの項目が足りないってことは、これまでの内容から、製品そのもの以外の要素で懸念すべき点があったんだわ。デザインやコマーシャルの問題であれば"アンケートの時点で問題が起きた"とはならないし。
となると、コカコーラというブランドで新製品を出すことに消費者が何か違和感を覚えたと考えるのが妥当ね。大コケの原因が不買運動か、それに近い動きの可能性がある。だって製品は美味しいんだから。
質問よ、「大コケの原因はコカコーラのブランドに関係がある?」

これは、かなりいい質問です。あと一歩なんですよね。ブランドは直接的には「関係ありません」が……ちょっと答えにくい質問でした。1ポイントです。

……あと1ポイントでラグビー日本代表と合コンだわ……!!

って、全然「はい」の質問に行き当たらないじゃないのよ!!ふざけんじゃないわよほんとに!!
でも、核心に近づいてきたわね。ブランドには直接は関係ないけど、間接的には関係があるのかしら?完璧な製品を開発してブランド自体に傷を付けたわけじゃないけど、アンケート時には気付かない何かで消費者の反感を買ったのかも。消費者には提示していない情報があった。でも、新製品が発売されて消費者にとってマイナスとなることなんてあるのかしら?選択肢が増えていいと思うんだけど。
質問よ。「ニューコークが発売されて、なにか消費者にとってデメリットが発生した?」

近づいてきましたよ。答えは「はい」です。特に「アンケート時には気づけない何かで消費者の反感を買った」という点はほぼ正解と言ってもいいくらいです。さて、あと一歩。アンケートの不備に迫ってください。

よし! 「はい」だったのにポイントがもらえなかったのはこのさい不問とするわ!!
新製品が発売されて反感を買うとしたら。たとえばお気に入りのオラオラ系メンズバーの店員に、常に萌え袖の可愛い系の男が入ってきたとするわよね。すごく気の利く子で、客からの好感度アンケートも悪くなかった。でも、だんだんと可愛い系の店員が増えて、ついにはオラオラ系のイケメンが誰もいなくなった。コウジに会いたい。コウジに会いたい!!もうあのメンズバーには行かない!!コウジー!!ってなっちゃう。つまり、コカコーラ社は新製品を販売したんだけど、既存のコーラの販売は停止したんだわ!それで旧来のコカコーラファンから反感を買ったのよ!質問よ!「アンケートに足りなかったのは、既存のコーラに関する項目?」

大正解です!答えはもちろん「はい」ですね。ポイントはありませんが、おめでとうございます。

ポイントねぇのかよ!どういう基準の何のポイントだったのよ!!
でもまぁ、よかったわ正解して。で、コカコーラ社とニューコークはそれからどうなったの?

コークファンからコカ・コーラに対する抗議が殺到しました。一日8000件とも言われています。ほとんどがコカ・コーラを失ったことに対する批判。不買運動まで起き、コカ・コーラ社は謝罪して従来のコークを復活させたそうです。

最初から新旧の味を併売しておけば、こんなことにはならなかったのかしらね。私のまわりの人たちは私がある日突然オカマになっても特になにも言わず受け入れてくれたけど、これはどうして?

男としてのあなたが、従来のコークほど人気なかったのでは?

落ち目の女優が脱ぐようなものね。納得したわ。

話戻しますけど、この話で重要なのは「アンケートは訊いてないことについては答えられない」という当たり前の事実なんですよ。

「性格もいいし身体も最高、家事も完璧で床上手!こんな子と付き合ってみたいですか?」ってアンケートに「はい」って回答したら私が玄関先に立ってたみたいな話よね。

分かりやすい喩えですね。
コカ・コーラ社はニューコークを導入した際に従来のコークを販売停止にする旨をアンケートに明記すべきでした。そうしていればアンケートの結果は芳しくなかったはずです。勇み足になって失敗することを防げたでしょう。意義のある結果を得たければアンケートの内容は精査しないといけませんね。統計学の観点からも示唆的なトピックでした。

天下のコカコーラが己に負けるなんてね。今後は私も、男に誘われたら「こんな女でも……いいですか?」ってちゃんと聞くようにするわ。

話が沈没したので次の問題にいきましょう。

山田夫妻が住む家は、A駅とB駅のちょうど真ん中あたりにあります。朝、夫はA駅に向かい、妻はB駅に向かいます。
しかし帰宅時には、夫はB駅から、妻はA駅からやってきます。
さて、どういう理由でしょうか。
なお、A駅とB駅の駅周辺は似通っていて、特殊な店はありません。

……妻はブスですか?

エピソード2に続く!!

水平思考推理ゲームvol.1 ニューコークとアンケート

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