番外編 Forget-me-not

赤音

……レンくん

盗み見なんてデリカシーのない人ね

赤音

ミミさん、私……貴女が羨ましいです

え? 恋人になれたのはアナタだけなのに? レンくんが好きになったのはアナタなのに? 欲張らないでよ

赤音

ミミさんはレンくんにたくさんプレゼントしています。ヌイグルミも夢も……もしかしたらレンくんが死ぬときに思い出すのはミミさんかもしれない

……アイさん、レンくんのことわかってないわね

赤音

え?

彼は優しい子。思い出を大事にする人だから、アイさんとの思い出だって大事にしてるのよ

赤音

………そうかな

苛々するわね!

赤音

ごめんなさい

恋はしないって言っていたのに、レンくんはアイさんに恋をした。
貴女に恋をしたことで答えに辿り着いた。
私への気持ちが【恋】じゃないって確信したのよ。

赤音

そうだったんだ

貴女に恋をしてからのレンくんはどんどん前に進んで行ってしまう気がしたの。
私はレンくんたちが、どんどん大きくなって、前に進んでいって、見えなくなってしまうのが怖くて。
それでつい引き留めようとしてしまった。

赤音

その気持ちは分かるよ。友達が将来のことを考えているのを見ていると、足を引っ張って引き留めたくなるよね。

ランくんと、アナタを殺したかもしれない親友さんのことね。憎んではいないの?
お金持ちの権力を使って捜査を打ち切りにするなんて、これだからお金持ちは。

赤音

アメリちゃんの悪口は言わないで。あの子は私を一番の友達だって言ってくれた大切な子。

外国に逃げるそうよね。

赤音

逃げないよ、アメリちゃんは立ち向かっている。意地悪な同級生に対しても、

金持ちはズルいな。
お金で解決しようとしている。

アメリ

金に物を言わせたと言われても否定はしません。お父様が色々やってくれたお蔭で捜査が打ち切りになっているのですから。

……っ

アメリ

確かに私が犯人じゃない証拠も、犯人だという証拠もありませんよね。
疑っている人間がいないとも限らない。
私は卒業したらここを離れます。
私を知らない場所にね。
逃げたと言われても否定しません。
ですが、そこで精神を鍛えて必ず帰ってきます。

赤音

って、言ってたの。
アメリちゃん、カッコイイよ。

はいはい

赤音

やっぱり、レンくんにも何かあげたかったな。何もあげてないのは悔しい。

アイさんがレンくんに何もあげていないなんて、どの口が言うのかな

赤音

へ?

溢れんばかりの愛情を与えたじゃないの

赤音

照れるなぁ

もう、苛々する。何処か行ってよ

赤音

あ、ごめんなさい

アキラ

ここは?

レン

オレの彼女の墓だ

アキラ

ほう

レン

勿忘草をあげていこうかと思って

アキラ

ママのところにあげてこよう、後でおばさまのところにも行こうね

レン

アニキにもあげてやってくれよな

アキラ

断る! ランくんに関してはお兄ちゃんっ子のレンレンのお仕事でしょ

レン

………行ったか

レン

アイ

赤音

はい!

レン

………………

赤音

レン

………

赤音

………………………

赤音

あの、レンくん。私が見えるのですか

レン

久しぶり

赤音

え~っと

レン

forget-me-not

赤音

これは

レン

勿忘草、花言葉は【私を忘れないで】

赤音

レンくん、私はレン君を忘れないよ

レン

この花は、オレの亡くなった母親が好きだったんだ

赤音

レンくんのお母さんって亡くなっていたんだ

レン

オレを産んだ母親はな、今は義母がいるよ。

赤音

そうだったんだね

レン

オレはこれを母親と、もう一人、大事な友達の墓前に毎年あげているんだ。

赤音

大事な友達?

レン

幼稚園のときに一緒だった女の子がいたんだ。特別な友達だ。もしかすると好きになったかもしれないぐらいには仲が良かった。
だけど交通事故で死んでしまった。
もう、何処にもいない。

赤音

そんな人がいたなんて知らなかった。
でも、黙っていても良い話じゃないの?

レン

隠し事はしたくなかったんだ。アイに黙って彼女に花をあげるのは少しだけ罪悪感があってさ

赤音

去年もあげてたよね。少しだけ気になっていたんだよ。一体誰なんだろうって。

赤音

教えてくれてありがとう

レン

これからはアイにもあげようかと思うけど欲しいかな?

赤音

欲しいです……あ

レン

どうかしたか

赤音

レンくんにお花もらったの初めて

レン

待て待て、月命日に花はあげていたはずだが

赤音

手渡しで受け取ったのが……です。
って、レンくんに触れてる……
あ、もしかすると………

レン

アイ?

赤音

レンくん、ごめんなさい

レン

赤音

うわ、やっちゃった。へへへ、キスしちゃった。ヘヘヘヘヘハハハハハハ!!!

レン

いきなり出て来たと思ったら、いきなり消えて困った奴だぜ

赤音

キャハハ

ちょっと、何してるのよ

赤音

へへへ、キスしちゃった

特別に触れさせてあげようって【おまじない】しただけなのに、まさか、こんなことって

決めた!!

私、生まれ変わったら絶対にレンくんと結婚してやる

赤音

ええ?

どこの馬の骨かもわからない貴女なんかに渡さない。女からキスするなんて、はしたないわ。
誘惑されないように見張って、守らないと

赤音

そんなのズルいよ、私もレンくんの恋人になる

貴女の従兄弟はヤンデレでホモな奴って聞いてるわ。貴女からも危険な気配がする。ダメ、絶対に近づけさせない。

赤音

私はヤンデレじゃないし、ホモでもないです!! ところでヤンデレって何ですか? ホモって何ですか?

レン

なんだろう、もの凄い悪寒を感じるのだが

アキラ

あたためてあげようか

レン

却下だ

 そして、墓地を後にする。




 初めて好きになってくれた少女と、
 初めて好きになった少女に、

 同じ花を捧げて……

番外編 Forget-me-not  4話(終) 

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