シャンブル・ヤーデ

やあアスター君。健在かな?

アスター・クライノート

おかげ様で元気にしてますよ、先生

シャンブル・ヤーデ

足の具合はどうだね?

アスター・クライノート

別にどうもありませんよ。足に若干感覚があって、でもその程度です

アスター・クライノート

まぁ、最近は少し胃が痛むことが増えてきましたけど

シャンブル・ヤーデ

おや、この時期に食べ過ぎはよくないよ。いくら儲かっているからって、高価な料理ほど香辛料が強いからね

アスター・クライノート

そうじゃありませんよ。……分かってるでしょう?

シャンブル・ヤーデ

あぁ、クリエ君のことだね。今日だったかい?

アスター・クライノート

ええ。今朝プルートシュタイン家に届いたそうですよ

シャンブル・ヤーデ

相変わらず、あの娘は自分の名前を気に入ってるみたいだね

アスター・クライノート

それしか親にもらってないから、とはいってましたよ。姓の方は、俺も姉さんも覚えてないけど

シャンブル・ヤーデ

君は、私を恨んでいるかい?クリエ君にCS移植手術を施さなければ、彼女が怪盗シャムロックになることも、危険な行為に走ることもなかった

アスター・クライノート

しかし、裏を返せば、貴方がCSを移植しなければ姉さんは今頃生きてはいない。肺の腫瘍が広がって、苦しみながら死んでいたでしょう

アスター・クライノート

けど、姉さんを死なせるなんて選択肢は、俺の中には存在しない。姉さんを助けるためだったら、それが違法だろうと非道だろうと構いはしない

シャンブル・ヤーデ

それは、私を許しているということかな?

アスター・クライノート

許すとか、そういうものは置いておきましょう。俺はいい加減な人間だから、姉さんが近いうちに死んだら先生を恨むと思うよ

シャンブル・ヤーデ

やれやれ、随分と手厳しいことだ

シャンブル・ヤーデ

確かに、CSはまだ研究段階で、実用化には程遠い。病を負った臓器と交換することで延命できるうえに爆発的な身体強化を得られるが、やはり身体的な負荷は看過できない。それに、肝臓や心臓といった、あまりに多機能な臓器の代わりはしきれないというのも問題の一つと言うべきか

アスター・クライノート

まぁ、心臓なんて人の核ですからね。さすがに宝石で代用は無理があるでしょう

アスター・クライノート

あれ?姉さんこのこと知ってるのかな?CSじゃあの人を助けられないってこと……

シャンブル・ヤーデ

だが、それができなくては実用化は難しい。癌による死は現状の医学では治せない不治の病だ。口惜しいことに、ここ数年の癌による死亡率は40%を超えている

シャンブル・ヤーデ

そして、ここからが今日の本題だ。最近、クリエ君の笑顔が減ってきていないかね?

アスター・クライノート

……さぁ、言われてみれば昔ほど笑わなくなった気がしなくもないけど、それが何か?

シャンブル・ヤーデ

つい最近分かったのだが、CSは移植者の脳にも影響を及ぼす可能性が浮上したんだよ

アスター・クライノート

……人の脳?

シャンブル・ヤーデ

各臓器が繋がれている神経を通じて脳にも影響を与えて、感情を制御する可能性が出てきたという話だよ。口数が減り、感情も希薄になるらしい

アスター・クライノート

……じゃあ、最近姉さんの笑顔が減ったのも、CSだってこと?

シャンブル・ヤーデ

そうなってくる。だが、断定はできない。なにせクリエ君も含めて移植手術の成功者が少ないんだ。検証のしようがない

アスター・クライノート

……それ、いずれは自我も消えてCSに支配されるとか、そういうオチはないよね?

シャンブル・ヤーデ

分からない。だが、私とてそれは避けたい。人は宝石に助けられることはあっても、宝石に支配されるのは間違っているからな

アスター・クライノート

どうぞ!

フリーダー

失礼いたします

アスター・クライノート

あなた誰です?鑑定の依頼ですか?

シャンブル・ヤーデ

いやいや!彼女はフリーダーといって、私の身の周りの世話をしてくれているんだ

アスター・クライノート

先生の?

フリーダー

フリーダーといいます。どうぞよろしく

アスター・クライノート

……うん、こちらこそ

フリーダー

シャンブル様、お時間です

シャンブル・ヤーデ

もうそんな時間かい?早いものだね

シャンブル・ヤーデ

では、アスター君。また今度ゆっくり話そう

アスター・クライノート

ええ。たまには仕事も一緒に連れてきてくださいよ

シャンブル・ヤーデ

はっはっは!そのうちにね!

シャンブル・ヤーデ

それと、ナルシス卿にもよろしく言っておいてくれ給えよ?

アスター・クライノート

…………会ったら伝えておきますよ

フリーダー

…………

アスター・クライノート

……なんかあの人、姉さんに似てる。雰囲気とか、まとってる空気が

アスター・クライノート

それに、あの顔見覚えがある……。でも、顧客には見覚えがないし、じゃあ一体……?

怪盗シャムロック

…………

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