アイリス

今日も誰も近寄ってこない…当たり前か

広い広い屋内の中、彼女の独り言は静寂に消えた

町の中でもかなり目立つ建物
その建物はあまりにも町の人から忘れ去られたようにひっそりとそびえ立つ
存在するのに存在していないと言っても過言ではない。町の人が来ないということは存在の意味が無い。鐘が鳴らなくなってしまった…存在意義のない時計塔

アイリス

お祭りでこの鐘が鳴らなかったら…どうしよう
50年ぶりに鐘が鳴り響くっていっても、町の人には関係のない事なのかもね

時計塔に住むアイリスにとって鐘の音が鳴ることはとても楽しみなこと
しかし、その鐘の音が鳴るということを知っている人、覚えている人はほんの一握り
いつから鳴らなくなったのか、その原因すらも分からないまま先代から教えられた言葉
「この鐘は50年に一回しか鳴らなくなってしまった」
人生一回の内に二回聞けたら運がいいと思いなさい。なんて誰かが言っていたけれど…そんなにありがたみさえ感じない。そんな存在である

アイリス

さて、今日もお仕事頑張りましょ

誰に言うわけでも無く、自分に言い聞かさるようにアイリスはつぶやいた。今日も一人ぼっちの時計塔の様だ

マルク

というように、マルクルの冒険日記によるとこの町の時計塔には沢山の秘密が隠されているんだ!
僕はこの冒険日記のように勇猛果敢にあの時計塔を踏破したいと考えている

キース

でも
今ではその時計塔に入ることすら難しいんだろ

マルク

そーだけど・・・

手に持ったカップに視線を落としマルクは言葉を詰まらせた
この町の時計塔のことはよく知っている。しかし、中に入るのは難しい
「時計塔には魔女がいるから」
何の証拠もないけれど、確かにその言葉の存在があまりにも大きかった

キース

あと三日したら…
その時計塔の鐘が鳴る、と町の奴らから聞いたけど?

マルク

そーだよ!!
だから僕は時計塔に行ってその鐘の音を聞きたいと思ってるよ
…だって50年に一回ってそんなに機会が無いと思うんだ

キース

その時に時計塔に入れないのか?
いわゆるお祭りなんだろ

マルク

あっ!?

キース

今まで考えなかったのかよ…
まぁ、あと三日あることだし、もっとあの時計塔について調べてみるのもいいんじゃないか?

マルク

それだったら、僕の家に来るといいよ!!
あの時計塔に関する文献はいっぱいあるし、何よりマルクル冒険日記を読んでほしいんだ

「そうか…」
というキースの表所は思惑にふけっているような雰囲気であった

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