はぁぁぁぁぁぁぁ……。
もう、どうしてクロードは
いつもああなんだか……。
もう、知らない!
これまた、見事なため息ですねぇ。
愚痴をこぼしながら歩く若者に
声をかけるツヴェルタ。
……。
アナタなんですか?
何か用ですか?
いま虫の居所が悪いんです。
関わらないでくれます?
若者は怒りのこもった声色で
不審人物を突き放す。
ツヴェルタは若者の態度を意に介せず
飄々とした口調で続けた。
あなたがクロードさん……でしたっけ?
その方と仲直りできるお手伝いが
できたらなーと思いましてね。
アンタみたいなひょろっとした男に
何ができるってーのさ。
占いでもする気?
占いですか……。
ソレはソレでありかもしれませんね。
占いはいりません。
じゃ!
さっさと切り上げて
立ち去りたい若者に
ツヴェルタは食い下がる。
いえいえ、
私は占い師ではありませんよ。
申し遅れました。
私の名は『ツヴェルタ』。
しがないクピドの末裔です。
ピクッ
ツヴェルタが自己紹介すると
若者の顔色が少し変わった。
へぇ……。
で、そのクピドの末裔さんが
何をしてくれるって?
これをどうぞ。
といい、ツヴェルタは
指輪を取り出してみせた、
それは?
これは鏡の指輪……。
これをつけると、
相手に与えるアナタの印象が
変わることでしょう。
ふぅん……。
論より証拠。
まずは付けてみましょうか。
まあ、貰えるなら貰っておこうかな。
フフフ……。
良い心がけです。
人生そのくらい貪欲でなくては……。
そう言いながらツヴェルタは
手に持つ鏡の指輪を若者へ差し出した。
どれどれ。
若者は興味津々に指輪を受け取ると
躊躇なくその指にはめた。
フフフ……。
みなさんがいつもこうだと
ラクで助かるんですけどねぇ……。
あれ……。
……そろそろですかね?
……と、ツヴェルタは様子の
変わった若者の顔を覗き込んだ。
すると、
スッ
あちーな。
これは驚いた。
性別が変わったのは初めてですね。
さっきまで女性だった若者は
男性へと変わっていた。
ふーん……。
……で?
……でって……。
何か破壊衝動のようなものは
湧き上がってきませんか?
クロードさんと仲違いしたくなるような……
想定と違う反応に
ツヴェルタは戸惑う。
破壊衝動なんて
いつもの事だからナァ……。
なにより……。
クロードってのは
俺の事なんだよ!
な!?
若者が声を荒げると同時に
その手に紋様が現れる。
残念でしたね、クピドさん。
これはディザスター相手に
やることではないですね。
ば、バカな!?
この神無市の領域において
我らディザスターに
お前ら神の力は児戯に等しい。
ま、待て!
では、いただきますかね。
はぁ、クピドかぁ。
と言いながら、若者はツヴェルタに向かって
ブン、と手を振った。
うわあぁぁぁぁ!!!!
クピドはこの指輪の憑神《ツキガミ》でしたか……。
役に立つかなぁ……。
クピドのこの力。
〜神無市怪奇譚〜
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『鏡2』