アルト

・・・よし、これで音は納められたかな。

ルナ

わーい!!観光観光~!!

俺たちは観光案内所により、早々にノーツモニュメントを発見することができた。音の吸収は魔法には含まれないらしく、難なく終わらせることができた。

ネプト

はしゃぐのは良いが、あんまし離れたりするなよ?ここは人が多いからすぐにはぐれちまう・・・得にルナ。

ルナ

大丈夫よ子どもじゃあるまいし・・・ちゃんとついて行くわ。

アルマ

まあ、最悪はぐれたらここで待ち合わせにすればいいんじゃないかな?時間とか決めて。

アルト

そうだな。それじゃあ、はぐれたらここに・・・何時頃が良いかな?

ネプト

んんむ・・・ホテルのチェックインなんかもあるしな・・・四時か五時くらいが妥当じゃないか?

アルト

じゃあ、五時にするか。ゆっくり見て回りたいだろうし・・・

アルト

はぐれないのが一番だけど・・・

ルナ

そうね・・・ま、あたしは心配ないわ!
もしもの時は空を飛んでみんなのことを探せるもの!

アルマ

それは言えてるね。でも、アルトとルナは特に気をつけること!騙されやすいんだから、また変なのに目をつけられたら大変だし・・・

ネプト

騙されやすいのは確かにそうだが・・・世間知らずに関してはお前も相当だからな?アルマ。

アルマ

うるさいなあ・・・わかってるよ

アルト

ほらほら挑発しない・・・

何か・・・アルマが反抗期の子どもに見えてきた・・・そんなこと言ったら怒られそうだけど。
俺たちはネプトの先導に従って、ミッドナイトの町並みを歩き始めたーー。

ーー朝を知らぬ街・ミッドナイト

ルナ

すごい・・・色んなお店があるのね!!

あたしたちは、ノーツモニュメントがあった大広場から少しのところにある・・・えーっと、はんかがい・・・?と言うところに来ているわ。
なんか・・・もう、すっごいのね!はんかがいって!!さっきから色んなお店が隙間なく並んでて、色んなものが売ってて・・・!もう、こう・・・そう、何かすごいの!!

アルマ

人の量もすごいや・・・これみんな国民なの?

ネプト

んー、全部ってわけじゃないかな?観光客もちらほらいるかな?でも、やっぱシーズン中はこれよりもっとすごいらしいぜ・・・呼吸ができないとか。

アルト

呼吸ができない!?人で!?

ネプト

ああ。何でも、車道が人で埋まるらしいぜ。んで、交通規制なんかが一斉に起きて、そりゃあもう大混雑だとか・・・。

アルト

うわあ・・・

ネプト

ま、そういうときには自動車規制緩和促進型のアンドロイドがいろいろ手を打ってくれるんだがな。

アルト

そういえば・・・さっき寄った管区案内所の受付さんも、お店の店員さんもみんなアンドロイドなんだよね?

ルナ

・・・&・・・?

アルマ

・・・あんどろいど・・・?

ネプト

んー、要するに、ちょっと性能の良いロボットのことだな。

アルマ

あの人ロボットだったの!?全然気づかなかった・・・

ネプト

まあ、まだあんな感じの完全な人間そっくりなアンドロイドは普及しきってないみたいなんだがな。

アルト

すごいな・・・俺が住んでた世界にある街にそっくりだけど、こっちの方がものすごく発展してるよ・・・!

ネプト

おっ、その話詳しく聞かせてくれよ!

うーん?何か難しい話し始めちゃったわね・・・?全然入っていけないわ・・・。ま、いっか。重要なことでもなさそうだし!
それより、次はどこのお店に入ろうかしら?うーん・・・食べ物・・・は、まだ良いわね。お昼時にはちょっと早いだろうし・・・たぶん。ここ、ずっと暗いから時間感覚が狂っちゃうのよね・・・困っちゃうわ。

っ・・・!!

ルナ

・・・?今誰か、細い道に入ってった・・・?
ねえ、みんなもみえ・・・あれっ?

ついさっきまで前を歩いていたアルトたちが消えちゃった・・・!!ど、どうしよう・・・!

ルナ

うわわっ!!と、とりあえず飛んで・・・!

ルナ

ひゃあっ!?

さっき、誰かが入っていった細い道から・・・?何かあったのかしら・・・?アルトたちを探さなきゃだけど・・・でも・・・!

ルナ

ちょっとくらいなら・・・平気よね・・・?五時までにノーツモニュメントの前に戻れば良いんだし!!

あたしは辺りをもう一度見回してから細い道に入っった・・・って!!

うわっ!?

ルナ

ひゃわっ!?

道に入っていったと思っていた人は、すぐのところで立ち止まっていた・・・!

ルナ

ああんもうびっくりしたぁ!!
急に出てこないでよお!!

・・・・・・・・・

・・・!あ、え、えっと、もうしわけございます・・・!わたしはひどく戦き、自ら顧みて、後悔しております・・・です・・・のだ・・・。

ルナ

ちょ、ちょっと落ち着いて・・・支離滅裂になってるわよ・・・?

通路に張っていった人ーー体中に擦り傷が目立つ男の子は、一瞬無表情になってピタリと動きを止めた。どこかから何かが低く唸るような音がすると、男の子は目をパチパチと瞬かせて深くおじぎをした。

申し訳ございません…少し動揺してしまいました…

ルナ

ううん、いいのよ。私の方こそごめんなさい、驚かせるようなことしちゃって…

あっ…は、はい……

ルナ

それより、さっきものすごい音がしたんだけど…大丈夫?

はい・・・その・・・ちょっと転んでしまっただけですので…それで先ほどは言語機能に支障が…

ルナ

そんなにすごい転び方をしたのね…あ、ちょっといいかしら

は、はい…

細かい擦り傷だらけになっている男の子に、あたしは治癒魔法をかけた…使用禁止ってなってるけど、怪我が悪化しちゃうよりいいものね。それに、誰も見てないから大丈夫。心配ない心配ない♪……でも……

ルナ

あ、あれ…?おかしいわね…

彼の傷は一向に癒える気配がない。

!!だ、ダメです!!ここで魔法を使っちゃ…!!

ルナ

え?大丈夫よ!だって誰も見てなかったじゃない。それに、怪我が悪化したら大変よ?応急処置くらい…

そうじゃないんです!!この都市には……

その時——

突然、耳をつんざくような大きな音が・・・!!

ルナ

うわっ!?な、なになになになに!?

しまった…!妖精さん、逃げますよ!!

ルナ

へ!?ちょっ、きゃあっ!!

男の子はあたしを胸の前でだき抱え、そのまま走り出した…!

ルナ

ちょ、ちょっと!!もう!!何なのよ!!

ちょっと我慢してください!

ルナ

待ってってば!なんであたしが逃げなきゃいけないのよ!?

あなたが魔法を使ってしまったからです!!この都市には、至るところに魔法を感知するセンサーが設置されているんです…

ルナ

せ、せんさあ…?よ、よくわからないけど、魔法が検知されちゃって、こんな事になってるのね…じゃあ謝りに行くわ。怪我の治療のためといえ、規則を破っちゃうのはまずいものね…

何言ってるんですか!そんな事したら一生刑務所から出てこれませんよ!

ルナ

そ、そんな大げさな…

大げさじゃないです!!ここでは、魔法を使用することは大罪に値します。たとえ人命救助でも!!下手をしたら処刑モノですよ!!

ルナ

うっそ…

あたしはさあっと顔を青くした…じゃあ、もしかして、この子がここまで理解のある子じゃなきゃ…あたし、ほんとにヤバかった…?

ルナ

ど、どうしよう…

ここをもう少し行った場所に、身を隠すことができる場所があります…とりあえず、そこまで逃げ切れれば…!

不意に聞こえたその音に、男の子は顔に絶望の色を示して立ち止まった…何してるのよ、と声をかけたかったが、その前にわかってしまった…後ろを振り向くと、そこにはーー

チャラめの政府職員

残念だったなぁ?もう逃げられないぜ、スクラップ

刺青がある政府職員

おいおい、しかもそいつ…今しがた発表された第1級犯罪者じゃねえか?だったら大手柄だぜ!!

どでかい銃のような何かを構えた二人の男性が道をふさぐようにして立っていた・・・

ルナ

え、えっと…すくらっぷ…?ど、どうしよう…?

…………ごめんなさい、妖精さん…ここまでみたいです…

ルナ

え…えええええ!!!

ーーミッドナイト・ノーツモニュメント前

アルト

・・・・戻ってこないね、ルナ・・・

アルマ

迷っちゃうほど遠くに行っちゃったのかな・・・?探してこようかな・・・

ネプト

待て待て、お前らが行っても迷子が増えるだけだ。

ネプト

こういうときは交番に頼るのが一番だ。ちょっと聞いてくっから、お前らはここで待っててくれ。

アルト

うん・・・頼むよ。

アルト

どこ行っちゃったんだろうね、ルナ・・・

アルマ

うん・・・また変なのに巻き込まれてなければ良いけど・・・

アルト

そうだな・・・

アルマ

僕が目を離さなければ・・・

アルト

アルマだけのせいじゃないよ!
気づいたときに探してれば良かったんだ・・・

アルマ

・・・うん・・・

アルト

・・・なあ、アルマ。この前、魔族の友達がいるって話してたよな?俺はまだ魔族って見たことないんだけど、どんなやつなんだ?

アルマ

へ・・・?
うーん・・・どんなやつ・・・か・・・

アルマ

魔族は、天族の突然変異で生まれた種族なんだ。天族は翼が生えていて、光属性の魔法が得意。それに対して、魔族は翼が生えていなくて、闇属性の魔法が得意・・・それから、すごく頭の回転が速い。

アルマ

天族も魔族も互いを嫌ってるって言ってもいいくらい、仲が悪い。何回か種族間の戦争もあったみたい。

アルト

あ、あれ・・・アルマは魔族の友達いるんだよな・・・?

アルマ

うん。僕は天族の中でも変わり者だったからね。普通に人間も好きだし、イマガイも好きだし・・・と言うか嫌いになる理由が見つからない。

アルマ

僕自身が、突然変異が起きた天族だからって言うのもあるのかもしれないけど・・・

アルト

へえ・・・何か難しいな。

アルマ

そうでもないよ。だって、僕は僕だし。僕を否定できるのは僕だけでしょ?

アルト

自分を否定できるのは自分だけ、か・・・

アルマ

そういうこと。

アルマ

それにね、シルフ・・・彼はすごく良い子なんだ!
初めて会ったときは女の子かと思ったくらい美人で、魔法も剣技も一流。誰にも思いつかないようなことをぱっと思いついちゃう!

アルマ

ちょっと横暴なところはあったけど・・・

アルマ

でも、すごく頼りになるんだ!

アルト

そうなんだ!会ってみたいな・・・

アルマ

この旅が一段落ついたら、紹介しようか?

アルト

うん!ぜひ!!

アルマ

僕もしばらく会ってないからなぁ・・・急に行って驚かしてやろうかな♪

アルト

あはは、それはちょっと悪いんじゃないか・・・?

ネプト

アルト、アルマ、大変だ!!

アルマ

おかえり。どうかしたの?

アルト

ルナになにか・・・!?

ネプト

ああ・・・それが・・・あいつ、何故か第一級犯罪者になってやがる・・・!!

アルト

は!?

アルマ

へ!?どういうこと!?

ネプト

それがわかれば苦労しねえよ・・・何かの勘違いかもしんねえ。とりあえず情報を集めるしかねえ!

アルト

わ、わかった・・・でも、情報を集めるったって、第一級犯罪者のことなんて、そんな簡単に集まるもんなのか?

アルマ

確かに・・・そこまでいったら普通は隠されるはずだし・・・

ネプト

そこら辺は心配ねえ。とりあえずアテはあるから行くぞ!

アルト

い、行くって、どこに・・・?

ネプト

どこにって・・・こんな情報握ってる場所ったら、あそこしかねえだろ。

アルマ

・・・???

アルト

・・・・?

ネプト

中央政府だ中央政府!!行くぞ!!

アルト

はあああああ!?

アルマ

中央政府!?ちょ、ちょっと待ってよネプト!!

ネプト

あー、はいはい事情は後でたんまり話してやっから、黙ってついてくる!!

アルト

お、おう・・・

アルマ

ますます怪しい・・・

ネプト

黙 っ て つ い て く る !

アルマ

わ、わかったよ・・・

アルト

大丈夫・・・なのかなぁ・・・?

第四楽章 ルナ、没収される 2

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