眼下に広がる光景は、あくまで静か。

 神々しいほどの月の光に照らされた、片手で包めるほどの封土を見やりながら、若王リュカは口の端を上げた。

……

 脳裏に過ぎるのは、この地を守る若き領主の、凛とした横顔。

 この地に対する責務がなければ、今すぐにでも彼を自分の腹心にしてしまうのに。昼間、狩りをしているところを襲ってきた不逞の輩を少数の部下達と共に制圧した少年領主の鮮やかな手腕を思い出しながら、リュカは首を横に振った。

本当に、惜しい
……いや

 心に秘めた決意を思い起こし、リュカは再び口の端を上げた。

今はまだ、力が足りない
だが、……いつか、きっと

……?

 近づいてきた小さな気配をわざと無視し、リュカは小さく頷いた。

番外編 地に縛られしもの

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