都内で開催された国内最大級のゲームイベント。
佳穂たちは、このイベントの目玉であるゲームを体験するために会場を訪れていた。
都内で開催された国内最大級のゲームイベント。
佳穂たちは、このイベントの目玉であるゲームを体験するために会場を訪れていた。
わぁ…すごい人だね
日本最大だからな!今日のために日本中から人が集まってきてるんだぜ
どこを見ても人ばかり。
佳穂は少し背伸びをしながら、目的のブースを探した。
彼女の後ろでは、友人たちが辺りを見回しながら楽しそうに雑談をしている。
ゲームいっぱい…。あ、あれは…
駄目だよ、薫ちゃん!迷子になっちゃう!
櫂斗。ブースは見つかった?
人ごみを嫌う愁弥が眉をひそめながら、いつもより大きい声を出す。そこまで離れていないとはいえ、騒音で普段の音量では声が届かない。
しばらく歩くと、目的のブースに到着した。
佳穂は大きく表示されたタイトルを口に出す。
「Muder impulse」。
日本語で、殺人衝動か…
物騒なタイトルに身震いがした。
ここまではっきりと明確な殺意があるゲームもないだろう。
その割には、PVはとても明るいファンタジー系であった。タイトルとPVのギャップに惹かれ、会場に来てしまったのだ。
製作側もそれが狙いだったのかもしれない。
じゃあ、俺が受付済ませてくるからお前らはそこで大人しく待ってろよ。
はーい!
櫂斗は受付へと走って行き、佳穂たちは離れないように一箇所に固まって彼を待っていた。
会場の人々は皆、スクリーンに映し出されるゲームの映像に釘付けになっている。
ねぇ、君
えっ、
軽く肩を叩かれて、振り返った。
あぁ、ごめん。驚かせるつもりはなかったんだ。
君、このゲームに参加するために来たの?
はい、そうですけど…何かありましたか?
そうなんだ。
さっき、赤髪の子が受付に行ってたからさ。
今の時間帯に受付したグループは、全員同じ時間にゲームに入るんだ。
俺の友達も今、受付してるから君たちと一緒だな、と思ってね。
そうなんですか!じゃあ、ゲーム内で協力するってこともあるんですね。
その時はよろしくお願いします。
こちらこそよろしく。
じゃあ、俺は戻るよ。また後で。
彼が立ち去ったのと、同じくらいのタイミングで櫂斗が戻ってきた。
あと数分で体験が始まるらしく、佳穂たちは急いで特別会場へ向かった。
会場の扉を開けると、そこには沢山の機械が並んでいた。すでに他の参加者たちが席についている。
自分たちは一番最後だったようだ。
最後の参加者ですね。
空いている席に座ってください。
説明を始めます。
席につくと、担当者は淡々と説明を始めた。
説明はヘルメット内にも表示され、非常にわかりやすいものだった。
体験時間は1時間となりますが、ゲームオーバーになった時点で終了となりますので、ご注意ください。
…そろそろ時間になりますね。
参加者の皆様はログインをお願いします。
全員の入力が確認出来次第、皆様をゲームの世界へとご案内します。
空気が張り詰める中、参加者たちの入力音だけが響く。
佳穂は慎重にIDとパスワードを入力すると大きくため息をついた。
入力確認。
それでは、これより体験を開始します。
「Muder impulse」、起動。
画面が真っ暗になり、電子音が耳元で響く。
流れてくる様々な映像を見ている間に、佳穂の意識は少しずつ遠のいていった…