私は、深い深い眠りについていた。

 ここのベッドはどことなく懐かしい匂いがしていた。

 それが、森の中を歩き回っていた疲れのせいなのか。

 それとも、さっきサフィラさんが言っていた、この洋館での手掛かりなのか。

 今の私には、どちらなのかまったくわからなかった。

キャーーー!!!

 その悲鳴に、私は目を覚ました。

ジャスミン

今の悲鳴は!?

 私は、ベッドから起き上がり、部屋のドアを恐る恐る開けてみた。

 廊下を見てみると、広い廊下の壁に蝋燭の明かりが燈るだけで、誰一人、廊下にはいなかった。

ジャスミン

……。

 サフィラさんの噂話が頭から離れない。

ジャスミン

まさかねー。

 私が再びドアを閉めようとしたとき、廊下の向こうから、足音が聞こえた。

ジャスミン

ひぃっ!

 私は慌ててドアを閉めた。

ジャスミン

どうしよう。あの足音、絶対にこっちに向かってきてる……。

 ドアに耳を当て、廊下の様子を伺う。

ジャスミン

……。

 足音は確実にこちらに向かってきていた。

ジャスミン

どうか通り過ぎますように……。

 私は心の中で願った。

 足音が私の部屋の前まで来たとき、その足音が止まった。

ジャスミン

えー。

どうして私の部屋の前で止まるのー!

 私は、ドアに張り付き、そのまま息を殺した。

ジャスミン

……。

 すると、ドアをノックする音が聞こえた。

ジャスミン

……。

 私は、さらに息を殺し、自分の気配を消そうと頑張る。

ジャスミン

早く、
どっかに行ってー。

 すると、ドア越しに声が聞こえた。

サフィラ

ジャスミンさん! 大丈夫ですか?

 その声は、サフィラさんの声だった。

 私は、恐る恐る、ドアを開けた。

サフィラ

大丈夫ですか?

 そこに立っていたのは、紛れもなくサフィラさんであった。

ジャスミン

いえ、今の悲鳴は私じゃないですよ。

 私はサフィラさんに抱きついて言った。

サフィラ

そ、そうですか。となると……。

 サフィラさんは、私の隣の部屋に目を向ける。

 サフィラさんがゆっくりと歩いていく。

 そしてドアノブを回してみると、鍵はかかっておらず、ドアがゆっくりと開いた。

サフィラ

はっ!

 サフィラさんは、部屋の中に入ろうとしない。

ジャスミン

ど、どうしたんですか?

ま、まさか、死んでるとか言いませんよね?

さっきのは、ただの噂ですよね?

 サフィラさんの表情が険しくなる。

サフィラ

どうやら、現実になってしまったようです。

すぐに皆さんを集めてこのことを話します。

一緒に食堂に行きましょう。

 私は、サフィラさんと一緒に夕食を食べた部屋に向かった。

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