~赤い車と濡れた髪の女~
















それは、夏も終わりを迎えようとしていたある日のことだった。


私は仕事を終え、帰り道の途中にある峠で缶コーヒーを傾けながら休憩していた。












この場所は、トイレと自動販売機だけの寂れた駐車場だった。
しかし、普段人があまり訪れず、のんびり休憩をするのに適した場所だったのだ。







すると、そこに一台の赤い乗用車が入ってきた。


降りてきたのは女で、髪はびっしょり濡れていた。




カズリー

あ~あ~、びしょ濡れじゃん。
大丈夫かな…?




今は夏なので、どこかプールか海水浴の帰りかな?と、気にも留めなかった。






女はそのままトイレへと歩いて行った。












私は缶コーヒーを飲み切り、後ろにあるゴミ箱に空き缶を捨てた。

カズリー

そろそろ帰ろうか…









そう思い、振り返ると………










……なんか違和感がある。









赤い車が………




無い。





カズリー

……………!?!?






さっき入ってきた赤い車が無いのだ。




カズリー

あれー?いつの間に?
おかしいな……





そう思いつつ、車のあった場所まで行くと…


そこだけ水たまりになっていた。










車のクーラーの水なんて量じゃないほど、大きな水たまり。










そしてそこから点々とトイレ前まで続く、足跡のような水たまり。






辿っていくと、トイレの前でその足跡のようなものは途切れていた。








その瞬間だった







背後から水に何かが飛び込んだような音が響いた。




カズリー

…………!!






驚き振り返るも、そこには何もなかった。










嫌なものを感じた私は、大急ぎでその場を離れるのであった。




















ちなみに友人から、数年前に近くの海で車が転落しているのが見つかり、車内に性別不明の死体があったのだとか。


しかもその車体は赤く錆びていたとの話を聞いたのだが、そのニュースを見つけられなかったので、今回の件に関わりがあるのかは不明である。


















ちねみにね
あたしが今、この話を書いてる間の出来事なんですけどね。
暑いから左手にあるドアを開けっぱなしにしてるんだけど、そのドアの向こうの廊下の先から、なにやら音がするんですよ…。






トン……


トトン……


トンッ…





ってね。



真っ暗な廊下の先から不可解な音が聞こえてくるってんで、あたしもチビりそうになっちゃいましてね。
でも書くのをやめるわけにもいかない。


んで~、あたしも怖いんですけど、段々と腹が立ってきちゃいましてね。
ただでさえ怖いんだから、これ以上あたしをビビらせんじゃないよバカヤロウ!!ってね。
見えない何かにあたしも喧嘩を売っちゃうわけですよ。


で、音の正体を突き止めてやろうってんで、勇気を出して廊下の奥にゆぅーっくりと進んでいったわけですよ…。





怖いなー


怖いなー




なんて怯えながらもね、なんとか進んで行ったわけでしてねぇ。
すると何やら視界の先でうごめくものがいたんですよ……
もうあたし、恐怖で心臓がバクバクしちゃいましてね。
まぁでもここまで来たんだから、ちゃんとこの目で確かめてやろうと思いましてね。
ゆぅーっくり…近づいたんですよ。












窓越しに干された、あたしの下着が風で揺れてコツコツ音がしていたんですねぇ。








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