今様美少女浦島
うふふ♡ 今朝は明かりがきれい……いつもと同じLED電球なのに……♡
いやー……♡……まいったまいった……♡
こんな夜明けを迎えるのは初めてぇ~♡
まこと優れたる♡仲良し♡の御腕前。神妙なることなのめならずと覚え候ふ。こを一人のみにて相手すべしとは、御見合ひの相手、うらやましうはあれど、いささかあはれなるかな。
……ちょ、ちょっとわたし、カメ子さんのお変わりように驚いております。何か、わたし粗相をしてしまいましたかしら?
いーえ☆
とっても素敵でした……♡ はぁん……♡
ああ、最高だったぜ……♡ カメ子のことはさ、カメ子がただ詩人だってことなのさ。
然。詩は諸<アート>のうち、ただ言葉を持って成るものなれば、言葉に敏く明るくあらねばなるまじく候ふ。
なれど、なのめに話したらば、我がなのめの言葉に慣れ、ほかの言葉に鈍く暗くなるとこそ覚え候へ。かく申しし由にて、吾は日ごとに異なる話し方をせんことにし侍り候ふ。
そうだったのですか。カメ子さんも、本当にアーティストなのですね……ツヴァイテに会えたことといい、すばらしい収穫でしたわ……♡
でも、残念ながらそろそろ帰らなくてはいけませんの。見合いはお夕飯のころにするのですが、場所が遠く、早く家に帰って現地へ向かわなくては……
そっか。名残惜しいがしかたねえなあ……カメ子、ハイヤーを呼んでくれるか?
かしこまって承り候ふ。
……げにげに尽きせぬ名残かな。まこと再び、あいまみえたく覚え候ふぞ……!
オレもそう思うよ。てなわけでだ、プリンセス。また暇があったら遊びに来てくれよ。
はい。
……ハイヤーこそまかり来て候へ……
そうか。じゃあ、元気でな、プリンセス。あと、これは……
くださるのかしら?
そのつもりだった。
が、やっぱやめだ。こんなもの、あんたにはふさわしくない、プリンセス。返してくれ。
お断りいたします♡
こんな思わせぶりをされて、待てができる私ではありませんことよ。
あッ! こら! 返せ!
ではごきげんよう、おと子さん、カメ子さん、たづ子さん、クマ子さん、タイ子さん、ひら子さん。ぜひまたお会いしましょうね。
返せったら! いや返さなくてもいい! だから捨てろよ! 開けたら、もしかしたら、あんたの生活を壊しちまうかもしれないんだ!
頼む、プリンセス!
一考はするものといたしましょう♡
場面はだいぶ移り変わって、お見合いの場所へ行く汽車の中です~☆
さて、中身は何かしら?
『第2回 土井中商店街ふれあいキャンペーン 福引券』……これは何でございますか?
……何でしょうね……?
そこでふと、福引券のバックにうっすらと何か描かれているのに気がつきました~
写メってみましょうか……色調を変えて自動読み取り……数字とアルファベットの羅列……16進数かしら? アプリで変換して……また数字とアルファベット……もう一度変換して……住所ですね……何の場所でしょう……ライブハウス?
あはっ♡ そういうこと♡
お嬢様、いかがなさいましたか?
いいえ♡ 何でもありませんの。
お化粧を直してきます。多少遅くとも心配してはいけませんよ。
席を立ったたろ子はトイレへ行くと、元の席には戻らず、二等客室を通って、三等客室の方へ行きました~☆
え~。マジ? のぞきやっといてアーティストとかわりとウケんだけど~
な! 笑えるよな! で、その変態を助けたのがさ――
こんにちは、お嬢さん方。
……この人だった……なんでいんの……?
マジ!? 偶然ぱない!
噂をすれば影~。
お久しぶりね、チヨさん。そしてこんにちは、お友達さん。今夜は暇かしら? もし構わなければ、私の代わりにライブに行ってほしいのだけれど……
ライブ会場です~
行くぜ一曲目!
『D・マネーサーキット』!
Agh!!! fickfickfick!!!!♪
fickfickfick!!!
fickfickfick!!!
ちなみに、チヨちゃんが持ってるのはサイリウムだよ~飴に見えるけどこのシーンは違うんだ~
フロントラインのフロイラインよ!
私の問いに答えなさい!
私のギターはゲマインシャフト!?
嘘につながるゲゼルシャフト!?
ライブが終わりました~
なあ、君らちょっといいか? ここの席のチケット、誰にもらったんだ?
ん? 誰だっけ?
名前はわかんないけど、お嬢っぽい人だよ、わんわんちゃん。
あ! やっぱ♡そーいう♡関係の人なんすかぁ? 手紙あずかってますよー♪
見せてくれ……!
すげえ!
わんわんちゃん光った!
マイネ・プリンツェッシンへ
言うまでもなく、あなたのことを嫌いになったわけではありませんよ。でも、見合いの約束を蹴って、非合法バンドのライブに行くなんて、さすがに不良が過ぎますわ。
マイネ・プリンツェッシン、あなたは本当にすばらしいのね。もしかしなくても、芸術で、音楽で、世界を変えられると信じていらっしゃるのではないかしら? あなたのライブに行くために、わたしが見合いをよして家出でもするのではないかと、本気で心配してらしたものね。
でも。ごめんなさい、心配は無用です。私は芸術にや音楽に、気晴らししか求めてはいませんの。生活の障りになるようなら、気にも留めずに切り捨てることができるのです。あなたや、あなたのサロンの方々には信じられないでしょうけれど。
私には、手放せないものなど一つだってありはしないのです。大事なものはあります。でも、切り捨てることができてしまいます。初めはつらくとも、どんなことにも慣れて、飽きて、忘れていってしまうことでしょう。私は何も信じてなどいませんから。あなたの音楽さえも。
何かよいものを信じることができるのは、すばらしいことだと思います。生活の退屈さしか信じていない私には、あなたがとても眩しく思えます。本当にあなたはすばらしいわ、プリンツェッシン。あなたの純粋さを思うと、急に老けてしまった心地です。
お健やかに、ロックスターとしての道をお進みください。可能な限り、見守らせていただきます。それと最後になりましたが、あなたが好きです……
内容はこんなところですね。差出人名はどうしましょう? おと子さんにしかわからないような、気の利いた名前……?
二人はこの後どうなったんだろう?
絵本の浦島太郎だったら、乙姫と浦島太郎は別れてそれっきりだけど……
この話ははっきりしないので、みんなそれぞれ好きなエンディングを脳内で作ってね~☆
今様美少女浦島
Das Ende