今様美少女浦島

……………………

おと子

こんばんは、お嬢さん。オレは碧金竜おと子。このサロンを仕切ってる者さ。よろしくな。

たろ子

初めまして、おと子さん。わたしはたろ子と申します。

カメ子

たろ子さん、姫様はすごいんスよ! 笑むステとかにしょっちゅう出てるあの『キラかわ☆ロックごっこズ♪』のギターヴォーカルの乙子なんス! ロックごっこの媚びた歌だけじゃなく、昔のロックもすっげえうまいっすし、即興でヤバい曲演ったりしますし、マジパねえんすよ!

タイ子

そして、アタイらみたいな才能はあるけど収入面がパッとしないアーティストを助けてくれてる。ホント、ありがたいこったね。

クマ子

ここに来ればいつでもいいシャンパン飲めるしご飯は食えるしで、もう最高~♪

おと子

はン。テメエら、お客様の前だとえらい殊勝だなぁ。いつもみたいに傲然と遊べよ。テメェらは、人でも神でもなく、<アート>に仕えてるんだからよ。

たろ子

……………………

おと子

うん? 金に仕える商業ロックスターがめずらしいかい? それともオレの顔になんかついてる?

たろ子

いいえ。キラかわ☆ロックごっこズ♪の、乙ちゃんのお顔ならテレビなどでよく拝見しております。オフのメイクでも変わらぬ華やかさですわ。

たろ子

うーん……でも……

タイ子

何か気になることでもあるのかい?

たろ子

ええ、ちょっと。
ねえ、おと子さん。あなたもしかして、『災害プリンツェッシン』のヴォーカル、ツヴァイテではございませんこと?

カメ子

はっ!?
何言ってるんすか! ンな訳ないじゃないっすか! マジで違うッスよ!

タイ子

カメ子の慌て方だと本当みたいだねえ、はは。そうなら面白いけど、残念ながら違うのさ。

おと子

……はは。すごいな……よくわかったなぁ……そうさ。お嬢さんの言う通りだ。

カメ子

はぁっ!? 
ち、ちょっ! 姫様!

クマ子

わぁ~どうしよう~。この子が倫理機構の調査員だったらここはパア~。私は誰にたかったらいいの~? カメ子のアホがわかりやすい仕込みに引っかかってこんな子を連れてさえ来なければ~

おと子

オレは――キラかわロックごっこの乙子は、災害プリンツェッシンのツヴァイテさ。

たろ子

ああ! やっぱり!

おと子

週刊誌にタレ込むなり、芸能倫理向上機構に通報するなりなんなり、好きにするといい、かわいらしくかつ賢いお嬢さん。

たろ子

そんなこといたしません。私、災プリの曲大好きですもの。本当にすばらしいお声ですわ。おと子さんにそっくりだから、もしかして、と思ったのですの。

おと子

そっくり……? 災プリはマスクつけて演奏してるし、声も相当いじってあるから音声解析したってわかるはずが……

たろ子

そっくりですわ。災プリの曲を聴きながら、わたしが想像していたツヴァイテに。おと子さんはそっくりです。……想像の中の人物に会えるだなんて。この世には♡仲良し♡以外にもすばらしいことがあるのですね……!

カメ子

マジでパないっすね、たろ子さん……どういう勘の良さッスか……?

タイ子

いやー……ヤバい感じのする別嬪さんだとは思ったけどね……

クマ子

けどちょっとまずくない、姫ちゃん? こうやってわかる人にはわかっちゃうなら、いずれ倫理機構にも……

おと子

いいさ。……想像した中の人に似てる、なんて理由で逮捕状は出せねえだろ、いくらなんでもさ。それ以外で出るようなら潮時ってこったし、第一、実家の連中が許さねえよ。

たろ子

そういえば、乙ちゃんは刑部卿のお嬢さんでしたわね……

ナレーション係ちゃん

ちなみに、このお話の舞台はとある律令国家だよ~司法は刑部省が仕切ってるんだ~

おと子

そうさ。だからバレたって、逮捕なんかされやしないよ。事故っぽく殺されるだけさ。やっとこさあそこまで家格を上げたんだ、勘当娘のスキャンダルなんか許しゃしないよ――ま、オレの話はいい。

おと子

オレが聞きたいのはあんたのことさ、お嬢さん。……とりま、どういう経緯でカメ子を手なずけたんだ?

たろ子

ふふ。でしたら、まず接吻からさせていただきたいですね、おと子さん♡ そこからたっぷりと……♡ ふふ……♡

おと子

いいね、そういうのはオレ好みだ。が、まずは出来事の細かいところを聞きたいのさ。

たづ子

し、失礼します。あの、姫様、いつものギネスです……それと、た、たろ子さま、スコッチです……

おと子

ん?
ああ、置いといてくれ、たづ。

たろ子

ありがとう、たづ子さん♡

ナレーション係ちゃん

きゃあ♡
スカートめくりぃ♡

たづ子

ひゃん! し、失礼ひみゃすっ!

たろ子

ああ♡ 白……!
すばらしいですね……♡

おと子

はは、いつもながらかわいいの履いてやがら。

ナレーション係ちゃん

といったくだりの後、
かくかく、しかじか、
と、説明がなされました~☆

おと子

……なるほどなぁ。カメ子が世話になったなぁ。ありがとうな、お嬢さん。

カメ子

本当にありがとうございました……!

たろ子

いいえ。
お話しました通り、下心からのことですもの♡

おと子

ところでお嬢さん、オレだけ秘密を暴かれて、ってのは不公平だよな? お嬢さんも話さないか? 

たろ子

はい?
何のことでしょう?

おと子

この街で、スケ番にさえあんな態度とれる身分の方となったら一人しかいない。
だろう、堅司たろ子さん?

たろ子

……さとい方ですのね、おと子さんは。別に話しても障りはありませんが、変に先入観を持たれても面倒なので黙っておりましたの。

カメ子

堅司ぁ!?
じゃあ摂家の娘さまでいらっしゃるっつうんスか!?

たろ子

ふふ。
予想通りの方が予想通りの反応をなさると、笑みを誘うことですね。

ナレーション係ちゃん

堅司の読み方は「かたつかさ」だけど、日本の摂家の一つ鷹司「たかつかさ」家は関係ないよ~参考にとかしてません~ホントだよ~☆

タイ子

ずいぶんとやんごとなき身分なこった。

クマ子

あ、じゃあ姫ちゃんより姫ちゃんってこと~? 姫ちゃんも零落かぁ~じゃあ私が成り替わるしかないっぽいね~♪

たろ子

生まれなどどうでもいいことです。わたしはツヴァイテに、プリンツェッシンたるにふさわしい品位を感じました。わたしよりもはるかに気高い誇りを。
なればこそ、あなたは姫君です、おと子さん。

おと子

「生まれなどどうでもいいことです」、ねえ……はは、いいセリフだな。 

おと子

そんなことが言えんのは、あんたが摂家の生まれだからさ。かわいらしいお姫さま。

たろ子

ふぅん?
続けていただけるかしら。

おと子

続き? そんなのないよ。いいセリフってだけだ、プリンセス。
……癪にさわったなら謝るよ。オレはあんたと喧嘩したくない。

たろ子

あら。

たろ子

怒ったように見えましたかしら? だとすればごめんなさいね。内容が気になったもので、ついはしたなく語気を荒げてしまいました。

おと子

いや、こっちこそすまない。つい地下人の素が出ちまったね。
災プリのファンの前でくらい、オレはプリンツェッシンでいなきゃならねえのに

おと子

わびを入れさせてくれよ。オレは一つ、あんたの言うことを聞くとしよう。何でもだ。

たろ子

あ。
「何でも」とおっしゃいましたね?

カメ子

(……これ姫様抱かれにかかってるッスよね……?)

クマ子

(……だね。まあそうならみんなで♡仲良く♡したらいいよ……)

おと子

おう! 何でもだ。言ったからにゃあ、どんなことを言われてもオレは逆らえねえ……プリンツェッシンの誇りにかけてな……何を御所望ですかな、プリンセス?

たろ子

では、災プリのファーストアルバムを歌ってくださるかしら?

おと子

お安い御用だ!

おと子

ん?
それだけかい?

たろ子

ええ。もしかして、何か不都合などおありかしら?

おと子

いんや、ないとも。オレはどのペルソナでもロックスターだからな……いつだってロックできるさ……

たろ子

もしかして、別に頼まれたいことでもあったのかしら?

おと子

いいや。そっちはロックの後のお楽しみさ。

♪♪♪♪♪♪♪♪

♪♪♪♪♪♪♪♪

♪♪♪♪♪♪♪♪

♪♪♪♪♪♪♪♪

ナレーション係ちゃん

わぁ~すごい演奏だったねえ~

ナレーション係ちゃん

もし音符が並んでるところしか見えなかった人がいたら、立体音響テキストの故障だと思うから、想像力を多めに使ってみてね~☆

たろ子

すばらしい! すばらしいです!
これがツヴァイテの肉声なのですね……!

おと子

いいや、違うね。
これは奇跡さ。プリンツェッシン・ツヴァイテが、まことのプリンセスに会えたがために生まれた一瞬のきらめき。ロックがオレたちを祝福してくれたのさ……!

……ぁ……ふわぁ……あ……

たろ子

わたしも、あなたに会えてよかったです、おと子さん。

たろ子

ところで、あの御簾はなんですの?

おと子

ん? あの向こうに小部屋があってね、超言語のコミュニケーションで親睦を深めたり、<アート>を結ぶには荒々しすぎるパッションを諫めたりするのさ。

たろ子

……有体に言えば、♡仲良し♡部屋ということかしら?

おと子

ああ。ま、どうやら奴さんは、ふつーに睡眠取ってたっぽいけどな。
――おはよ、ひら子!

ひら子

……おはよ、姫様☆
ええと、そちらさまは?

たろ子

堅司たろ子と申します。
呼び方はひら子さん、でよろしいかしら? ともあれ♡仲良し♡になりましょう。

ひら子

はい☆

おと子

あ? おいコラ、起きて来たばかりのやつが何ベッドに行こうとしてやがる。たろ子と♡仲良し♡すんなら、まず――

たづ子

私からです!
お二人ともずるいですわ、さきにお声がけをいただいたのは私なのに……!

カメ子

いやっ、ちょ、ちょっと待って欲しいっす! たろ子さん、明日見合いなんすよね? なのにこんな大乱♡仲良し♡なんて――

たろ子

いいのです。すぐに遊べなくなるのですから、今のうちに大いに遊ばねば。

たろ子

そもそも、たろ子さんだって昼間はあんなに喜んでいたではありませんか?

カメ子

あ、いや、それは話が違くないッスかね?

たろ子

ともかく、いいのです。私のことは私が決めます。

たろ子

さ、皆さま参りましょうね……♡

ナレーション係ちゃん

その場の皆は、御簾の中へ入って行きました……♡

……ん……ぁ……♡

ロックの真似とてギター弾くやはロックなる?

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