…気が付くと、俺は霧の中にいた。
　辺り一面、霧で包まれており、何も見えない。

　…その後、何が起こったんだ？

　しばらく俺は考えていたが、考えるのをやめた。
　宛のない答えの見つからないことを考えても仕方がないと判断したからだ。

　…バンドもそうだ。

　－数年前ー

　俺はこいつ…礼路（れいじ）とバンドを二人で組んでいた。

　この女性はマネージャーの”凜華”。

　いつもこんな感じで平和だった。

　…だけれど

　ライブが終わった後、礼路は”俺、ちょっと寄り道しくる”と言い、礼路は車に乗らず、どこかへ行ってしまっていた。
　俺は車で凜華を家まで届けた後、家に戻った。
　…その数分後に礼路は帰宅してきたのだ。
　…コンビニに寄っていただけだったのだろうか。

　ちなみに俺と礼路は同じ部屋に住んでいる。
　いわゆる”同居”だ。

　唐突に聞いてきたため、俺は思わず”は？”と言ってしまった。
　…今まで、こいつはそういうことを聞いてこなかったのもあり、驚いた。

　今日もライブは盛り上がり、俺たちのグッズ商品も売り切れになっていた。
　…恐らく良かっただろう。

　…いつもと様子が変だった。
　礼路は悲しげな笑顔を見せていた。

　電話が鳴った。
　…どうやら俺の携帯からだ。

　携帯画面を見ると…凜華からだ。

　…何やら焦っていて泣きそうな様子だった。

　…凜華は泣きながら、礼路の名前を叫んでいる。

　…俺は凛華の言っていることが理解できなかった。

　…ここにいる。

　俺は礼路がいるであろう後ろを振り返った。

　－続く