ときは流れて―――……

天正十二年 三月十三日

尾張 清洲城

徳川家康

んで、羽柴軍の動きはどうなの?

酒井忠次

今のところ動きはございませんな

徳川家康

あっそ。そういや、信雄殿どうした?

酒井忠次

えぇ、とそれが…

徳川家康

どしたの?

酒井忠次

なにやら、城中を懐かしそうに眺め回っているようでして…その、懐かしいなぁとかなんとか…あと、能を舞ったり…

徳川家康

まったく…先輩が頭抱えてたのがわかるよ。安土に火を掛けたのも信雄殿だっていうし…

酒井忠次

…困ったものですな

徳川家康

…まぁ、でも、そのおかげで羽柴殿を殴れそうな好機もできたってのはあるけどね

酒井忠次

しかし、そう簡単な話でもございません

徳川家康

まぁ、そうだね。秀吉殿は戦上手だからなぁ

酒井忠次

と、いうより、数を揃えることと裏を斯くのがうまい、と申しますか

徳川家康

あー、まぁそうだな。戦上手、っていうより、もうちょっと規模が大きい感じ。軍略っていうか

酒井忠次

そうですな

徳川家康

まぁ、とにかく警戒は十分に。場合によっては、小牧山城に一気にすすめるから支度だけはさせとくように

酒井忠次

はっ

徳川家康

あと、信雄殿は様子見て部屋に戻るように伝えといて。フラフラされると、士気に関わる

酒井忠次

御意に

長谷川秀一

家康様!

徳川家康

おー、長谷川っち。どした?

長谷川秀一

その、えぇと…家康様に、是非お目通り願いたい、と申しておるものが来ておりまして

徳川家康

俺に?誰よ?

長谷川秀一

坊主です

徳川家康

坊主?なに、勧誘かなんか?そういうの俺いらないから帰ってもらってよ

長谷川秀一

いや、そこをなんとか…一度お話だけでもされてみてはいかがでしょうか?

徳川家康

イヤだよ。今、戦時だよ?それどころじゃないって

長谷川秀一

しかしっ…!

徳川家康

なに、長谷川っち、けっこう信心深い方なの?

長谷川秀一

え、えっと…いや、そういうわけでもございませんが…!

徳川家康

あー、もう、分かった分かった。本当にチラっとだよ?忙しいんだから…

長谷川秀一

ははっ!

徳川家康

んじゃ、通してー。あ、忠次はもう仕度に回って。頼むな

酒井忠次

はっ。では、また何かありましたらお呼びください

長谷川秀一

おい、お通ししろ!

はっ

長谷川秀一

家康様。こちら、南光坊天海様と、そのお付きの方々でございます

徳川家康

あーはいはい、何か用事?ちょっともう忙しいから手短に頼むな

天海

はい、実は今少し、家康殿にお話がございましてな。あれ、出してください

徳川家康

…?

従者

はいはい

天海

実は、今、ある男に歴史書を書かせておりましてなぁ

徳川家康

…歴史、書?

天海

題にあるとおり、かの魔王信長様に関わるものでございまして…信長様を良くご存知でいらっしゃる家康様に、内容の見聞をお願いしたいと思いましてな

徳川家康

…あのね、俺今忙しいの。戦中なの。坊さんのあんたには分からないかもしれないけど、俺、三河以外にもいろいろ抱えて割と大変なんだから

天海

そうですか…これはお忙しいところ、大変な失礼を…

徳川家康

それにね、この内容だけど、嘘っぱちもいいとこ。先輩は、こんな魔王みたいに偉そうでも残虐でもないから

天海

むぅ、そうでございましたか…いやはや、しかし…

徳川家康

わかったら引き取って。でないとあんたの寺を焼き討ちにするよ?

天海

そうもうされましても、これもまぁ、ぷろでゅーすの一環でございますれば…

徳川家康

はっ…?

天海

ですから、ぷろでゅーすの一環である、と

徳川家康

…!?

天海

…?

従者

………ぶふっ、ごめん、我慢できねwww

徳川家康

まさか…そんな!

従者

しかしここは変わらないなぁ、あ、そうそう、お市元気?勝家のトコから引き取ってくれたって聞いてるよー

徳川家康

せせせせ…

従者

せ?

徳川家康

先輩!生きてたんすか!!!!

従者

いやぁ、生きてたね。見事に生きてたw

徳川家康

山崎の合戦からこっち、全然なんの音沙汰もないからダメだったんだって思ってたっすよ!

従者=織田信長

いやぁ、盛大に負けたから出るに出れなくて

天海

しばらく懇意にしていた寺に身を寄せてましてね。なかなか出れず、いろいろと考えた結果がこの姿です

織田信長

どうよ、けっこう様になってるだろ?

徳川家康

いや、延暦寺焼き討ちにした人が袈裟着てるとかwww

織田信長

儂、あれ消火しに行っただけなんだけどなぁ。ぷろでゅーす、侮りがたし

天海=明智光秀

家康殿、我が家臣達を相当数かくまって頂いているようで…感謝してもしきれません

徳川家康

あー秀満くんとか利三くんね、全然。むしろ結構助けてもらってるんすよ、陰ながらw

織田信長

え、利三生きてんの!?秀吉に首斬られたって聞いたけど!?

明智光秀

おおかた、秀吉殿のぷろでゅーす戦略でしょう。めぼしい戦果もないままに謀反人を討ったなどと、とても言えたものではありませんからな

織田信長

まぁー、極力被害が出ないように戦ったからねぇ。旗色悪しで、ちょーっとずつ退却させたし。まぁ、それでも被害は出ちゃったけどね

徳川家康

と、とにかく良かった…!あ、長谷川っち!すぐに二人を浜松に案内して!お市殿達いるから!

織田信長

あぁー、まぁ、ちょっと待ってよ家康

徳川家康

なんすか!?早く会いたいじゃないすか!

織田信長

そうなんだけどね、まぁ、今日はそっちじゃなくってさ

徳川家康

え?

明智光秀

ええ。今日は別の用事でまいりました

徳川家康

どう言う…?

織田信長

いやぁ、やられっぱなしってのはどうかな、と思ってね

明智光秀

私は構わないのですが、まぁ、御屋形様のお考えですから

徳川家康

な、な、なんすか?どういうことっすか?

織田信長

うむ、儂とみつ…天海様との話し合いで決めたんだよねー、太平の世ってやつをぷろでゅーすしてくりえいてぃぶしてみようや、って

徳川家康

はい?

明智光秀

つきましては、今後は我らが、家康殿のぷろでゅーす及び太平の世をくりえいとするためにまかり越した次第

徳川家康

ちょwwwえwwwえぇぇぇwwww?

織田信長

光秀のぷろでゅーすは半端じゃないから覚悟しとけよwww

明智光秀

まずは対秀吉軍についての軍議を始めませんとな

織田信長

儂と光秀がいれば、家康の天下取りは間違いないなw

徳川家康

ちょ、本気ですかwww

織田信長

本気も本気!儂、戦国嫌いだからね!

―了―

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