プールに浮かぶいくつもの四角形!
発泡ポリエチレン製の
カラフルな浮島こそ
この、水上トイファイトの
メインフィールドなのだ!
Kämpfe weiter!
プールに浮かぶいくつもの四角形!
発泡ポリエチレン製の
カラフルな浮島こそ
この、水上トイファイトの
メインフィールドなのだ!
行っけえー! ブラススクイド!
カケトの喊声! 堂々たり!
だがブラススクイドは煮え切らない!
二本の触腕を上下に動かし
八本の腕を回転させる。
青銅色の機体は
滑るように浮島を移動するばかり。
まずは君からだ、カケト
浮島から浮島へ!
飛び移るは絢爛の蝶一匹!
否! 蝶ではない!
ステンドグラスめいた絢爛の羽で舞う
そのトイこそは!
叡智を示せ! ソピアプシュケー!
ソピアプシュケーは華麗に着地!
ブラススクイドめがけビー玉を放つ!
わっ!
狙いは正確! 回避不可能!
これぞ狙撃型ビードロボーイの誉の技!
美しい羽だね、カタリ。
ビー玉が弾かれる!
天より舞い降りたるトイによって!
プランスピュール卿……!
アルテュールと呼んでくれたまえ。僕は君をカタリと呼びたいから。
べつに助けてもらわなくたって、平気だったぜ! でもありがとな!
ところでさ、アルテュール……
ああ、ピュアプリンスは群馬で誉の死を遂げた。
これが僕の新しい愛機だ。名は――
日光を受けて燦爛たり!
流麗にして豪壮なるそのフォルム!
ピュアプリンスの魂を引き継ぎ
より優れたる
武功を立てんがため生まれた!
彼こそは!
――ヴァラープリンスだ。僕たちは強いぞ。
二人とも、ヴァラープリンスの初陣にふさわしい戦いぶりを見せてくれたまえ!
望むところだぜ!
何にせよ、僕は勝つ。お金のために!
え? これ、バトルロワイヤル形式なの? アルテュール君は男爵への雪辱のため、カタリ君を――
それだと二対一で不公平じゃん? だからくんずほぐれつのバトルロワイヤルにしました~
せっかくだから、ルールをおさらいしておきましょうか。
トイが戦闘不能になった場合に加え、トイやトイファイターが水中に落ちた場合も負け
そして、水着が脱げて御ちんちんが出ちゃったときも負け♡ ふふ♡
いいね~
いやあ、キティさんでしたっけ? すばらしいアイデアをお持ちでいらっしゃる。成り行きで審判をやってくださっただけでなく、追加ルールまで考えてくださって、ほんと流石ですわ~
ふふ、ありがとう。こちらこそ、結構な見世物をどうも
……なんのための戦いなんだろう……?
まあまあ、トイファイトは遊びだそうですし、いいじゃないですか。カケトたち、楽しそうですよ
……そだね。本人たちがいいなら、いいか
月都ヴォルフストゥルム城!
オスカーの居室!
突如
室内に緋の毛氈を敷いた橋が現れる!
……ふぅ。危ないところでした。
わ。
おかえりなさい、マーヤおねえさま。
ただいま、オスカー。あなたが上手に月都の絵を描いてくれたおかげで、無事に帰ってくることができました。ありがとうね。
月都……!? ……この絢爛の大気は確かに……だが夢の……? 嗚呼! まほろばの都よ……!?
マーヤはオスカーの頭を左手でなでる。
右手と右肩は
アドルフを支えている。
いえ、どういたしまして。
ところでおねえさま、そちらのかたはどなたでしょうか……?
AAAgh! 狼め! 我が身をなおをも害さんと試みるか! AAgh! だがもう夢の檻は! AAgh! 頭が! AAAA――
オスカーと目線が合った瞬間!
アドルフは暴れ出さんとする!
――ご安心くださいませ、お兄さま。マーヤがお側におりますわ。ご心配なさるようなことは一つもありません。御身を陥れた僭狼どもは、皆殺しにしたのですから。
マーヤはアドルフを抱きしめる。
赤子をあやす慈母の微笑みで!
この者は、お兄さまに危害を加えたりはしませんわ。よくご覧になって。ね? まだ子供でしょう?
先の乱のころは、まだ生まれてさえいなかった者ですよ。ご安心なさいませ。
なれど狼よ! 母上、吾には見えるぞ! AAgh! この者が玉座にある姿が! AAAgh!
アドルフは狂気と錯乱の中にある!
精神干渉薬物が
今も強く効いているのだ!
大丈夫ですわ、お兄さま。お心をお鎮めになってくださいませ
オスカー、アドルフ陛下にご挨拶なさい。
は、はい。失礼しました。
僕はハインリヒ・フォン・ヴォルフスケーニヒの子、ユトラント公のオスカー・フォン・ヴォルフスケーニヒです
やはり狼か! 読めたぞ! 汝もまた我が生まれを嫉んで陥れ――
お兄さま、マーヤがここにおりますわ
マーヤは胸元にアドルフを抱え込む。
もう悪い夢は終わりました。こわいことは何もありません。ね? いい子だから。ご辛抱なさって? ね? 私のアドルフ……
……ぁ、は、はうえ……
いい子ね。そう、その調子ですよ、そのままお眠りなさい。いい子のアドルフ……
……huhhh……
アドルフはかすかな息を立てる。
狂気と錯乱から
穏やかな夢へ移っていった。
……ふぅ……お兄さまは大きいから、寝かしつけも骨ですね……
いずれご自身で誉れ高く名乗りをあげてくださることでしょうが、今日のところは私がご紹介しておきましょうね。
オスカー、こちらはアドルフ・ハプスブルク=ホーエンツォレルン・フォン・ヴォルフスケーニヒ陛下よ。私の兄ですから、あなたには従兄ですね。
マーヤおねえさまの、おにいさま……
十年前、罪なくして流刑にせられ、冥王星に監禁されていました。『狂狼の乱』と言えばあなたにもわかるかしら?
『狂狼』……!
きいたことがあります。すごくたくさんのひとがしんじゃった、ゲルマニアの内戦だって……!
……悲しい事件でした。その頃の私は、今のあなたよりも二つ小さかったけれど、何もかもはっきりと覚えています……!
あの乱さえなければ、ゲルマニアは正しい君主を戴いていることができたのに……! お兄さまは健やかなまま、今も玉座についていてくださったでしょうに……!
……Agh……?