俺、神裂 優斗は、現在非常に困っている。

神裂 優斗

 これは、一体どういう状況なのか……。

 以降、俺の今の状況を説明していこう。

 俺は、いつものとおり、朝6:30に鳴る目覚まし時計の音で、目が覚めた。

神裂 優斗

 んー。

 もう朝か……。

 目覚まし、目覚まし……。

 そして、いつものとおり、ベッドの近くにある目覚まし時計の音を止めるために、目を擦りながら、手の感覚だけで目覚まし時計の位置を探した。

 ここまでは、いつもの俺の朝の行動だ。

神裂 優斗

 何だ? この柔らかいものは。

 目覚まし時計にたどり着く前に、俺の手に触れたものは、目覚ましの硬いプラスチックの感触ではなく、それとは相対的な柔らかいマシュマロのような感触であった。

 俺は不思議に思い、その柔らかいマシュマロの方を見る。

神裂 優斗

 やっべー!

 俺が目にしたのは、隣で気持ち良さそうに眠っている希の姿であった。

 咄嗟のことで、少し大きめの声が出てしまったが、希は起きることなく、白いシーツに埋もれている。

 当然この状況からして柔らかいものと言えば、希の胸なのだが、問題は希の状況だ。

 シーツに包ってはいるが、所々で肌が見え、その状態から推測するに、希は今、全裸の状況にあると推測できる。

神裂 希

 エヘヘー……。

 もう、食べれない……。

 希は何かの夢を見ているようで、寝言を言っている。

 俺は、慌てて鳴り響く目覚まし時計を止めた。

神裂 優斗

 どうしよう。

 メッチャ触っちゃったよ。

 事故とはいえ、ここは正直に謝るべきか。

 俺は、希を起こさないように、ゆっくりベッドから離れる。

 そして、左手に残る柔らかい感触に、言いようのない思いを抱きながら、部屋を行ったり来たりする。

神裂 優斗

 いや、今この部屋の状況から、俺意外に誰も見ていない。

 つまり、俺が黙っていれば無罪になる。

神裂 優斗

 よし! これで行こう。

 俺は、心の動揺を落ち着け、両手を強く握り締め、完全犯罪を確信する。

 その瞬間、俺の背後に人の気配を感じた。

 後ろに立っていたのは、エプロン姿の姉だった。

神裂 火憐

 何やってんのかなー?

 姉の笑顔の奥には、怒りが感じ取れた。

神裂 優斗

 俺は何もしていない!

 慌てて、姉に今までの経緯を説明すると、以外にも姉はあっさり理解してくれた。

神裂 火憐

 希、ここはあなたの部屋じゃないわよ。

 そう言って、姉は希を起こす。

神裂 希

 ん、んー。もう食べられないよー。

 まだ寝言を言っている。

神裂 火憐

 ほら、もう朝だよー。

神裂 希

 ……。

 希は、目を擦りながら部屋見渡し、今の状況を理解する。

神裂 希

 っ!?

 全てを理解した瞬間、希の顔が恥ずかしさで真っ赤になり、シーツに包まったまま俺の部屋を跳ねるように飛び出し、自分の部屋に戻っていった。

神裂 優斗

 俺のシーツが……。

神裂 火憐

 まあ、何かあったとしても、私は願ったり叶ったりだけどねー。

 姉は何か意味深なことを言っている。

神裂 優斗

 え、それってどういう……。

神裂 火憐

 さあ、朝ごはんできてるから、優君も制服に着替えて降りてきなよ。

 そう言い残して姉は下の階に降りていった。

第十二話:《希の秘密1》

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