……アキ様


 そっと静かに、扉を開ける。

サク……


 ベッドに力無く横たわる、サクの小さな主人、アキが、サクを見て首を横に振るのが見えた。

ごめんね
でも、……何も食べたくないんだ


 そのアキに、微笑む。

 戦場では、その冷徹な行動で敵味方から恐れられているアキ。だが、彼が心優しい少年であることを、従者であるサクは知っている。

 持ってきた皿の上に乗る、黄金色の柔らかい食べ物を匙で崩し、拒むアキの唇に近付ける。

 牛乳と蜂蜜を混ぜた卵液を蒸し固めた、甘い食べ物。これなら食べてくれるかもしれない。その想いだけで、作ったもの。

……これ


 小さな欠片を飲み込んだアキが、驚きの表情でサクを見上げる。

……美味しい

 そして。

……良かった

 大きく口を開けたアキに、サクはもう一度、静かな微笑みを返した。

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