そう呟いた、戦姿の小さな背を、睨む。
星、綺麗だね
そう呟いた、戦姿の小さな背を、睨む。
何を暢気なことを
そう言おうとして、唇を閉じたのは、目の前の少年の実力を知っているから。
街道沿いで盗賊行為を働いていたユエ達の一団を下したのは、領主であるこの少年。盗賊団を、領主の遊軍に仕立て上げたのも。
敵は本当に、夜襲を?
気を取り直し、主君である少年に、小さな声でそう、尋ねる。
……
頷くより先に、少年は、星明かりの向こうを指さした。
確かに
……結構、居るな
もう少し、こちらに近付いてくれないと
……不意打ちできない
ですね
主君である少年に頷いてから、手振りで部下達に準備と待機を命ずる。
その上でもう一度、落ち着きすぎるほど落ち着いた少年の背を見やり、ユエは小さく息を吐いた。
何故こいつは、俺や俺の部下達を仲間にしたんだ?
少年がユエ達を信頼した理由は、分からない。
俺達は、……盗賊だったんだぞ
おまえの命を狙ったことも、あったんだぞ
だが。
まあ、今のこれも、……悪い気はしない
だからユエは、好機を捉えて敵の前に躍り出た少年より先に、僅かな明かりに刃を光らせたその影を屠った。