お茶を飲み、おやつを食べ、満足した頃には夕方になっていた。
お茶を飲み、おやつを食べ、満足した頃には夕方になっていた。
ここ?
この国の端と呼ばれる場所。
安全な遊歩道は、そこから外れなければ何のリスクも負わずに行けた。
でも、あのスリリングなロッククライミングは、ここまでの道のりを楽しいものにしてくれた……かもしれない。
忘れられない思い出にしてくれたことは確かだ。
眼下に望む海は、私が崖の上に立っていることを教えてくれた。
無事に登れて本当によかった……。
と、思った。
崖の下に砂浜はないし、遊歩道は結構な高さにあり、出っ張った岩壁は、素人では登れない感じになっていた。
登った場所、
まだましだった。
あれで良かったのだと思うことにした。
ここからなら登れなかった。
お茶もおやつもおいしかったし、終わりよければすべて良しみたいな?
とにかく、遊歩道は見晴らしも良く、綺麗な海が広がっていた。
あの崖の上だもの。
よく見える~。
そして、そんなに遠くないところに島があって、その上に建物があった。
おぉ~
アレか?
…………。
想像していたよりも小さくて、お城と呼ぶにはナンだった。
天使は作れって言っただけで、
作ったの人間だし……。
きらびやかなわけでもなく、荘厳な宮殿が広がっているわけでもなかった。
それでも、そういう逸話があると、地味な建物も特別に見えなくもない……。
だって
天使だもんね。
「天使」がつけば、わりと他はどうでもいい。
それよりも……
夕日、キレ~。
景色の方がすごかった。
海に夕日が沈んでいく。
冬の柔らかい太陽。
その光が、私が見ている景色のすべてを照らしていた。
もやもやふわふわした、真珠色の空気が満ちている。
私はその中に立っていて、その世界に包まれていた。
どこを見ても、
柔らかな光に包まれてる
そして、太陽から出ている光と雲の形がたまたま合って、天使の羽のように見えた。
巨大な天使……。
ローブを着ている天使の後ろ姿なのか、それとも直接羽なのか。
太陽を頭部に、雲から漏れる光を羽に、空に大きな天使がいた。
天使が常駐してるのか?
その昔、天使の声を聞いた人が、ここにお城を建てたという……。
これ見たら、
建てたくなるかも。
お金があったらだけど。
私は建てないだろう。
でも、これを建てた人がいたから、私はここに来たのだ。
その人のおかげだな……。
こんな綺麗な景色が見れたの。
ありがとう。
見たこともない、お金持ちのおじさん。
でも、お金がなくても、どうしても建てたいと思ったおじさんが、お金持ちのおじさんを巻き込んで作ったのかもしれない……。
おばさんかもしれないし。
きっと、この国の人が、みんなで力を合わせて作ったのだろう。
………………。
そのままじっと見つめていたけれど、天使はこちらを向かなかった。
まあ、そう見えるだけだし。
そうなったら、それはそれで怖い。
でも、しばらく見ていた。
柔らかな光と空気が、心地よかった。
それは、日が沈むまでの出来事だった。
私は日が沈んでも、しばらくそれを見ていた。
いいもの見れた。
天使さん、
ありがとう。
夜空でその姿ははっきりしなくなったけれど、そんなことを言っていた。
たまたまこういう天気の日に、たまたま近くを通っていて、たまたま遭遇できた景色。
私はたまに、こういうたまたまに逢いたくなることがある。
だから旅行をするのかもしれない。
気の向くままにフラフラと。
また会えるような
そんな気がした