お母さん、行ってきます!
気を付けていくのよー。
…
時刻 : 2030年 4月8日 7時15分
彼女は、中学生まで島で暮らしており、親の転勤によって関東へと引っ越した。
初めての街並みにすら慣れてもいないのに今度は高校の入学式へ行かなければならない。
楽しい事が待っているかもしれない反面、不安も抱きながら学校へと向かった。
あ!近所の人かな…!
おはようございます!
…
前方から犬の散歩をしながら歩いてきたその人は、無言のままミサキの横を通った。
…
きっと、私の声が聞き取りにくかったのね。
また明日、しっかり挨拶しよう。
き、緊張する…。
新しく入学する高校の正門へと到着した。
同じ制服を来た人がずらずらと校内へ入っていく。
彼女は勇気を振り絞り、新入生らしき人々の後へ続いた。
えーと、私の下駄箱…。
下駄箱の近くに、ボードに張られた紙を見つけた。
「新入生は、この列の下駄箱の自由な場所にお入れください。」と書いてある。
彼女は自分の靴を入れ、体育館へと向かった。
わ、私の席は…あそこね!
自分の周りには、人が大勢いた。
隣の人達も緊張している様子で、ステージのほうを淡々と見つめていた。
同じ境遇の人がいることで緊張が少し解れたのだろうか、彼女は無意識に左隣の人に声をかけてしまった。
緊張…するね。
うん、そ…そうだね。
その人とは、それ以上会話は続かなかった。
すぐに入学式は始まり、校長先生の挨拶が始まった。
ギャハハ!ギャハハ!
その途中、小さな子供が騒ぎ始める。
どうやら生徒の親が子供を連れてきたのだろうか、お母さんらしき人が注意をし始める。
こら!静かにしなさい!
それでも子供は静かにせず、注意をされたのが理由だろうか、今度は泣いてしまった。
泣き声が体育館中に響き渡る。校長先生も注意するにできずにいる様子だった。
あんなの、親のしつけが悪いのよ。
ただ、「静かにしなさい」だけで「はい」なんていう子供は数少ないわ。
「ここがどういう場所か」「なぜうるさくしてはいけないのか」をきちんと説明しないと駄目だわ。
右隣にいた人が長々とそう口にした。
私に言ったのだろうか、独り言だったのだろうか、分からない私は反応がしずらかった。
なんだかんだで入学式は終わった。その直ぐ後
「それでは、各教室へと移動してください。」
と、校内放送で流れ彼女は自分の教室へと向かった。
…
…
教室にはすでに数人集まっていたが、誰ひとり口を開こうとぜず固まってる人もいれば、携帯をいじっている人もいた。
わ、私の席は…あそこね!
あ、さっき話しかけてくれた…
あ!あなたは!
一緒だったんだね!
何かの縁かな?よろしくね。
よろしく!私はミサキっていうの。
あなた、名前は?
私?私はね…。