彼女と再び出会ったのは、あれから三度目に山口に訪れた時だった。
彼女と再び出会ったのは、あれから三度目に山口に訪れた時だった。
その日も澄んだ青空が広がっていた。絶好のお散歩日和と言える。
僕はいつもの公園に、今度はチェリーを連れて来ていた。
はあはあ
そしていつも通り息を切らせ椅子に腰掛けていた。
こちら真美。楠川公園にて不審者を発見しました!
突然聞こえてきた声に慌てて立ち上がった僕は、足元にあったリードに引っかかり転んでしまった。
わっ!
今だレモン。不審者確保ー!
声と同時に一匹の犬が僕に襲いかかる。
うわっ
僕は声を上げジタバタしたが、パニックになっていたために手足が地面を叩くだけだった。そのせいで巻き起こる土煙の向こうには、青々した空が広がっていた。
いつの間にか僕は、地面に背中を預けて水から上がった魚の様になっていたようだ。
そんな僕の手が優しく握られる。それが先ほどの声の主だと気付いた時には、僕はもう二本の足で立っていて、しっかりとその顔を見つめていた。
不審者さん。犬に捕まった今のお気持ちは?
命の危険を感じました
直後に僕たちは、示し合わせたかのように同時に笑った。
ははは
ふふふ
この日をきっかけに、僕たちはお互いのことを色々と知るようになる。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
これが僕と彼女の二回目の出会いである
僕はこの出会いにも、
そして初めての出会いにも、
大して何も思わなかった。
けれど、彼女はちがったらしい。
後に僕が聞いた時、彼女は
こんなことを言っていた。
んーん。君がどう思ったかなんてその時の私は知らなかったし、今の私もやっぱり分からないけれど
それでも私は聞いたよ。『カチッ』ていう、パズルの最後のピースがはまる様な、止まっていた歯車が動き出す様な、そんな運命の音を!
とにもかくにも。
僕たちの物語は、この出会いを
きっかけに動き始めた
翌日。
僕は彼女に会うことなく
帰路に着いた。