ーー六角諸島・中央中学校
どうして・・・なんで、お前が死ななきゃなんないんだ・・・!
嘘よ・・・こんなの、嘘、嘘、嘘、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘・・・・・・・!!
どうして、二人して逝っちまうんだ・・・もう、遅刻なんてしないから・・・暴力だって振るわないし、からかったりもしない!!
お願い・・・一人にしないで・・・パパ、ママ、緒兎(おと)・・・一人なんていや・・・寂しいよ・・・!!
だから
・・・み・・・かみ・・・
氷神(ひかみ)!!
ーー六角諸島・中央中学校
ふうあっ!?
頭に何かが当たる感覚がして目が覚める。あんな夢を見たからか、酷く目覚めが悪い・・・うえ、気持ち悪い・・・。
まったくお前は・・・また居眠りか?
あ、あはは・・・いやすみません・・・
特に反省なんてしていないが、俺はポリポリと頭を掻きながら謝った。眠いもんは仕方がない。
そんな俺の本音を見抜いてか、大きめのため息をついて先生はあたりを見回した。
まったく・・・じゃあ、代わりに・・・笹原(ささはら)。ここの文を読んでくれ。
はい。
えっと・・・
『六角諸島の今』
『私たちが住んでいるここ「六角諸島」は、中央島と、それを囲うように存在する海岸島、森林島、火山島、山間島、雪原島、未開島の七つの島から成る諸島群です』
『島は全て、海底鉄道によって繋がれていて、一部を除き行き来は自由となっています。
中でも、海岸島、森林島、火山島、そして中央島は観光地としても有名です』
はい、そこまでで結構。ありがとう。
ああ、そうか。今は地理の授業中だったか・・・ダメだ、地理は苦手なんだ・・・。
それでは・・・氷神。
その中で立ち入り禁止になってる島は?
・・・あの、それくらいわかりますよ。
バカにしてます?
ああ。地理に関しては特にな。
このくそオヤジ・・・
未開島
正解、よくできたな
くそ・・・あの笑みがまたムカつく・・・!地理は苦手だけどそこまでバカじゃないっつの!!
周りからクスクスと笑う声も聞こえて、俺はまた机に突っ伏してやろうかとも思った。が、不意に背中を突かれて椅子を後ろに傾ける。
どーどー、イライラしない、イライラしない。
してねぇよ・・・
嘘だね。耳真っ赤だよ?
うっせ
ふふ・・・寝起きの在斗(あると)おもしろーい
ほっとけバーカ
ゴホン
前方から大きな咳払いが聞こえ、俺たちは肩をすくめた。
いいよいいよ。昼休みにはお楽しみが待ってるんだ。それに免じて今回はおとなしく引いてやろう。
俺はさっき見た夢のことなんて忘れて、昼休みが来るのを楽しみにしながらその後の授業を聞い(ているふりをしながらノートに落書きを)た。
ーー中央中学校・屋上
うわあ、すごい!!
僕屋上なんて来るの初めてだよ!!
ふふーん、だろ?
さあ感謝するがいい!
うん!するする、感謝しまくりだよ!!
よく屋上に出る許可なんてもらえたね!
え?そんなのもらってないよ。
・・・・・・え?
朝早く学校来て鍵盗んだ((ドヤァ
うわああああああ何してんのさ在斗おおおおお!?
そんなわけで、俺たちは屋上に来ていた。
・・・まあ、悪いことだとはわかってるさ。でも、反抗期真っ盛りの中学二年生男子の好奇心には勝てなかったのだ。しゃーないしゃーない。
今更ビービー言ったって、もう出ちゃったんだから圭(けい)も同罪だぞ?幼馴染のよしみだ。ばれたら一緒に怒られようじゃん?
ううううう・・・ほんとに、在斗は小さい時から・・・うううううう・・・・
笹原圭・・・俺の幼馴染で、もう10年以上の付き合いになる。出会ったばかりのころは、それはもう反りが合わなくて、喧嘩、言い合いは当たり前。最終的には俺が圭を泣かせて怒られる結果に終わることが度々だった。
でも、だからこそ今まで友達でいられたんだろう・・・多分、俺たちはこれからもずっと一緒なんだろうなーって、そんな気がする。
それにしても・・・いい景色だなぁ・・・
在斗ってばほんとにお気楽なんだから・・・でも、そうだね・・・
今日は風も気持ちがいい。俺の住む雪原島は一年中極寒というかなり変わった島だ。だから、まだ寒いと言われているこの季節の風も、とても暖かく感じた。
・・・というか・・・なんか熱い・・・?
・・・うん?
何か、校庭の方が騒がしい・・・?
言われてみれば・・・なんかあったのか?
うーん・・・あ、在斗・・・あれ・・・
ん?どうした?
校庭側をのぞきに行こうとした俺を圭が止める。
少しおびえている様子の圭が見ている方を見ると・・・
黒煙・・・?あれって家庭科室だよな?
なんか失敗したのか?
あれ・・・燃えてない、よね・・・?
ま、まさか・・・だったら警報が鳴ってるはずだろ?そんなわけ・・・
その時だ
黒煙が出ていた教室が、爆発した。
う、え・・・?
火事・・・!?火事だよ在斗!!逃げなきゃ!!
そ、そんな、待ってくれよ!だって、急にそんな・・・!!
在斗、早く!!
圭に強く手を引かれ、俺はつられるように走りだした・・・。
ああ、こんなことになるなら、屋上の鍵なんて盗んでくるんじゃなかった・・・。
2階より下は、もう火の海だった。
それでも、俺たちは逃げ延びるために必死で退路を見つけていった。
思いっきり煙も吸ったし、あちこち火傷もしたが、構っていられる余裕なんてなかった。
体力に自信がある俺はよかったが、圭の方は一階に来たところで殆ど限界を迎えていた。
はあ・・・はあ・・・げほっ・・・
圭、あと少し・・・!
もう少し行けば・・・!
あっ・・・!
奇跡だった。いつ焼け落ちてもおかしくないが、まだ道になっている場所があった。
ここを通れば・・・!
圭!道だ!!道がある!!
俺たち、助かるよ!!
ほ、んと・・・?よかった・・・
最後の力を振り絞り、俺は圭の手を引いて走った。
もう少し、もう少しで出られる・・・!
・・・!!
在斗!!
え・・・
何かに、強く背中を押された。
何が起きたのか、わからなかった。
はしーーー
・・・・・・けい・・・?
・・・・・・・・・
圭ッ・・・!圭!!!
圭は、俺を庇って瓦礫(がれき)に埋もれてしまったーー。