3月27日


今日から日記をつけることにした。


俺は記憶が一日しか持たない。あと家族の記憶もない。


理由はわからない。


明日の俺はこれ読んでどう思うかな。


明日の俺はうまくやるだろうか


そういえば看護師さんが状況理解の速さに驚いてた。


それもアヤメのおかげなんだろうな。


今日はアヤメについて…

書こうと思…

ほんとにー!!

わあああああ

いつのまにかアヤメは俺の後ろで喜んでいた。

い、いつもどってきたんだよ!

今さっきだよ~

そういって彼女は微笑んだ。

私のこと書いてくれるんだぁ~
嬉しいなぁ~

ちょ、ちょっとだけだし!

やっぱり可愛いお姉さんかな~
へへ~

か、書くことなかっただけだし!!

またまた~

急に現れたアヤメに動揺する。

やばい、恥ずかしい。

話題を変えなければ。

そ、それにしても

検査って結構かかるんだな。

アヤメの言葉が一瞬濁る。

今日はたまたま長かっただけだよ~
今日は長くて大変だったんだ~

…そっか。

…そう、今日からあと六日

それ以上はなんだか聞いてはいけない気がした。

そろそろ消灯だね。
枕投げでもしよっか~

そんなこどもっぽいことしねーし…
それにもう眠い…

気付くともうすぐ消灯時間だった。


そろそろ寝よう。





……待てよ


今日の終わり…つまり


今日の俺の終わり。


この意識の終わり。






そうか、俺は

一日しか生きれないのか

明日には俺は進めない。

未来がない。

大丈夫だよ

明るい声でアヤメは声をかける。

そう無理にしてるかのように。

桜太は本のしおりをなくしただけ。
きっとまた見つかるよ。

なんだか心を透かされた気分だった。

きっと昨日の自分もそうっだったのだろう。

だからね、明日の自分に今日の自分がいたことを日記で伝えてね!

……

私のこともたくさん書いてくれるとうれしいな!

なんだかとっても必死に見えた。

まるで自分のことのように。

…うん、書くよ。

だから俺はその気持ちに応えたくなってしまった。

ありがとう…!

こうして消灯時間が来て俺たちは眠りについた。

意識が溶けて消えていった。

ああ、なん…おれ…だ……そん…

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