昔々の物語。
日本にまだたくさんの国が存在し、それぞれの覇権をめぐって血で血を洗う醜い争いを繰り広げていたころの物語。

とある国の山奥で一組の老夫婦が、竹をとって加工したものを売りながら、細々と暮らしていた。

そんなある日のこと。とある国の山奥で一組の老夫婦が、竹をとって加工したものを売りながら、細々と暮らしていた。とある国の山奥で一組の老夫婦が、竹をとって加工したものを売りながら、細々と暮らしていた。

おじいさん

それじゃあ今日も張り切って竹を取ってくるかの

おばあさん

はいはい
気をつけて行ってくださいね?
近頃は狸や狐や兎やら梟に騙される人も増えてきているみたいですから……

おじいさん

大丈夫じゃ……
十分わかっとるって……


狸や狐はともかくとして、兎や梟が人を騙すことはないのだが、お爺さんはそんなことにツッコむことなく、鉈と籠を持って山へと入っていった。
そうしていつものように、お爺さんが竹を切っているときのことだった。

おじいさん

これはなんじゃ……?


お爺さんは節の一つが金色に輝く竹を発見した。

おじいさん

何とも不思議なものじゃ……
触っても熱くないし……
中に何か入っとるんじゃろうか……


それからしばらくの間、竹を仔細に調べていたお爺さんは、やがて意を決したように鉈を構える。

おじいさん

金目のものが入っとるかもしれんし……
一応、光っとるところだけでも持って帰るかの……


そしてお爺さんは、中のものを傷つけないようにと慎重に、ゆっくりと、丁寧に竹を切っていく。

それから少しして、竹を切り終えたおじいさんが目にしたもの。
それは、竹の中で両耳を押さえながらおびえた顔でおじいさんを見上げる、小さな女の子だった。

……………………

おじいさん

おやおや……
どうしたんじゃ?
そんなに怯えてしもうて……
可愛そうに……

頭の上を鉈が……
し……死ぬかと思った……
竹の中に音が響いて耳が……
怖いよぉ……

小さな体をますます縮みこませてぶつぶつとつぶやく女の子はよく見れば、とても可愛らしい姿をしていた。

おじいさん

おやおや……
こんなに怯えてしもうて……
可哀想に……
どれ、うちに連れて帰ってやるかの……

好々爺の笑みで女の子をそっと拾い上げたお爺さんは、そのまま仕事を放り出して家へと帰っていった。

おじいさん

婆さん!
婆さんや!

おばあさん

はいはい、何ですかお爺さん……
こんなに早く戻ってきて……
仕事をしてくださいな……

おじいさん

そんなことよりもこれを見てくれ、婆さん!

そういってお爺さんが差出した掌の上には、小さな女の子が顔を青ざめさせて座っていた。

……うぷっ……
ゆ……揺れ……

どうやらお爺さんが余りに急いだためにかなり揺れてしまい、酔ってしまったらしく、口元を押さえて必死に吐き気を押さえ込もうとしていた。

そんな当の本人を放っておいて、お婆さんはお爺さんに向かって目を吊り上げた。

おばあさん

お爺さん!!
自分の仕事をほっぽり出しておいて、何をこんな小さな女の子を連れてきてるんですか!!
幼女を誘拐して自分好みに育て上げるつもりですか!!
光源氏計画ですか!?

おじいさん

婆さん……
源氏物語の読みすぎじゃ……

やれやれとため息をつくお爺さんの手から、小さな女の子を奪い取ったお婆さんは、おびえるその子へ優しく声をかける。

おばあさん

よしよし……
心配せずともいい……
わしがあの変態爺さんの魔の手からお前さんを守ってやるからの……

はぁ……

おじいさん

これ、婆さん……
人を変態呼ばわりするのはよしなさい……

おばあさん

お~よしよし……
それにしても可愛いねぇ……
名前は……どうしようかねぇ……

おじいさん

そうじゃのう……
夜すらも輝かせそうな光を持った子……と言う意味でカグヤと言うのはどうじゃ?

おばあさん

おや……
お爺さんにしてはいい名前を思いつきましたね……
よし、今日からお前はカグヤだよ……
この爺と婆の大切な子供じゃ……

カグヤ

……カグヤ……
はい!

こうして少女はカグヤと名づけられ、お爺さんとお婆さんに大事に育てられることになった。

第一幕 その名はカグヤ

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