武器を捨てなさい

火哉

わかったわかった! ほらよ

アズール

私たちは水の国の使者です。風の国の王に相談があり、まいりました

火哉

そう! 敵じゃないのっ! 聖剣を頂きに――

アズール

火哉、いいからしゃべんないで

火哉

……はい

アズール

魔王の復活はご存知でしょうか?

……ああ

アズール

あの日から水の国は……

 こうしてアズールは一部始終を語った。

なるほど。聖剣を取りに来たというわけか

アズール

はい。どうか、王と謁見の機会を……

残念だが、できない

火哉

なんでえ!? 世界の危機だよ!

もちろん知っている。魔王の討伐に聖剣が必要であるという伝承もな。だからこそ我らの国王も、その聖剣を求めて森へ向かった

しかし――それきり帰って来ないのだ

火哉

様子を見に行った者も、一人として帰って来ない……

アズール

そんな……

火哉

魔王の仕業か……?

おそらく違う。――王は聖剣に呪われたのだろう

アズール

呪い……?

ああ。聖剣はシルフの森奥、とある岩に刺さっているのだが、選ばれし者にしか抜けないと言われている

火哉

選ばれし者……

そうだ。以前、ある男が遊び半分で抜こうとして、邪霊に取りつかれ、狂戦士と化したことがある。それ以来、聖剣に近づくことは禁忌とされているのだ

アズール

その男性はどうなったんですか?

ひとしきり暴れたあと、衰弱して死んだ

火哉

マジっすか! おっかねえ

アズール

……では、そのシルフの森へ行く道を教えてください

火哉

え! 姫、行くの!?

貴様、死にたいのか……?

アズール

生きるために……国民を守るために聖剣が必要なのです

火哉

姫……

……ならば私が案内してやろう

ラフィリア

お母さま……

王が帰らぬせいで、政権争いが始まってしまってな。私たちの一族は外も安心して歩けぬ状態なのだ

アズール

それで外に人が倒れてたりしたのね……

だが、きっと王は生きている。あの人は強い。そんな簡単には死なない。だから私が連れ戻す

ラフィリア

ボクも行く!

お前はここで待っていなさい。必ず帰ってくるから

ラフィリア

ほんと……?

ああ。お前を一人にはさせない

火哉

じゃあ、ちょっくら聖剣とりに行きますか!

火哉

兄ちゃんたちに任せろ!

ラフィリア

こんなアホそうな人に任せられない……

こら! みんなが思ってたことだが、口に出しちゃ失礼だぞ

アズール

ぷっ

火哉

ちょっ! ひどくね!?

 そして翌朝――

では行ってくる。留守を頼んだ

 風の民数人とシルフの森へ向かう火哉たち。

アズール

この中に入るんですか……?

火哉

うわっ、暗っ!

ああ。聖剣はこの奥にあると聞く

アズール

行きましょう!

火哉

木漏れ日……綺麗だね

止まれ! 誰か来るぞ!

……

王! それに皆も! よくご無事で……

アズール

この人が風の国王……

……

え……

アズール

うそ……

火哉

ぐはっ……!

 王……そう呼ばれる男は、手に持っていた刃物で火哉の心臓を突き刺していた――

アズール

火哉ーっ!!

第一章 第三話『王と聖剣』

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