じゃあなんで私が生きてるかって?

さあ?なんで生きちゃったんだろ?

神様も私をいじめるのが好きだからじゃないかな?

でもね、私を殺したのはホントだよ。

羽柴 恵

・・・

私が目覚めた時、ママの驚いた顔がそこにはあって、私はぼんやりした頭でその光景を眺めていた。

その後医師と看護婦さんが来てなんか色々検査して、丁度それが落ち着いたころに私はここにいる状況を把握した。

そっか、私、生きちゃったんだ・・・

私が状況を理解した上で最初に思ったことがそれ。

次に思ったことはママやパパにあわせる顔がないなって思ったこと・・・

羽柴 小百合

ごめんなさい・・・

何で謝るの?

理解できなかった、私が謝んないといけないのに、言葉が出なかった。

私には「ごめんなさい」の一言すら出なかった・・・

子は親に似ると言うけれど、その意味を私は実感していた。
私もよく謝ってた、友達に・・・
でも大事な時にすんなりとその言葉は出なかった。

その後もママはずっと私に謝っていた。
私はそんなママをずっと見てるだけだった。
そんな姿、見たくないのに・・・

その後パパも来て話をしたけれど、私が発した言葉は

羽柴 恵

学校でいじめられて死にたくなった、それだけ・・・

もちろんそれだけではないのだけれど、その時はそれくらいしか話せなかった。

その次の日、担任の自分可愛いですさんが来た。

私のために来た・・・らしい。
まあそんなの嘘だろうけど、どうせあれでしょ?
大人の事情とかわきまえとかそんなんでしょ?

先生も謝って、ママも謝って・・・
なにこれバカじゃないの・・・

次の週末、クラスの皆でやれば怖くないさんが来た。
そこには悪魔ちゃんは来なかった・・・

あの・・・

羽柴 恵

帰ってくれませんか?
頭が痛くて、今すぐ死にたくなるので。

そっか、私が敬語を使うようになったのはこの日からだったっけ・・・

リハビリが終わり、私は今までいた中学校を辞めて、他の学校に通うことになった。
まあ、義務教育だから仕方なくだけど。

羽柴 恵

皆さん、キモすぎですね!!

私は笑ってそう言った。
だって友達なんて作りたくなかったから、だからわざと嫌われるようなことを言った。
それが本音でないとしても。

牧野 みかん

あの、羽柴さん。
私、みかんと言います。
よかったらお友達に・・・

羽柴 恵

さっきからみかん臭がすると思ったらあなたでしたか、臭いが移ると嫌なので近づかないでもらえますか?

牧野 みかん

えっ、みかん臭するかな?

後鳥 桜花

みかんはそんな臭いしねえよ!

牧野 みかん

お、桜花ちゃん・・・

後鳥 桜花

転校生だかなんだかしらないけどさ~
さっきから生意気なんじゃない?

羽柴 恵

・・・

後鳥 桜花

近づいてほしくないんならあんたがどっかいけばいいじゃない。

羽柴 恵

ではあなたの望み通り、私がどっか行きましょう。

牧野 みかん

桜花ちゃん、言い過ぎだよう・・・

後鳥 桜花

いいんだよ、ああいう奴にはガツンといわないと!

牧野 みかん

・・・

牧野 みかん

羽柴さ~ん!
一緒に帰ろ~

羽柴 恵

・・・

牧野 みかん

さっきはごめんね、桜花ちゃんがひどいこと言って!

なんであなたが謝んの?

牧野 みかん

でもいいところもたくさんあるんだよ?

牧野 みかん

外見は昔ながらのスケバン!
みたいにみえるけど・・・

羽柴 恵

だから何ですか?

牧野 みかん

えっ・・・
うん、だからね、羽柴さんと仲良くなれたらな~って思って・・・

羽柴 恵

それだけですか?
私、今日は一人で帰りたい気分なのでお先に失礼します。

牧野 みかん

そっか、なんかごめんね。

また謝った・・・

作り笑顔で笑ってごまかして自分が悪くないのに謝って、まるで誰かさんを見てるようでイライラした。
だから嫌いになろうとした、嫌われたくなった。

その後もみかんさんは私にかまってきた。

その笑顔を見るたび、私はイライラして毒舌を吐いた。

そして私は不登校をするようになった。
家に引きこもって寝ずにボーっとして、毎日が流れるように進んだ。

私は友達を作りたくなかったから・・・

そのまま私は卒業した。
卒業式にも出ずに卒業したのだ。
なんの感情もなく卒業していた・・・

その次の一年も引きこもった。
心の中に引きこもった。

あの時から・・・
自分を殺したあの時から私の時計は壊れたまま、止まったまま。
誰も直してくれない・・・

ある時、お母さんが私の部屋に入って来た。

土下座された。

土下座されて頼まれた。

ロリショタ高校を受けてほしいと。

生きる意味を失っていた私は、お母さんとお父さんのためにこの学校に来た。

元々頭がいいというのはあったけれど、飛び級のように二年生から入学になるなんて予想外だった。

春。
この時が来たと言わんばかりに、期待と不安を胸にひめ、校内の昇降口に貼ってある紙から自分の名前を探している同級生の束を上から目線で拝借しながら、私もその紙の中から自分の名前を探した。

羽柴 恵

二年一組・・・

長谷川 拓実

・・・

私の隣であんぐり口を開けて気絶しそうな男がいた。

おそらく残念なクラスにでもなってしまったのだろう、私には関係のない話だが・・・

三上先生

君が転校生君の羽柴みくにちゃん?

羽柴 恵

羽柴恵です。
そもそも転校ではないです。

三上先生

そうそうそれだ。
私は君の担任になった三上というものだ。
まあ、よろしゅう、な?

羽柴 恵

こちらこそお世話になります。

三上先生

とりま、教室にでも行きますか!
その時に自己紹介してもらうからよろピクネ?

羽柴 恵

わかりました。

三上先生

よし、全員集まったな。
俺の名前は知ってるやつも多いと思うが三上という。
一組の担任になったのでよろ。

三上先生

とりま、いきなり大事なお知らせだ。
二年になって転校してきたやつがいる。
カモ~ン!

私は目を閉じながら教室に入り黒板の前に立った。

羽柴 恵

・・・

そして目を開けた。

羽柴 恵

コスプレの大集合かっ!!!

ゴリラもいる、ヤギもいる、派手な衣装に変な髪型、こんな変なクラスがよくもまあ、あったものだ。

三上先生

羽柴さん、自己紹介、頼んます・・・

羽柴 恵

皆さん、キモすぎですね!!

私は笑ってそう言った。
ホントにそう思ったからそう言った。

あの二人が家に来てから何日過ぎただろうか?

私は今、何をしているの?

私は何がしたいの?

私は・・・

羽柴 恵

!?

長谷川 拓実

羽柴、話がある・・・

鍵がついていたにも関わらず、そのドアをぶち壊して私の部屋にそいつはやって来た。

まるで王子様のように・・・

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