部長

うちの部、神様いるじゃないですか、この条項によれば神様が――

先生

あー、あの校則な? 今年から廃止になったから

部長

な、
な、
な、
なんですとー!?

見事すぎる出落ち、ありがとうございます

部長

出落ちってゆーな!

 部長が顔を真っ赤にしながら僕に逆切れした。
 そして、部室の一角でこたつ空間を展開している穂波さまをちらっと見る。

穂波さま

結局、わらわを捕まえた意味はなかったということなのじゃな?

 畳、こたつ敷き布団、穂波さま、こたつ、こたつ布団、天板とミルフィーユになった穂波さまが、寝転がりながら僕達に問う。

部長

ううう、そうなのよー、ごめんねー穂波さまぁ

 部長が目を滲ませて、こたつで寝転がる穂波さまに抱きついた。

穂波さま

まあ別に良いのじゃー。ここも快適じゃしの

 穂波さまはほやっとした顔で、部長の頭を左手でなでなでしつつ、右手で漫画を読んでいる。

 学校に来て一週間でここまで適応しニート化するとは、穂波さま恐るべしだった。

それがですね、穂波さま

 だが、僕はそんな穂波さまに伝えなければいけない。

穂波さま

なんじゃ?

この文芸部が存続できないということは、この穂波さまが快適にご本や漫画を読んだりお菓子を食べたりできないってことです

 この場所自体、なくなりかけているということを。

穂波さま

な、
な、
な、
なんじゃと――!?

そりゃそうですよー。文芸部がなくなれば、部室が使えなくなるんですし

穂波さま

ぐぬぬ、ではわらわはどこでこたつを使えばよいのじゃ

学校ではないでしょうねー

穂波さま

ではしかたないの。家におるのじゃ

それはダメですよ。国から認められないかぎり、神様と神付きはできるだけ一緒にいなきゃダメ、って明方さんが言ってましたよね?

穂波さま

む……。では、あの暇ーな授業を聞きつつすごさなければならんということか

そうなりますねー

穂波さま

だ、大体じゃ。何故部員がこんなにおらんのじゃ

それは、部長のせいですねー

部長

ぐはぅ!

 穂波さまとゴロゴロしていた部長が、咄嗟に胸を押さえる。

部長が部活動紹介の時に、あんなことを言わなければ…

 僕はため息混じりに、その様子を思い出した。

 体育館の壇上、部長はつらつらと滑らかな台詞回しで、文芸部の部活動紹介をする。
 普通に紹介すれば、本好き、もしくは作家志望な子が入ってくるはず、と入れ知恵したのは僕だった。

部長

あ、そうそう、うちの部には神様がいるんですよー。穂波さまって神様なんだけど

 しかし、穂波さまの話をしだしたところから雲行きは怪しくなり。

部長

文芸部は今後、神様復活部としての活動もするんで、興味のある方はよろしく!

 という言葉で締めくくった。

 部活動紹介以降、新入部員はおろか、見学者も0名になった。

部長

だって、本当のことじゃん。今後は穂波さまを捕まえた責任として神様復活もしなきゃだしさ

ええ、そうですね。でも、別に新入生全員に話すことじゃないですよね?

部長

だってほら、私って、包み隠さずが私のモットーだし!

そんなモットーは時と場合を考えてください

部長

ちなみに、少年には隠していることがあります!

微妙に時と場合を考えてますねすごく気になりますがこの際スルーです

部長

でも、言っておかないと入ったあとやめちゃうとかあるでしょ?

入らないよりかはマシです。
五月までに4人いれば一年間は部活が存続すること、部長も知ってますよね?

 この学校では、5月に部員が4名いる部活は、一年間部活動できるというルールがある。

 つまり、五月以降に部員が一名になったとしても、部活動は存続することができるのだ。

 ゲスいやり方かも知れないが、部活動を存続させるという意味では必要なことで、他の部活もよくやっている手法だ。

部長

部長?

部長

……過去を悔やんでもしょうがないわ! 未来の為に今考えよう!

話をずらしましたね……

穂波さま

頑張るのじゃーわらわの生活のためにも

部長

任せておいて穂波さま!

 部長は穂波さまに勢い良く返事をした。

少女は恋を書きたい 1.文芸部ピンチ継続中

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