ここまでの顛末

魔剣の力で不死身の肉体を持つ敵に、ルシファー達は苦戦を強いられる。

ベルゼブブの策が整うまで、ルシファー、ベルフェゴール、イシスの三人は時間稼ぎのため、不死身の男に挑む。

　そう言うと鎧の男はこちらに走ってくる。

　迫りくる鎧の男の前にベルフェゴールは岩盤を出して白い鎧の男を取り囲んだ。

鎧の男は道を阻む岩を切り裂く。

　

すると切った岩の向こうからナイフが飛んできた。咄嗟のことに反応が遅れた鎧の男は、鎖つきナイフによって腕を絡め取られる。

　イシスが鎖に電撃を走らせる。

　殺せない相手に殺傷系の魔法は無駄だろう。なのでイシスは電撃で痺れさせ男の動きを止める。

　鎧の男は電撃を食らいながらも腕に絡んだ鎖を思いっきり引っ張った。

イシスは男の馬鹿力に引っ張られた。


宙に跳ぶイシス、そこには剣を構えた男が獲物を捕らえるかのように舌なめずりをしていた。

　イシスが斬られそうになる瞬間、ルシファーは男に飛び込んで首元を斬りつけた。

　首から大量の出血をさせる男、鎧の男が怯んでいる隙にルシファーはイシスを担いで一旦男から離れる。

　しばらくすると、鎧の男から吹き出す首の血が止まり完全に傷を癒す。

　岩盤を出し続けながら鎧の男の足をなんとか止めているベルフェゴールはベルゼブブに首を向けて叫んだ。鎧の男は岩盤を粉砕しながら確実に近づいてくる。

　ベルゼブブは必死に答えた。

　ダーインスレイブは歓喜すると、封印装具のガントレットを外しルシファーの右腕に寄生した。凄い勢いで血を吸われルシファーは立ち眩みを起こそうとするも、気合いで足を踏ん張る。

　30%だ。やれてもこれが限界だ。


　ルシファーの身体を分散し、多数のカラスが散らばる。それは黒い竜巻となって鎧の男に襲いかかる。

　黒い竜巻となったルシファーを鎧の男は斬りつけようと剣を振り上げる。




先程、ハエの群衆になって攻撃を仕掛けたベルゼブブの本体をピンポイントで斬ることができた。



本来、物理攻撃を受け流すことができる身体の分散化は、この鎧の男相手には効果がない。おそらく魔剣の影響で無力化されているのであろう。ベルゼブブと同じ二の舞になる。ベルフェゴールはそれを悟ってイシスに大声で呼んだ。

　イシスはベルフェゴールに言われた通りに地面に手をつけた。

　二人は地の魔法を地面に流して、それは鎧の男の立っている足下まで伝わる。すると地面が盛り上がり男は体勢を崩した。

　迎撃しそこねた隙をルシファーは逃さない。

　黒い竜巻は鎧の男を飲み込んだ。竜巻の中でルシファーの斬撃が四方から男を切り刻む。

　高く打ち上げられる鎧の男に、黒い竜巻はやんでダーインスレイブの刀身にカラスが集まり膨大な魔力のエネルギーに換わる。

　ダーインスレイブから放たれた黒い光が一直線に宙にいる鎧の男を包み込んだ。

　修羅煉獄の熱量が鎧の男を焼く。そしてそれを放った途端、ルシファーは力尽きて倒れた。

　倒れたルシファーに駆け寄るイシスとベルフェゴール。

　上空を眺めると、そこには身体の半身をもがれた鎧の男がいた。修羅煉獄を食らい奴の肉の大半を吹き飛ばしていた。

「グッ・・・ガ・・・」

男は致命傷を負っていた、だが・・・

男のちぎれた身体の部分が泡状に膨らんで、無くなった部分を再生させていく。

　修羅煉獄はルシファーの最大の奥義である。それが効かないとなると、これ以上は打つ手がない。

　鎧の男の憎悪が伝わる。男の気力は満ち溢れている。あれだけ攻撃してもまるで疲れ知らずだった。それだけではない、時間を掛けすぎため、帝国軍の増援がぞろぞろと大軍で押し寄せてきた。

　ルシファー達は絶体絶命の危機だった。その時、ベルゼブブの詠唱が終わった。

　ベルフェゴールはイシスと動けないルシファーを担いでベルゼブブの後方に下がる。それを確認するとベルゼブブは最後の節を詠唱する。

　ベルゼブブは最大まで溜めた魔力を手のひらに収め地面につけると、それを流し込んだ。

しかし、何も起こらない。

　悲観するベルフェゴールとイシス、それをベルゼブブは笑って言った。

　その時、凄さまじい地震が起きた。その場にいた者全員が体勢を崩した。

　その瞬間、レスボス島の中心にある一番高い山が噴火した。噴火した爆発で数多の岩石や溶岩がここまで飛んできた。

　噴火し飛んできた岩石が帝国兵に当たり死んでいく。山から噴き出した溶岩は下流に流れて、帝国軍の拠営地は溶岩によって火の手が上がっていた。帝国軍はこの災害により大規模な損害を受ける。