ルシファーの危機にルシファーの中からベルゼブブとベルフェゴールが飛び出した。
主!
ルシファー!
ルシファーの危機にルシファーの中からベルゼブブとベルフェゴールが飛び出した。
なんだ、この化け物共は?
鎧の男の前にベルゼブブとベルフェゴールが立ち塞がる。
おのれ、よくも我が主を!
ぬぐっ!?
倒れているルシファーを守ろうとベルゼブブの口から放たれる火炎が鎧の男に放たれ直撃する。鎧の男は炎に包まれた。
ベルゼブブとベルフェゴールが鎧の男の相手をしているうちにイシスは斬られたルシファーの元へ駆け寄った。
ルシファー!
お前か…遅かったな…ガハッ!
馬鹿言ってないで見せなさい!
イシスはルシファーの脇腹を見ると、深々と切り裂かれていて血が大量に流れていた。
酷い…早く処置しないと死んじゃう。
イシスは戦闘の時に使う鋼鉄線を糸の代わりに代用してルシファーの切り裂かれた脇腹を縫った。
ぐう!?
痛みを堪えて歯を食いしばるルシファー。
イシスは治癒魔法をかけながら、ルシファーの脇腹を縫いつけた。
終わったわよ
ぐっ……すまないな。
応急処置が終わった頃、火炎を吐き続けていたベルゼブブも火を吹くのを止めた。
やったか
熱気によって発生した煙が晴れる。だが鎧の男は立っていた。男の片手にはルシファーが殺した兵士の死体を持ち上げていて、炎の残り火が死体が焼いている。
死体を盾にして防いだのか!?
ならこいつはどうだ!
ベルフェゴールは地面に手をつけ、地面から無数の尖った岩石が男目掛けて走りだした。
これなら死体を盾にしても防げねぇだろ!
自分に迫ってくる岩石を見ながら鎧の男は死体を投げ捨てると、横に剣を構えた。
こんなものか…実にくだらん手品だ。
迫るベルフェゴールの岩石を剣で容易く切り裂いた。それにはベルゼブブもベルフェゴールも驚愕する。
なんだと!?
化け物め、つまらぬぞ! もっと俺を楽しませろ!
天使のルシファーに深手を与えた上に魔法を切り裂いた。普通の人間でできる力をあからさまに超えていた。
あいつ、何なの!?
イシスはルシファーに治癒魔法をかけながら鎧の男を見ているとダーインスレイブは口を開いた。
アノ剣…魔力ヲ帯ビテヤガル
け、剣が喋った!?
驚いているイシスを無視してルシファーはダーインスレイブの言葉が気になり尋ねた。
あの人間の剣に魔力だと?
間違イナイ、先程ノ撃チ合イデ気ヅイタ。アノ剣ガアノ人間ノ力ノ源ダ。
それを聞いたイシスは鎧の男に大声で言った。
あんた! その剣なんなのよ!
ほう、この覇王剣ディルヴィングに目をつけるとは卑しい汚物なだけはある。中々に目ざとい。
男の持つ剣から禍々しいオーラが溢れ出していた。
覇王剣ディルヴィング…あれが…
その名に聞き覚えがあったのか、ベルゼブブは口走る。それをベルフェゴールは問い質した。
なんだよそれ? 名剣なのか?
名剣どころの話ではありません。あれは古来から伝わる魔剣です。
魔剣だと?
ええ、聞いた話ではどんな願い事も3つだけ必ず叶えてくれる剣なんですが、3つを超えた願いをすると命を吸いとられるというそうだとか…噂でしか聞いたことはなかったのですが、よもや実在していたとは。
詳しいなそこの汚物。その通りだ。
鎧の男は振り向いて襟足をあげると、男の首筋には666という文字が彫られていた。
一つ願いを叶えることで6の文字が身体に刻まれていく。俺はすでに三回の願い事をした。
どうやら、あの異常な強さは魔剣によって得られたものらしい。なんとも厄介なものだった。
ソレニアノ剣ハ俺様ト同ジダ。アレナラ天使ヲ殺セル
しかも神を殺せる剣らしい。魔剣は天上界にしか存在しないはずなのに、それを只の人間が持っている…奴は一体何者なんだ。
聞いたかベルゼブブ、ベルフェゴール!お前達もあの剣には触れるな。多分、あれは不死者も殺せる。
ベルゼブブとベルフェゴールは頷くと、二人は鎧の男と闘い始めた。ダーインスレイブは笑いながら言った。
オイ、力ヲ貸シテヤロウカ? ピンチダロww
そうしたいのは山々だがな。
ダーインスレイブの解放には大量の血を消費する。この手傷で血を流しすぎた。リミッター開放をするば流石に危険すぎる、今ダーインスレイブの力を使えば死に繋がる、苦しいが自力でなんとかするしかない。それにあの剣によって傷つけられた箇所も治りが遅くなっているしな。
ルシファーはとにかく機を伺った。
どりゃあああああ!
岩石のグローブをはめたベルフェゴールは怒濤のラッシュを鎧の男にかます。
ベルゼブブもまた鎧の男に向けて小蝿の大群に変化し消化液で溶かそうと試みる。
ウッシャァァァァァァァ!!!
チィ!
小賢しいわ!!!
ぐおっ!
ウッシャァァァァァァァ!!!
鎧の男はまずはベルフェゴールの岩石のグローブを切り裂いて粉々にする。そしてベルフェゴールに蹴りを入れると、すかさず迫る蝿に対して剣をふった、それは蝿の大群を切り裂くと、魔剣の影響で本体にまでダメージを与えた。
がはっ!
ベルフェゴールとベルゼブブは鎧の男の前に片足をつく。
なんだなんだ? もうお終いか?
ぐっ…くそっ…
桁違いの強さを見せる鎧の男に、ベルゼブブとベルフェゴールは苦戦していた。ベルフェゴールは何かを思ってか、仲の悪いベルゼブブに話しかける。
おい、ベルゼブブ…
な…んですか、正直今は貴方と喧嘩している余裕は…
違ぇよ、お前の知恵を貸せ!
!?
思わぬ台詞がベルフェゴールから飛び出した。ベルゼブブは目を丸くする。ベルフェゴールは続ける。
お前は頭が切れる。俺は大雑把だがよ、相手の得手ぐらいはわかるつもりだ。お前は俺より軍略に長けている。あの憎たらしい小僧を倒す算段をつけろ。
ベルフェゴールは不器用なりにも、ちゃんとベルゼブブのことを認めていた。ベルゼブブは今まで自分がどんなに小さいことに拘っていたのだろうと、自分の馬鹿さに呆れて鼻で笑った。今は協力して奴を倒す。それだけを考えた。
全く、私の軍略は高いですよ?
借金は人間だった時に慣れてるんでな!
やはり私は貴様が好きにはなれそうにない・・・が、今回は少しだけ理解してもいい。
チッ、まぁいいわ。今は二人でアイツを倒すぞ!
ベルフェゴールとベルゼブブは魔法を詠唱する。
黒の大地よ! 巨大な岩石でかの敵を押し潰せ!
ベルフェゴールの詠唱で、地面の土や石をひとつに集めて巨大な岩石を造ると、それを宙に浮かべ鎧の男に飛ばした。
黒き炎よ! 大地に宿りて内分より燃やし尽くせ!
そしてベルゼブブはその岩石を内部から燃やして巨大な火の岩石に変える。
「「エクスプロージョン!」」
火と地の魔法を合わせた合体魔法エクスプロージョンだ。二人の息のあった連携で合体魔法を行使した。
ふん、こんなもの!
鎧の男は先程のように切り裂こうと迫りくる岩石に剣撃をいれた。その瞬間、岩は大爆発を起こし無数の石つぶてが鎧の男に降りかかった。
なっ!? ぎゃあああああああ!!!
エクスプロージョンの効力は、岩石の内部の火が膨張され、外部からの衝撃によって弾ける魔法だった。さながら巨大な手榴弾だった。
岩石の破片が鎧の男の身体の肉をズタズタにしていく。ベルゼブブとベルフェゴールはその様子を見ていた。
やったなベルゼブブ!
ええ、初めてにしては上出来ですが、岩が大きいせいで無駄な魔力消費が目立ちます。もう少し岩を小さめにしてもらえると満点でしたね。
けっ、結局は皮肉かよ
ベルゼブブとベルフェゴールは互いに息をついた。あの攻撃を受けて生きていられるわけはない。二人はそう確信していた。
舐めるなよ! 汚物がッ!
悪鬼羅刹の如く雄叫びが聞こえた。ベルゼブブ達は驚きその声がしたほうを見ると、そこには鎧の男が立っていた。なんと生きていたのだ。
ば、馬鹿な…あれを受けてまだ生きてんのかよ!?
ば…化け物ですか
鎧の男の白い鎧は剥がれ上半身の肌を露出させている。身体中は岩の破片がめり込み至る箇所から血を流していた。そして身体の大半が火傷を負って焼けただれていた。見るからに男は死に体だった。
ッ!
なんだよ驚かせやがって、死にかけじゃねぇか
ベルフェゴールはほっとする。奇跡的に生きてはいたが、鎧の男はほっといてもそのうち死ぬような重傷を受けていたからだ。
だが、それはすぐに間違いだと気づく。
待て、何か様子が変です。
ベルゼブブの言う通り、重傷を負った鎧の男の身体に変化が起きた。男の身体がみるみるうちに再生されていったからだ。
あ、ありえねぇ…だろ
ベルゼブブとベルフェゴールが呆気に取られる内に、鎧の男の身体は完全に修復された。
ふぅ…
鎧の男は息をついた。
よもやここまで俺に深手を与えられたのは久方ぶりだ。
ベルフェゴールは男に問いかけた。
お前…本当に人間か?
貴様ら化け物風情と一緒にするな。死という概念は俺には存在せぬ。余は唯一無二な超越者としてこの世界から選ばれた者であるぞ。
尊大な態度をとる男。ベルゼブブは男の持つ魔剣ディルヴィングを見て気づいた。
もしや、この男…魔剣の願いで自らを不死にしているのかもしれない。
御名答、よく気づいたな。そちの申す通りだ。
鎧の男の言う通りなら、こいつを殺すことなんかできない。二人はそう思った。
だが、死なぬ身体とはいえ、今のは死ぬほど痛かったぞ。余に痛みを与えたのだ。貴様らは楽には殺さんぞ!
怒り狂った男は、剣を抜いて二人のほうまで歩いてくる。ベルゼブブとベルフェゴールは死なない相手にもはや万事休すだった。
糞が! 俺ら二人の力でも駄目なのかよ!
いや、三人だ。
応急処置が終わったルシファーは、ベルゼブブ達の横に立つ。
主!? 怪我は治ったのですか!
大丈夫だ。心配かけたな。
全くだぜ、自分だけカワイコちゃんに介抱されて羨ましいったりゃありゃしねぇ。
そしてイシスも三人の横に立つ。
四人だから! 私も忘れてもらったら困るんだからね!
ルシファー達はイシスを見て笑う。ルシファー、ベルゼブブ、ベルフェゴール、イシスの四人は鎧の男に立ち向かう。
有象無象が集まったところでこの俺には勝てんぞ汚物共が。
その様子を見て鎧の男は高々と笑う。ルシファーは思った。
相手は不死身…どう戦うか…
ルシファーはこの不死身の相手に思案していると、
ベルゼブブは自分の主の考えていることを読んで先に言った。
…ルシファー様、私にひとつ策があります。
策だと?
はい。ここは私に任せてもらえないでしょうか?
ベルゼブブは頭がキレる知恵者だ。ベルゼブブの策に乗ってみるか。
わかった。お前が指揮をとれ。俺らはそれに従う。イシスもベルフェゴールもいいな。
構わないわ。今はあいつを倒せるってんなら協力するに決まってるじゃん。
イシスちゃんの言う通りだ。俺も異論はねぇぜ。それに俺が策を出すよりベルゼブブが出したほうがいいだろ?
イシスとベルフェゴールも同意した。
よし、ベルゼブブお前に任せた。指示してくれ俺らはどうしたらいい?
はい、今から私は詠唱に入ります。その間私はそれに専念します。
ベルゼブブは何か大規模な魔法を行使するつもりだった。
それが完了するまで、できるだけ時間を稼いでください。
わかった。
オッケー!
おう! 任せろ!
ルシファー、イシス、ベルフェゴールは前に出て、ベルゼブブは後方に控えて詠唱を始めた。
鎧の男は凄まじい殺気を放ちながら剣を構える。
あんな化け物に、本当に勝てるの?
鎧の男のプレッシャーでイシスは肌がビリビリする感覚を感じ不安になっていた。
勝たなければ死だ。今はベルゼブブを信じよう。
鎧の男は不死身だ。時間稼ぎも容易ではないだろう。しかし、今はやるしかない。