本作品はフィクションであり、作中に登場するキャラクターや団体名、名称は架空のものであり、実在のものとは関係ありません。

運命のいたずら(仮)から数日が経過し、姫羅璃は大きな頭痛の種を抱えていた。
というのも

姫羅璃さん!
彼女になってください!!

キラリ

うるさい!
あんたいつまでついてくんのよ!

姫羅璃はあの日彼、葛城亮真からの申し出を断っていた。
理由などとくにあるわけではない。単純に姫羅璃の好みに合わなかったというだけの話である

亮真

そんなこと言わずに!
あなたほど美しい人はほかにいないんです!

キラリ

綺麗だって言ってくれるのは嬉しいけど……

亮真

お願いします!
この通りです!

亮真は懸命に頭を下げた、人通りが多く無い道とは言え、時々すれ違う人たちが不可解といったような表情で姫羅璃と亮真を眺める

キラリ

ちょっと!
恥ずかしいからこんなところでやめてって!

亮真

あなたがいいといってくれるまでやめません!

亮真の眼は本気だった。姫羅璃はその表情を見てふと思いついた。
姫羅璃は亮真に問いかける。

キラリ

私のこと好きなんだよね?
本気で

亮真

当然です!
本気です!

キラリ

だったら、勝負をしない?
あなたが勝ったら付き合うこと考えてあげる
負けたらおとなしく付きまとうのはやめて

亮真

分かった。
なんの勝負ですか?

亮真はしぶしぶといった表情で姫羅璃の要望にこたえる。姫羅璃は得意げな表情で宣言した

キラリ

初代『プリセレ』の初回完全限定生産版がほしい!

亮真

………………は?

キラリ

だから!
初代『プリセレ』の初回完全限定生産版!
歴代シリーズの中で唯一ロゴが変わっていてなおかつ生産数がすごく少ないの!
それを持ってきてくれたら考えてあげる!
期限は1週間ね!

プリセレとは『プリンスセレクト』の略称だ。
かなり人気なシリーズとなっており、現在までに本筋だけで8タイトル、スピンオフも多く制作されている。

しかし、その初代はあまり売れ行きはよく無かったのだ。
そこでジャケットを変えたバージョンを制作したところヒットしたという経歴を持っている。そのため本当の初回生産版はファンの間でプレミア価値がついて取り引きされているのだ

亮真

分かった。必ず持ってきます!

亮真はそのまま姫羅璃の前から走り去ってしまった。
無論姫羅璃はこの勝負で負けるつもりはなかった。
まずこの限定生産版は見つからないであろう、もし見つかったとしても値段は通常版の10倍はくだらない品だ。

キラリ

見つからないよ……
持って来れるわけない……

卓哉

お前性格悪いな

昨日の出来事を聞いた卓哉は開口一声こういった。
確かにひどい話である。希望を持たせておいて、実はほぼ存在しないものであるなど

卓哉

現代版かぐや姫ってか?
いくらかぐや姫になりたいとか言う寝言言ってるからって現実にすることないだろ

キラリ

だって、こうでもしないとあきらめてくれないだろうから……

卓哉

そんなに嫌なのかよ……

キラリ

嫌って言うか……よくわかんないんだけど……私の王子様はあんな人じゃない!

卓哉は口を開けたまましばらくそのまま固まってしまった。

キラリ

ただ、もし本当に持って来たらそれだけ私のことを想ってくれてるってことだろうから少しは考えるかもしれないなぁって

卓哉

なるほど
確かにそれはその通りかもしれないな……

キラリ

それに、やっぱりあれは高くて買えないからねぇ!
やっぱりほしいかなぁって!

卓哉はこれ以上姫羅璃の思考回路についていくことをあきらめた。

そして事態が動いたのはちょうど約束の日のことであった。

亮真

姫羅璃さん!
持ってきました!
プリンスセレクトの初回完全限定生産版です!

つづきのおはなし:わたしはかぐや姫?

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