S・M
S・M
「一緒に動物園入ろうぜ!」
そう言い出したのは
五十嵐だった。
鼻っ柱の強い万里は
「あら、私だけで十分よ。」
と、足並みを乱す。
一方、千尋は
「いいじゃない、
みんなで入りましょうよ。」
と、協調性のある行動。
その姿を見た十津川が
「ゴミゴミしたところは
好きじゃないなぁ。」
と、再び異を唱える。
でも
口ではそう言っているけど
いざとなれば
十津川だってきっと入る。
ふと、百恵が
押し黙っていた
僕に気づいた。
「一郎も一緒に入るよね?」
その優しい一言は
僕にはとても辛かった。
いつも近くにいてくれる
百恵の言葉に
「動物園なんて嫌いだ!」
僕はそう言って断った。
そりゃ僕らは仲間だし、
形だけでも
誘ってくれるのは嬉しい。
……でも
現実はいつだって
残酷なんだ。
今回だって
僕だけは入れないんだ。
君らに僕の気持ちは
きっとわからないだろう。
僕のことなんか置いて
楽しんでくればいいんだ。
コンビニが
僕のオアシスだ。
完