うわぁぁぁぁぁぁぁッ!?

落下する優真。
地上までの距離は遠く、このままでは身体がトマトのように潰れてしまう状況に陥ってしまう。

神様神様これ絶対死ぬよ!?

あははははははは!

笑い事じゃないんですってば!

安心してくれ、私を誰だと思っている。しかし楽しいな。地球の民はこれを絶叫というんだろ? こんなものを経験することができる人間が実に羨ましすぎる!

本当に楽しそうですね!?

と言いっている間にも地面までの距離がもう目の前まで来ていた。

……ああ、死ぬ。世界救う前に死ぬ。
この世界に1分もの時間が経たずに死ぬ。
あんまりだった。

いぃやぁぁぁぁぁぁ!?

鼻先が地面にぶつかる。
ぶつかろうとした瞬間、優真は目をつぶる。

しかし、いつまで経っても衝撃が来ない。
衝撃を感じることなく死んでしまったのだろうか。

まったく、優真は臆病だな

……あれ?

死んでいない。
優真もアルフィンも死んでいなかった。

尻餅するように地面に触れている。
何事もなかったかのようにアルフィンは立ち上がり、パンパンと尻を払った。

いや、実に気持ちがいい爽快感だった。また試したいものだ

……

ん? どうしたのだ? ハトが豆鉄砲を喰らったような顔をして

誰のせいですか!

私は何もしていない。優真が勝手に怯えていただけだよ

勝手に。
確かに落下している間にアルフィンは一言の死ぬとは言っていない。
あくまでも、高い距離からの落下イコール死という現実を優真が勝手に思いこんでいただけなのだ。

そもそもですよ! 神様はどうしてここにいるんですか!? あんた神でしょ!? 仕事は!?

気難しいことを考えるな。きっとなんとかなる

適当すぎる……!

心配することはない。私の部下は頼りになる。任せても大丈夫だろう。

それで、私が優真と一緒に同行する理由は、まぁ、興味本位だ

優真は頭を抱えた。

いいか優真。物事信じていれば意外と何とかなるものだ

だといいですけどね

さぁ行こう! 目的地はあっちだ!

アルフィンの笑顔はまるで子どもが見せる笑みと変わらない。
なんというか、ノリノリな神様だった。

しばらく歩くと、ふとアルフィンは呟く。

そういえばこの世界の歴史のことを何一つ優真に教えていないな

うっかりしていた表情をする。
わりかし重要なことなんじゃないかと思うのはきっと優真の機能性じゃない。

太古昔より、この世界に魔法が存在する

ま、魔法?

驚かざるを得ない。
魔法といえば漫画で出てくるソレのことだろうか

うん、その認識で間違いない

まるで優真の心を読むように頷く。

魔法といえば、優真は何を思い浮かべる?

手から、炎?

優真は可愛い発想をするんだな

もっとあるだろう。ドラゴンを召喚したり、町1つ滅ぼすような業火だったり。
実際にこの世界ではそれが可能だったりする

すぅとアルフィンは腕を前に伸ばした。

まぁ、見ていろ

言われた通りその手を見ていると、次第にマッチの火ほどの小さい炎が現れた。

これが魔法だ。手を近づけてみるといい

……暖かい

今から二千年、大魔導士という者が人々に魔法を与えた。その人物は神なのだった

……は?

言っておくが私じゃないぞ。私以外の神だ

まぁ神の話はこの際どうでもいい。そんなことを話したところで優真には関係ないからな

いや、気になるんですけど。神って一体どれほどの人数がいるんですか?

星一つに一人は存在する。ちなみに地球は私だ。そしてこの世界にも神がいてだな、そいつが大魔導士だ。

ペラリと語るアルフィン。
優真はさっきから驚いてばかりだった。

魔法が与えられる前、世界は滅亡に迫っていた。大地が枯れ、永遠の夏を感じさせる気温により作物は育たず家畜は死に至った。

まぁ天災だな。神も星が朽ち果てていく光景をみて、流石に黙っていられるわけもなく、人々に魔法を与えたのがこの世界の歴史なのだ

運が悪かった。天災なんていつ起きてもおかしくないのだから。

なんというか、神様って完璧じゃないんですね

神様なんだから、その天災をなかったことにすれば魔法なんてものを与えずに済んだのに

神という存在は所詮、人々が押し付けた評価でしかないのだ。必ずしも万能ってわけじゃない

しかし、それだけの理由で民に魔法を与えたわけじゃない

へーつまりは他に考えがあったんですね?

うむ、神は世界に平和を求めたが、同時に娯楽も提示した

異世界と言えばモンスター

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