マルク

母さん、僕もあの塔に行きたいよ!あのマルクルの冒険日記みたいに、あの時計塔を1人で冒険したいんだ!!

駄目よ坊や。あの塔には魔女が住んでるって言ってるでしょう。

これで何回目だろうか。

母さんはいつまでたっても僕のことを子ども扱いする。20歳超えた立派な大人を「坊や」なんて、普通呼ばないと思うけど。

今日も母さんは僕を甘く見ているみたい。

…残念だけど今日はいつもの僕とは違う。って小さく息を吐いてみた。

マルク

母さん知らないの?今年は50年に一度のお祭りだよ?

絶好の冒険のチャンスじゃないか!!!

気分が高揚しすぎて、途中声が上ずった。

けど、そんなこと関係ないよね。僕のこの冒険心をかき立てるには十分な理由がそこにはある。

それだけで、僕は物語の主人公。冒険家にだってなれるんだ。

そうね、だからどうしたの?

あ、あれ?

僕の熱量と反比例して母さんの反応はとても冷ややかだった。

マルク

いや、だからお祭りがあって。それで、その…

お祭りでも、危険なものは危険って分からないの。坊や?

それとも、そうやって母さんを困らせるのかしら。まだまだ手が焼ける坊やね

マルク

ち、違う!

魔女なんていないし、危険な場所なんかじゃないって僕が証明してみせる。あの、時計塔はそんな怖い場所じゃないから。

そう言い放つと、自分の声の大きさにビックリした。

母さんもビックリしていた。

…なんだか息がしにくい

そう思うと同時に、足は家の外。出口に向かって走り出していた。この場所から早く出ないと。

ちょっと、坊や!!

母さんの声で止まれるほど、僕の足運びは緩やかではなかった。

その勢いに任せて僕は家を飛び出す、そうして真っ暗な町へ旅立った。

ページ1 針の町

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