渡斗真

今日、青木さん一緒に帰ろうね。

青木尚

え、

渡斗真

逃げちゃあダメだよ。聞きたいこといろいろあるし。


放課後、そそくさと校舎をでた私を、捕まえた渡くんの低くした声。

従わざるを得ないことを、私に植え付けてしまうような圧がそこにはある。


渡くんの隣を歩くことで、悲しむ子達がたくさんいることを私は分かっている。

そういう人だもの、彼は。


彼の左側、少し後ろを歩く。



渡斗真

で。青木さんはどうして出会い系なんか利用してるの?

青木尚

目的なんて、ひとつしかないじゃないですか。



出会い系サイトという言葉はもう世の中に知れ渡っているわけだから、聞かなくても分かるでしょうに。

渡斗真

はは、そうだね。言い訳しないところが青木さんらしいのかな。

渡斗真

変態。



そう付け足して彼は嘲るように笑うものだから。
背筋が凍った。


青木尚

わ、渡くんもですよね。

渡斗真

そうだね。



ん、と否定せずに笑う彼が妖しくて妖しくて。


青木尚

でも、渡くんなら選び放題なのに。わざわざどんな奴が来るかわからない出会い系サイトを使わなくても…。


私がそう言うと、
青木さんは分かってないなあ。と彼が呟く。

渡斗真

女の子は可愛いけど面倒じゃん。一回相手をしてもらったくらいで、その次を求めようとする。

青木尚

え、

渡斗真

出会い系くらいがちょうどいいの。性欲処理、利害の一致。


うーんと腕を組んでさらりとそんなことを言ってしまう彼に抱く感情は、

恐怖と言っていいのかもしれない。


青木尚

…てことは私は、女の子じゃなくてそんな存在なのか…。


恐る恐るそう言うと、

渡斗真

ふ、はは。



変な子だねって渡くんが笑う。


渡斗真

アオちゃんは性欲処理用だと思ってたよ。だけど、青木さんは女の子だ。



ふらり、と渡くんは目を合わせてきて、ドキリとした。


渡斗真

青木さんは、ど?

青木尚

何が、でしょう。

渡斗真

リトに、手出されたい?


くん、と息が止まった。

それは、渡くんの甘いような匂いが鼻をかすめたから。




キス、されたと気づいたのは、
近付いた渡くんが離れて唇を親指で拭ったとき。


渡斗真

出して欲しいっていうなら、俺は全然大歓迎だからね。


頭の中がチカチカして、
はっと息を吐いたのは3秒後。

渡斗真

ど?

青木尚

全力で遠慮、しておくね。

渡斗真

ん、そっか。
キスした時の反応がそれだけウブなのに、変な子だね。嫌いじゃないよ、俺。

渡斗真

いつでも相手してあげる。


その時の渡くんの笑みはきっと武器。

威圧感と甘さが混ざって溶けたような、そんな様子に、私は泣いてしまいそうになった。

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