彼氏に振られたのが一ヶ月前くらいのこと。
一方的に振られて。


そして私は出会い系サイトに手を出してしまった。


慰めてくれる相手なんて普通に探せばいいものを、ああいったサイトを利用しているあたりが、そういうことなのだと思う。


安易な私のこの上なく馬鹿なところ。


ピンク色の掲示板に書き込むにあたって作り上げた私は、


18歳、大学一回生、アオ。

寂しい、構え。

それとフリーメールアドレスだけの書き込み。


こんなことをかきこんだら、
大勢の人が反応してくれるのはごく普通、当たり前で。


そのなかで相手してくれる人が見つかればいいなって。



そしてメールを続けた相手が、

俺が構うわ。
リト、大学一回、19

たったひとこと、それだけの人だった。


住んでいるところが近いこと、文体がうざったくないこと、

それだけで決めた相手だった。





渡斗真

俺の目が間違っていなければ、青木さんだよね?


驚いた顔で、リトさんは私にそう聞いた。

青木尚

ちっ、がいます!人違いです!
さよならっ、


私はただそれだけを言って逃げようと足を進める。


が、

そんな私をリトさん
…いや、渡くんが引き止めるように腕をひいて阻止する。

渡斗真

へえ、青木さん。そーなんだ。


そうなんだ、って。


今すぐにでも振り払って逃げたいのだけれど、体が思考についていかず、

渡くんと向き合ったまま、私は泣きそうになる。

渡斗真

ねえ、どーしますか。

青木尚

…へ?


自分でも驚いてしまうくらい、情けない素っ頓狂な声を吐く私に、

渡くんは顔をグン、と近づけた。

渡斗真

俺、アオちゃんとホテル行くって約束してたんだけど。


ニコリ、
渡くんの顔が妖しく歪む。

渡斗真

どーしよ、っか。


声が妖しく色を帯びる。


そんな彼に対して私は、

青木尚

ご、ごめんなさいっっ!!!


半泣きになりながら、逃げるしかない。なかった。







渡斗真くん。

うちの学校では、みんな知っているであろう人。

整った顔、色素の薄い綺麗な髪、
高めの身長に声までかっこいい。


そして何よりも、女の子に優しい。

優しいというか、女の子の喜ぶポイントを押さえている人。


人気者、王子様的な存在。


そんな人が何故、


青木尚

詐欺ってまで、出会い系をつかう…?


渡くんをこんなことをするタイプだと思ったことはない。女の子に困ることだってきっとないはずなのに。


顔も知らない、本名も素性も知らない、
よりによって出会い系サイトにいる女の子をホテルに誘うなんて。


渡くんはそういうことをしちゃあ、ダメな人だよ。
と、そんなことを考えては自分の置かれている状況にひれ伏せる。


クラスメイトと出会い系サイトで、偽った姿で出会うなんて。

穴があったら入りたい、そしてそこに落ちて死んでしまいたい。



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