霊深度
霊深度
-1の、
私は私!
CridAgeT
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いんぽーとさくせいてすと!
鬼さんこちら、手の鳴る方へ
また遊ぼうね!
懐かしい声を聞いたような気がして、私は目覚めた。
?
なんだか奇妙だ。
朝焼けの部屋は妙に眩しかった。
ぼんやりした頭をはっきりさせるべく、私はケトルに水道水を流しこんでスイッチを入れた。
戸棚を漁ると、緑茶が見つかった。
……悪くないね
茶濾しをマグカップにセットして、茶葉を適当に入れる。
その上からザラメをざざっと流し込んで、
お湯を回しかけるようにたっぷりと注いだ。
ザラメ糖はけっこう溶けにくいけど、熱くしたお湯をこんな風にかけてやれば、しっかりと溶け込む。なにより、下だけが甘くなることもない。
口に含むと、さらりと染み込むようなやさしい甘みが緑茶とともに広がった。
うん、美味しい
はちみつも美味しくて良いけれど、独特の香りとコクがあるから、時々疲れてしまうのだ。
朝のまどろみを楽しむには、このくらいが好きだ。
今日は、何かあるかな
マグを片手にタブレットを開く。今日は用事のない休日。出かけるのも良いけれど、家でのんびりとしていたいような気もする。
最近話題のニュース以外には、特に何もないみたいだ
コップを置いたとき。
壁を突き抜けて、あいつが飛び込んできた。
……う る さ い
先生今日も朝から辛辣!
でも知ってますからね、先生は今日はご機嫌!
少女の姿をしたそれは、喋りながら空中でくるりと一回転してみせた。
うん、この部屋の空気、本当に柔らかいですぅ!
「先生がご機嫌な可能性90%のこの天気と曜日、時間の組み合わせ
機嫌が良いとき限定のこの緑茶の繊細な香り
「『悪くないな』って、先生の『すごく好き』の意味ですし!
……あと、私への態度がそんなにきつくないですね、嬉しいですよ?
カゲツ、今日は気まぐれ屋か? それとも新しいやつか?
少女は急に勢いをなくして、地面に降り立った。
その少女は、
奇妙に軽やかで。
膝から先は透けていて。
そして、
地面に付く足はなかった。
先生、私に会うといっつもそれ
? 駄目だったか?
そうですよね、先生は『先生』ですもんね、私なんてただの珍しいサンプルなんでしょ?
……研究室の方が良かったのか?
違 い ま す!!
少女は、マグカップを包むように座り込んだ。
手で包み込むようにして、鼻をそっと寄せているのだった。
……良い香り
……
先生、私、先生の作るカップとか、お菓子とかの香り好きですよ
……そうか?
これがないところは、嫌です
そうか
緑茶の湯気が、なまぬるく間を流れてゆく。
なんだか時々、朝のゆったりとした、静かであるべき時間が、気まずい沈黙のように聞こえることがあるのだ。
私はタブレットを放り出した。
……さっきのは、どういう意と―――
先生
普通の状態では、霊は現実のものに触れることはできない。
この、ひどく弱い霊の少女、銅貨一つ動かすのにも苦労する彼女は、
……どんなに力を込めたものか、私にそっとカップを差し出した。
先生がなんと分類しようと自由ですけど、私は私、ですから
……
覚えておこう
私はカゲツから受け取るかのようにカップを持ち上げて、しっかりと両手に支える。
また一口、口にする。
私が君を無理言ってまでここに置いているのは
なぜ君といると心が安らぐのか、それが知りたいだけなのだけど、な
マイナス1
霊深度 残り???